貸金業務取扱主任者試験の名前にもなっている「主任者」は、貸金業者の営業所に置かれる法令遵守の担当者です。試験では、何人置くのか、どんな人は置けないのか、人数が足りなくなったらどうするのか、といった数字と条件が問われます。この記事では、貸金業法12条の3を中心に、設置義務と主任者の役割を表で整理します。
条文は2026年10月19日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験は受験年度の法令が基準になるため、最新の情報は日本貸金業協会の公式サイトでご確認ください。
結論:営業所・事務所ごとに、従事者50人に1人以上の割合で置く
貸金業法12条の3第1項は、貸金業者に次のことを求めています。
- 営業所または事務所ごとに、貸金業務取扱主任者を置くこと
- その営業所等で貸金業の業務に従事する使用人その他の従業者に対して、法令を守って業務を適正に行うために必要な助言または指導を、主任者に行わせること
会社に1人いればよいのではなく、本店にも支店にも、それぞれ置くのがポイントです。そして「置く」だけでなく、助言・指導を「行わせる」ところまでが貸金業者の義務です。
設置の単位は「会社」ではなく「営業所または事務所」です。支店が増えれば、その分だけ主任者が必要になります。
何人置くのか:50分の1以上の割合
人数は、貸金業法施行規則10条の8が決めています。営業所等で貸金業の業務に従事する者の数に対する主任者の数の割合が、50分の1以上になる数です。計算すると、従事者数を50で割って切り上げた人数になります。
| 業務に従事する者の数 | 必要な主任者の数 |
|---|---|
| 1〜50人 | 1人以上 |
| 51〜100人 | 2人以上 |
| 101〜150人 | 3人以上 |
| 20人 | 1人以上 |
| 110人 | 3人以上 |
上の3行は区切りの目安、下の2行は具体例です。51人になった途端に1人では足りなくなる点が、試験で狙われやすい境目です。
「50人につき1人」と覚えると、51人のときに1人で足りると勘違いしがちです。割合が50分の1「以上」ですから、51人なら2人必要です。
主任者として置けない人:常時勤務と他の営業所との兼務
誰でも主任者として置けるわけではありません。施行規則10条の7は、次のどちらかに当てはまる人を、営業所等の主任者として置いてはならないとしています。
| 置けない人 | 内容 |
|---|---|
| 常時勤務しない者 | その営業所等において常時勤務する者でない者 |
| 他の営業所の主任者として登録されている者 | 他の営業所等の主任者として貸金業者登録簿に登録されていて、貸金業法8条1項の届出がされていない者 |
つまり、主任者はその営業所に常時勤務していることが前提です。ただし例外があります。自動契約受付機や現金自動設備だけで貸付けの業務を行う営業所等と、貸金業者である代理店に主任者を置く場合は、この制限がかかりません。
「常時勤務」が具体的にどの程度の勤務実態を指すのかは、金融庁の監督指針で示されています。この記事では条文で確かめた範囲にとどめますので、詳しくは監督指針をご確認ください。
人数が足りなくなったら:予見し難い事由なら2週間以内
主任者が辞めて人数が足りなくなったとき、どうなるのでしょうか。12条の3第3項は、予見し難い事由により主任者の数が足りなくなったときは、2週間以内に、設置義務に適合させるために必要な措置をとらなければならないと定めています。
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| 予見し難い事由で人数が足りなくなった | 2週間以内に必要な措置をとる(12条の3第3項) |
| あらかじめ分かっていた退職などで足りなくなった | 2週間の猶予の対象外と考え、事前に補充しておく必要がある |
下段は、3項が「予見し難い事由」に限って2週間を認めている点からの整理です。何が予見し難い事由に当たるかの具体例は、監督指針で確かめてください。
主任者の職務:助言・指導と、三者それぞれの義務
12条の3第2項は、助言・指導が実際に働くように、三者に義務を置いています。
| 立場 | 義務の内容 |
|---|---|
| 主任者 | 従業者に対し、法令遵守と適正な業務のための助言・指導を行う(1項) |
| 貸金業者 | 主任者が職務を適切に遂行できるよう、必要な配慮を行う(2項) |
| 従業者 | 主任者の助言を尊重し、指導に従う(2項) |
助言は「尊重する」、指導は「従う」という書き分けも覚えておきましょう。
主任者の氏名を示す2つの場面
主任者の氏名は、2つの場面で示す必要があります。
| 場面 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 資金需要者等から請求があったとき | 12条の3第4項 | その業務を行う営業所等の主任者の氏名を明らかにする |
| 営業所等での掲示 | 14条1項4号 | 顧客の見やすい場所に、その営業所等に置かれる主任者の氏名を掲示する |
掲示は、貸付けの利率、返済の方式、返済期間・返済回数と並べて行います。なお、インターネットで公衆の閲覧に供する事項を定めた14条2項は、「第四号を除く」としており、主任者の氏名はインターネット上での公開の対象に含まれていません。
