「総量規制は年収の3分の1」とは聞くけれど、年収には何が入るのか、他社の借入れはどう数えるのかが曖昧、という人は多いはずです。この記事は、貸金業務取扱主任者試験の受験者に向けて、総量規制の基本を条文の番号つきで整理します。
条文は、e-Gov法令検索で2026年10月5日に確認した現行の貸金業法と同施行規則に基づいています。試験では出題年度の4月1日時点の法令が基準なので、受験する年度の案内もあわせて確かめてください。
総量規制とは — 返せない額は貸してはならない
総量規制は、貸金業法の用語ではなく、13条の2のしくみを指す通称です。内容は次の2段階になっています。
- 13条の2第1項:貸金業者は、貸付けの契約を結ぶ前に行った返済能力の調査(13条1項)の結果、その契約が個人過剰貸付契約などの「返済能力を超える貸付けの契約」と認められるときは、契約を結んではならない
- 13条の2第2項:「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客への貸付けの契約で、結ぶことで個人顧客合算額が基準額を超えることになるもの
つまり、まず返済能力の調査があり、その結果をものさしにして貸せるかどうかを決める、という順序です。調査(13条)と禁止(13条の2)はセットで覚えます。
13条の2第1項は「個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約」を禁じています。年収の3分の1に収まっていても、返済能力を超えると認められれば、貸してはいけません。3分の1は「上限の目安」ではなく、最低限守る線です。
基準額と個人顧客合算額 — 何と何を比べるか
比べるのは次の2つです。
| 用語 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 基準額 | 年間の給与とこれに類する定期的な収入を合計した額 × 3分の1 | 13条の2第2項 |
| 個人顧客合算額 | その個人顧客への貸付けの残高などを合わせた額 | 13条3項2号・13条の2第2項 |
たとえば年収が600万円の人なら、基準額は200万円です。すでに別の貸金業者に120万円の残高があるなら、新たに結べる契約の金額は、原則として80万円までです。
個人顧客合算額には、次の3つが入ります。
- 今回結ぼうとする契約の貸付けの金額
- 自社が同じ人に貸している他の残高
- 指定信用情報機関から得た情報でわかる、他の貸金業者の貸付けの残高
他社の分は、貸金業者の自己申告ではなく、指定信用情報機関の信用情報で確認します。個人と貸付けの契約を結ぶとき、返済能力の調査では指定信用情報機関が保有する信用情報を使わなければならないと、13条2項に定められています(極度方式貸付けなど内閣府令で定める契約は除く)。
合算されるのは「貸金業者からの借入れ」です。日本貸金業協会は、銀行・信用金庫・労働金庫からの借入れや、クレジットカードの買い物(ショッピング)の利用は総量規制の対象外と案内しています。金融庁のQ&Aでも、銀行等からの借入れは対象外とされています。ただし、対象外であることと、返済能力の調査の対象外であることは別の話です。
年収には何が入るのか — 施行規則10条の22
基準額の元になる「年間の給与及びこれに類する定期的な収入」の範囲は、施行規則10条の22第1項に列挙されています。
| 区分 | 年収に含めるか | 条件 |
|---|---|---|
| 年間の給与 | 含める | 13条の2第2項 |
| 年間の年金の金額 | 含める | 10条の22第1項1号 |
| 年間の恩給の金額 | 含める | 同項2号 |
| 定期的に受領する不動産の賃貸収入 | 含める | 事業として行う場合を除く(同項3号) |
| 事業所得の金額 | 含める | 過去の状況に照らして安定的と認められるものに限る(同項4号) |
ここで気をつけたいのは、事業所得は「経費を引いたあとの所得の金額」で、売上の総額ではないことです(条文は「事業所得の金額」と書いています)。また、一度きりの臨時収入は、定期的な収入には当たりません。
配偶者の収入は、本人の年収には入りません。ただし、金融庁のQ&Aは、配偶者の同意を得て、配偶者の年収を証明する書類と同意書を出す方法で借入れできる場合があると案内しています。これは、総量規制の例外のひとつとして整理されるものです。
年収の算定方法は3つ(10条の22第2項)
収入の金額は、貸金業者が勝手に決めてよいわけではありません。施行規則10条の22第2項は、次の3つのうち、いずれかの方法で算出するとしています。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 書面等から算出 | 源泉徴収票などの、収入を明らかにする書面等(10条の17第1項)を使って算出する |
