貸金業者の広告に「誰でも借りられる」「審査なし」と書いてあったら、それは許されるのでしょうか。貸金業法16条は、貸金業者の広告や勧誘で「言ってはいけないこと」を定めています。貸金業務取扱主任者試験では、項ごとの内容と、どこに罰則がかかるのかが細かく問われます。この記事では、16条の1項から5項までを表で整理し、15条との違い、監督指針の具体例、再勧誘の扱いまで順に確かめます。
条文は2026年10月27日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験は受験年度の法令が基準になるため、最新の情報は日本貸金業協会の公式サイトでご確認ください。
15条と16条は何が違う? 広告の「書くこと」と「言ってはいけないこと」
広告や勧誘に関わる条文は、まず2つに分けて考えます。
15条1項は、貸付けの条件について広告をするとき、または契約の勧誘で貸付けの条件を表示・説明するときに、貸金業者の商号(名称・氏名)と登録番号、貸付けの利率などを示すよう求めています。これに対して16条は、表示の中身が不当であってはならない、という規制です。
「15条=入れるべき事項」「16条=禁止される表示と勧誘のしかた」と対にして覚えると、条文の取り違えを防げます。
16条1項の誇大広告の禁止 — 2つの型
16条1項は、貸金業の業務に関して広告または勧誘をするとき、貸付けの利率その他の貸付けの条件について、次の2つをしてはならないと定めています。
どちらも対象は「貸付けの利率その他の貸付けの条件」についての表示・説明です。たとえ話は理解のために作った例であり、条文の例示ではありません。
押さえたいのは「著しく」という程度の言葉です。少しの違いではなく、はっきり事実と離れている場合や、はっきり有利に見せかけている場合が対象になります。
16条2項の禁止表示 — 5つ+内閣府令で定めるもの
1項に続けて、2項は「前項に定めるもののほか」として、広告や勧誘でしてはならない表示・説明を6号に分けて並べています。
1号〜5号は条文に直接書かれているため、試験では「次のうち2項で禁止されていないものはどれか」という形で出されやすい部分です。5つの共通点は、借りる人の判断をゆがめる表示だということです。
3号の「借入れの容易さの強調」— 監督指針の具体例
3号に当たるかどうかは個別の事実で判断されますが、監督指針は、次のような表示は該当するおそれが大きいと示しています。
審査の存在を隠す表現、債務整理後でも貸す表現、他社の借入れを見ないと言う表現が並んでいます。総量規制や返済能力の調査の考え方(総量規制の記事、返済能力の調査の記事で整理しています)と逆向きの表現だと考えると、覚えやすくなります。
広告と勧誘は何が違う? 16条は両方にかかる
16条は「広告又は勧誘をするとき」と書かれており、広告にも勧誘にもかかります。監督指針は両者を次のように説明しています。
電話でも訪問でもメールでも、「言ってよいこと」の線引きは同じです。
16条3項の不適当な勧誘 — 4つの要素に照らす
3項は、相手に合わない勧誘をしないことを求めています。見る要素は次の4つです。
この4つに照らして不適当と認められる勧誘を行って、資金需要者等の利益の保護に欠け、または欠けることとなるおそれがないように、貸金業の業務を行わなければならない、というのが3項の内容です。借入れの知識や経験が乏しい人に、条件の複雑な契約をすすめてはいけない、というイメージです。
16条4項の再勧誘の禁止 — 断られたら続けない
4項は、貸付けの契約の締結を勧誘した場合に、勧誘を受けた資金需要者等から契約を締結しない旨の意思が表示されたときは、その勧誘を引き続き行ってはならないと定めています。
ポイントは、カッコ書きで「当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む」とされていることです。「契約しません」と言われた場合だけでなく、「もう勧誘は受けたくない」と言われた場合も対象です。
監督指針は、実務の進め方を次のように示しています。
「3か月」は条文ではなく監督指針の記述で、しかも「少なくとも概ね」「推定されるものと考えられる」という書き方です。「3か月たてば必ず再勧誘できる」という意味ではない点に注意してください。
16条5項の努力義務と、罰則がかかる範囲
5項は、広告や勧誘をするとき、資金需要者等の返済能力を超える貸付けの防止に配慮するとともに、その広告または勧誘が過度にわたることがないように努めなければならないと定めています。「努めなければならない」という努力義務の形です。
最後に、試験で間違えやすい罰則を整理します。
48条3号が引いているのは16条1項だけです。2項〜5項の違反は、刑事罰ではなく、業務改善命令や登録の取消し、業務の停止といった監督上の処分の対象として考えます。「広告と勧誘の規制は全部に罰則がある」「全部行政処分だけで済む」のどちらも誤りです。
「1項は罰則あり(48条3号)、2項〜5項は48条に挙がっていない」と分けて覚えましょう。罰則の有無を聞く問題の定番です。
試験での問われ方・覚え方
16条は、次の観点で問われやすい条文です。
- 1項の2つの型(事実と違う・有利と誤認させる)と「著しく」
- 2項の禁止表示を、禁止されていない表示と見分ける問題
- 3項の4要素(知識・経験・財産の状況・契約の締結の目的)
- 4項で「勧誘を受けたくない旨の意思」も含まれること
- 罰則がかかるのは1項違反だけであること
覚えるときは、「1項は大枠・2項は5つの具体例・3項は相手に合わせる・4項は断られたらやめる・5項は努力義務」と並べて、項ごとの役割を言い換える練習が効きます。広告・勧誘の次に学ぶ契約前後の書面は、契約締結前の書面と契約締結時の書面の違いの記事で整理しています。取立てや督促の段階の規制は取立て行為の規制の記事にまとめました。
授業で順番に確認したい場合は、貸金業務取扱主任者講座のページで内容を確認できます。
よくある質問
Q. 16条2項に違反すると刑事罰を受けますか?
条文上、48条で16条について罰則が挙がっているのは1項の違反です。2項〜5項の違反は、業務改善命令などの監督上の処分の対象として整理します。
Q. 「審査なし」と書いた広告は何に当たりますか?
監督指針は、貸付審査を全く行わずに貸付けが実行されるかのような表現を、16条2項3号(借入れの容易さの過度な強調)に該当するおそれが大きい例として挙げています。
Q. 一度断られたら、メールなら勧誘してもよいですか?
4項は、契約しない旨(勧誘を受けたくない旨を含む)が示されたら、その勧誘を引き続き行うことを禁じています。監督指針は、勧誘に電話や戸別訪問に限らず電子メールやダイレクトメールを含むとしています。
まとめ
- 16条1項は、貸付条件について「著しく事実に相違する」表示と「著しく有利と誤認させる」表示を禁じ、48条3号の罰則がかかる
- 2項は5つの表示(+内閣府令で定めるもの)を禁じ、3号の具体例は監督指針で確認できる
- 3項は4要素に照らして不適当な勧誘をしないこと、4項は断られたらその勧誘を続けないこと、5項は配慮と努力義務
- 15条は「書くべきこと」、16条は「言ってはいけないこと」と分けて覚える