守らないとどうなるか:罰則と業務改善命令
設置義務や氏名の開示に違反した場合の定めもあります。貸金業法49条は、次の者を100万円以下の罰金に処するとしています。
- 12条の3第1項に違反して、主任者を置かなかった者
- 12条の3第4項に違反して、請求があっても主任者の氏名を明らかにしなかった者
- 14条1項に規定する事項(主任者の氏名を含む)を掲示せず、または虚偽の掲示をした者
また、主任者を置いていない(設置義務の要件を欠く)者は、そもそも貸金業の登録を拒否される事由にもなります。登録拒否の全体像は貸金業の登録拒否事由の記事で整理しています。
主任者になるまで:試験合格、講習、登録
ここまでは貸金業者の側の義務でした。次に、主任者になる人の側の手続きを見ます。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 資格試験に合格する | 貸金業務取扱主任者資格試験に合格する | 24条の25第1項 |
| 2. 登録講習を受ける | 登録申請の日前6か月以内に行われる講習を受ける。ただし、試験に合格した日から1年以内に登録を受けるなら不要 | 24条の25第2項 |
| 3. 登録を申請する | 内閣総理大臣に登録申請書を提出する。登録簿に氏名、生年月日、住所などが記載されて主任者になる | 24条の25第4項・24条の26 |
登録の効力は永久ではありません。主任者登録は3年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います(24条の25第3項)。更新は申請によって行い(24条の32第1項)、更新のときも、登録のときと同じく講習を受ける規定が準用されます。3年たてば自動的に更新される、というわけではありません。
登録の拒否・取消しと届出
主任者登録にも、貸金業の登録と似た拒否事由があります(24条の27第1項)。
| 号 | 拒否される者(要約) |
|---|---|
| 1号 | 心身の故障で主任者の職務を適正に執行できない者として内閣府令で定める者 |
| 2号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 3号 | 貸金業の登録を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者(法人の場合は一定の役員だった者を含む) |
| 4号 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わった日などから5年を経過しない者 |
| 5号 | 貸金業法などの違反や貸付けに関する一定の罪で罰金刑に処せられ、執行を終わった日などから5年を経過しない者 |
| 6号 | 暴力団員等 |
| 7号 | 主任者登録の取消しの処分を受け、処分の日から5年を経過しない者 |
| 8号 | 貸金業に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者として内閣府令で定める者 |
主任者に本人の事情が生じたときの届出も定められています(24条の29)。
| 事由 | 届け出る人 | 期限 |
|---|---|---|
| 死亡 | 相続人 | 事実を知った日から30日以内 |
| 拒否事由の1号に該当 | 本人、法定代理人または同居の親族 | その日から30日以内 |
| 拒否事由の2号〜6号に該当 | 本人 | その日から30日以内 |
さらに、内閣総理大臣は、主任者が職務に関して貸金業の法令に違反したときなどに、主任者登録を取り消すことができます(24条の30)。取消しを受けると、7号により、処分の日から5年間は主任者登録を受けられません。
試験での問われ方と覚え方
この分野は、数字と主語を取り違えやすい出題が目立ちます。次の4点を確認しておきましょう。
- 単位は営業所または事務所ごと。人数は従事者50人に対して1人以上の割合(51人なら2人)
- 置けない人は、常時勤務しない者と、他の営業所の主任者として登録されていて届出がない者
- 足りなくなったときの猶予は2週間で、対象は予見し難い事由のとき
- 登録の有効期間は3年で、更新には申請が必要
数字の3つ(50分の1、2週間、3年)と、30日・5年の期間がどの手続きにかかるのかを、表にして繰り返し見直すと定着します。
講座での学び方
主任者制度は、貸金業法の中でも条文の数字と主語を正確に覚える必要がある分野です。貸金業務取扱主任者講座では、AI講師トーレスが授業の内容に沿って質問に答えるので、疑問が出たらその場で確かめられます。登録手続きの全体像は、先に貸金業の登録の記事で押さえておくと、主任者との役割の違いが分かりやすくなります。
まとめ
- 貸金業者は営業所・事務所ごとに主任者を置き、従業者への助言・指導を行わせる(12条の3第1項)
- 人数は従事者数の50分の1以上(施行規則10条の8)。51人なら2人
- 主任者は常時勤務する者で、他の営業所の主任者として登録されたまま(届出なし)の者は置けない(施行規則10条の7)
- 予見し難い事由で足りなくなったら2週間以内に措置をとる(12条の3第3項)
- 氏名は請求があれば明らかにし、営業所等に掲示する(12条の3第4項・14条1項4号)
- 主任者登録は3年ごとの更新が必要で、自動では更新されない(24条の25第3項・24条の32)