| 給与明細から算出 | 書面等に書かれた直近2か月分以上の給与(賞与を除く)の月平均に12を掛ける |
| 地方税額から算出 | 書面等に書かれた地方税額をもとに、合理的に算出する |
給与明細の方法を使うとき、過去1年以内の賞与の金額が書面等で確認できれば、その賞与は年間の給与に含めることができます(同条3項)。「賞与を除いて12倍する」と「確認できれば賞与を足せる」の2点は、セットで覚えておくと迷いません。
収入の証明書が必要になる場面
13条3項は、一定の額を超える貸付けについて、収入を明らかにする書面等の提出を受けることを求めています。
| 場合 | 条件 |
|---|---|
| 1号 | 当該貸金業者合算額(その業者自身の貸付けの金額と残高の合計)が50万円を超える |
| 2号 | 個人顧客合算額(他社の残高を含めた額)が100万円を超える(1号の場合を除く) |
「50万円」は自社分、「100万円」は他社も含めた合計という違いがポイントです。すでに自社が源泉徴収票などの提出を受けているときは、改めて受ける必要はありません(ただし書き)。
極度方式基本契約(カードローンの枠)の数え方
カードローンのように、枠の中で何度も借りる契約を極度方式基本契約といいます。13条3項は、合算の金額について、極度額(貸金業者が極度額を下回る額を示している場合は、その下回る額)を使うと定めています。
つまり、実際に使った残高ではなく、枠の大きさで数えます。枠を50万円で作ったあとの1回ごとの借入れ(極度方式貸付け)は、13条の2第2項の括弧書きで個人過剰貸付契約から除かれています。判定は、枠を作る(または極度額を増やす)ときに行う、というしくみです。
総量規制がかからない場合の整理
13条の2第2項には、個人過剰貸付契約から外れる2つの道が括弧書きで置かれています。
| 除外契約 | 例外契約 | |
|---|---|---|
| 条文の位置 | 住宅資金貸付契約等(内閣府令で定める契約) | 個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約(内閣府令で定める契約) |
| 例 | 不動産の購入資金、高額療養費の貸付けなど(施行規則10条の21) | 顧客に有利な借換え、緊急の医療費など |
| 合算の扱い | 残高が個人顧客合算額から外れる | 残高は合算されるが、その契約自体は結べる |
日本貸金業協会も、除外貸付けは「借入残高に算入されない」、例外貸付けは「算入される」と区別して案内しています。この違いは試験で問われやすい部分なので、次の記事「総量規制の『除外』と『例外』の違い」で詳しく整理します。
違反したらどうなるか
13条の2に反して個人過剰貸付契約を結んだ場合、貸金業者は行政処分の対象になります。
- 業務改善命令(24条の6の3):資金需要者等の利益の保護のため必要があるときに、業務の方法の変更など、業務の運営の改善に必要な措置を命じられる
- 監督上の処分(24条の6の4):登録の取消し、または1年以内の期間を定めた業務の全部または一部の停止
なお、借りる側が処罰されることはない、と金融庁のQ&Aは案内しています。
試験での覚え方と、授業・講座への導線
総量規制の問題は、次の観点で整理しておくと対応しやすくなります。
- 割合は3分の1。基準額の元は「給与+類する定期的な収入」の合計
- 年金・恩給・事業でない不動産賃貸・安定的な事業所得が4つの類する収入(施行規則10条の22第1項)
- 算定方法は3つ。給与明細法は「直近2か月以上・賞与を除く・12倍」
- 合算するのは貸金業者の残高。銀行等は対象外。他社分は指定信用情報機関で確認
- 50万円(自社分)と100万円(他社分を含む合計)は、収入証明書の提出の基準
- 極度方式は極度額で数える
- 除外は合算から外す、例外は合算には入れる
条文の数字は、いつ時点の法令かを確かめたうえで暗記してください。試験の出題年度の4月1日時点の法令が基準です。
貸金業法の全体の流れと、返済能力の調査から総量規制までのつながりは、貸金業務取扱主任者講座のページで内容を確認できます。試験全体の形式を先に知りたい人は、貸金業務取扱主任者試験とはも合わせて読んでください。
まとめ
- 総量規制は、貸金業法13条の2第1項(返済能力を超える貸付けの禁止)と第2項(個人過剰貸付契約の定義)のしくみ
- 基準額は、給与等の年収の3分の1。他社の残高は指定信用情報機関の情報で合算する
- 年収の範囲は施行規則10条の22第1項の4つ。算定方法は同条2項の3つ
- 銀行等の借入れは合算されず、除外契約と例外契約では合算の扱いが違う
数字の暗記だけでなく、「どの条文のどの項が何を決めているか」をつないで覚えると、択一式の選択肢を落ち着いて判断できます。

