貸金業者は、お金を貸す前に「この人は返せるのか」を調べなければなりません。貸金業務取扱主任者試験では、この返済能力の調査について、調べる相手、信用情報を使う義務、書面を受ける金額の基準、記録の保存が細かく問われます。この記事では、貸金業法13条を中心に、条文を確かめながら整理します。
条文は2026年10月12日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験では出題年度の4月1日時点の法令が基準になるため、受験する年度の案内もあわせて確認してください。
結論:契約の前に調べ、個人なら信用情報を使う
13条の骨組みは、次の3段になっています。
| 条文 | 内容 | 覚えどころ |
|---|---|---|
| 13条1項 | 貸付けの契約を結ぼうとするときは、顧客等の返済能力を調査する | 相手や金額による線引きがない |
| 13条2項 | 個人である顧客等と契約するときは、調査の際に指定信用情報機関の信用情報を使用する | 法人には使用義務がない |
| 13条3項 | 一定の金額を超えるときは、個人顧客から資力を明らかにする書面の提出を受ける | 「超える」で判断する |
調べる中身は、条文が挙げる4つです。収入や収益などの「資力」、これまでの返済実績にあたる「信用」、他社を含めた「借入れの状況」、そして「返済計画」です。これらを、契約を結ぶ前に調査します。
13条1項の調査は「貸付けの契約を締結しようとする場合」に行います。契約を結んだあとに調べるのでは遅い、という順序の問題です。
誰を調べるのか:顧客等には保証人も含まれる
調査の相手は「顧客等」です。貸金業法では、資金需要者である顧客と、保証人になろうとする者をあわせて顧客等と呼びます。さらに、貸付けの契約には保証契約も含まれると定められています。
そのため、次のように整理できます。
| 相手 | 返済能力の調査 | 信用情報の使用義務 |
|---|---|---|
| 個人の顧客 | 必要 | あり |
| 法人の顧客 | 必要 | なし |
| 個人の保証人 | 必要 | あり |
| 法人の保証人 | 必要 | なし |
間違えやすいのは、次のような思い込みです。
- 法人が相手なら調査はいらない(実際は調査自体は必要。信用情報の使用義務だけがない)
- 保証人は調べなくてよい(実際は保証契約を結ぶときも調べる)
- 個人事業主は法人と同じ扱い(実際は法人ではないので個人として扱う)
調査そのものに相手による線引きはなく、分かれるのは「信用情報を使う義務があるか」だけです。
指定信用情報機関の信用情報を使う義務
13条2項は、個人である顧客等と貸付けの契約を結ぼうとするときは、調査の際に指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならないと定めています。指定信用情報機関とは、貸金業者が貸付けの情報を持ち寄り、他の貸金業者にも提供する仕組みを担う機関です。
つまり、他社からの借入れの状況は、本人の申告だけで済ませてはいけません。機関が保有する記録で確かめることが求められています。
「信用情報を使って調査をした」という事実が必要です。使わずに個人と契約を結んだ場合は、後述の罰則の対象になります。
使用義務がかからない契約
13条2項のかっこ書きは、極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める契約を除いています。施行規則10条の16は、その契約として、極度方式貸付けに係る契約と、1条の2の3の2号から5号までに掲げる契約を挙げています。
試験で気をつけたいのは、極度方式基本契約そのものは除外に入っていないことです。カードローンのような枠の契約では、次のように分けます。
| 場面 | 契約 | 信用情報の使用義務 |
|---|---|---|
| 枠を作る | 極度方式基本契約 | あり |
| 枠の中から借りる(1回ごと) | 極度方式貸付けに係る契約 | なし(除外) |
枠を作る入り口で確かめ、そのあとの1回ごとの借入れでは改めて求めない、という組み立てです。
資力を明らかにする書面:50万円と100万円
13条3項は、個人顧客について次のどちらかに当てはまるときに、源泉徴収票など資力を明らかにする書面の提出を受けることを求めています。すでに直近の書面を受けているときは、重ねて求める必要はありません。
| 区分 | 判断する金額 | 基準 |
|---|---|---|
| 1号 | 自社の合算額(これから結ぶ契約の金額と、その個人顧客への自社の貸付けの残高の合計) | 50万円を超える |
| 2号 | 上の自社の合算額に、指定信用情報機関の信用情報で分かった他社の貸付けの残高を足した額(1号の場合を除く) | 100万円を超える |
どちらも「超える」が基準で、50万円ちょうど、100万円ちょうどでは書面は要りません。「以上」と読み違えないことが大切です。
たとえば、自社の合算額が30万円で他社の残高が70万円なら、合計は100万円ちょうどなので、2号には当てはまりません。他社が71万円なら100万円を超えるため、書面が必要になります。
なお、この書面を求める相手は「資金需要者である個人の顧客」です。保証人になろうとする人には、この書面は求めません。
書面の種類と新しさ
使える書面は、施行規則10条の17第1項が列挙しています。給与をもらう人は源泉徴収票・給与の支払明細書など、事業をする人は確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書など、そのほか納税通知書、納税証明書、所得証明書、年金証書、年金通知書などです。写しや電磁的記録でも構いません。
新しさの要件は、書面ごとに2項で決められています。
| 書面 | 要件 |
|---|---|
| 源泉徴収票・支払調書・年金通知書 | 一般的に発行される直近の期間に係るもの |
| 給与の支払明細書 | 直近2月分以上のもの |
| 確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書 | 通常提出される直近の期間に係るもの |
| 納税通知書・納税証明書・所得証明書 | 一般的に発行される直近の期間に係るもの |
| 年金証書 | 期間の要件なし |
勤務先が変わるなど資力に変更があったと認められるときは、変更後の資力を明らかにする書面に限られます。
極度額を増額するとき
極度方式基本契約の極度額を増やすときも、13条5項により、1項から4項までが準用されます。つまり、調査をやり直し、信用情報も使い、必要なら書面も受けます。極度額を下回る額を提示している場合は、その提示額を引き上げるときも同じです。
例外は、施行規則10条の19が定める場合です。連絡が取れないために極度額を一時的に減らしていて、連絡が取れたので元の額まで戻すときは、調査が不要になります。ただし、相手の返済能力の低下によって減らしていた場合は、この例外に入りません。
| 増額の場面 | 調査 |
|---|---|
| 極度額を引き上げる | 必要 |
| 提示している額を引き上げる | 必要 |
| 返済能力の低下で減らした額を元に戻す | 必要 |
| 連絡が取れないために一時的に減らした額を、連絡が取れたので元に戻す | 不要 |
なお、契約を結んだあとの定期的な調査は13条の3が別に定めています。個人顧客と極度方式基本契約を結んでいる場合の、基準額を超えていないかの調査です。契約前の13条の調査とは条文が違う、という点を区別してください。
調査の記録と保存
調査をしたら、記録を作って保存します(13条4項)。施行規則10条の18第1項は、顧客等ごとに次の5つを記録するよう定めています。
- 契約年月日
- 書面等の提出を受けた年月日
- 資力に関する調査の結果
- 借入れの状況に関する調査の結果(信用情報を使った調査の結果を含む)
- 調査に使った書面またはその写し
保存期間は契約の種類で変わります。
| 契約 | 保存する期間の終わり |
|---|---|
| 貸付けに係る契約 | 最終の返済期日(債権が弁済などで消えたときはその日)。極度方式の場合は、解除の日と最後の返済期日のうち遅い日 |
| その保証契約 | 貸付けに係る契約について定まる日と、保証債務が消えた日のうち早い日 |
保証契約の記録は「早い日」まで、という点が試験で狙われやすいところです。主たる契約と同じように「遅い日」と覚えないようにしてください。
違反したときの責任
違反したときの扱いは、条文の種類で分かれます。
| 違反の内容 | 責任 |
|---|---|
| 返済能力の調査を怠るなど、13条から22条までの違反 | 業務改善命令の対象になりうる(24条の6の3) |
| 信用情報を使った調査をせずに、個人と契約を結ぶ(極度額の増額を含む) | 1年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、またはその併科(48条1号の4) |
信用情報の使用義務は、刑罰つきの義務です。この違いも整理しておくと、選択肢の判断に使えます。
試験での問われ方と覚え方
出題では、次のような切り口が考えられます。
- 法人や保証人に対して調査や信用情報の使用が必要かどうか
- 極度方式基本契約と極度方式貸付けに係る契約のどちらが除外されるのか
- 50万円・100万円の基準が「超える」であること、保証人には書面を求めないこと
- 増額のときの準用と、一時減額を元に戻す場合の例外
- 保証契約に係る記録の保存期間が「早い日」までであること
覚えるときは、「調査は全員、信用情報は個人だけ、書面は個人顧客だけ」と3段で押さえると整理しやすくなります。
貸金業法の他の規制とのつながりも意識しておくと、理解が深まります。たとえば、貸付けの合計額を年収の3分の1までに抑える総量規制は、総量規制とはで整理しています。調査で借入れの状況を把握することが、総量規制を守る前提になっています。
授業で確認するなら
貸金業務取扱主任者講座では、返済能力の調査を「調査義務と指定信用情報機関の利用」「資力を明らかにする書面と調査記録」の2つの授業に分けて解説しています。条文の数字と例外は、授業で図と表を見ながら整理し、確認問題で正誤の判断を練習すると定着しやすくなります。AI講師のトーレスに、紛らわしいところをその場で質問することもできます。
まとめ
- 返済能力の調査は、契約を結ぶ前に、資力・信用・借入れの状況・返済計画を調べる義務(13条1項)。法人や保証人にも必要
- 個人が相手なら指定信用情報機関の信用情報を使う(13条2項)。極度方式貸付けに係る契約などは除外だが、極度方式基本契約は除外されない
- 個人顧客の書面は、自社50万円超、または他社を足して100万円超で必要(13条3項)。保証人には求めない
- 極度額の増額は13条5項で準用。調査記録は5項目を作り、保証契約の記録は「早い日」まで保存する
- 信用情報を使わずに個人と契約すると、48条1号の4の罰則の対象になる
条文の番号と数字は、試験直前に必ず最新の条文で確かめてください。

