貸金業者は、貸付けをしたら終わりではありません。契約の内容や返済の状況を帳簿に残し、決められた期間は保存し、請求があれば見せる義務があります。貸金業務取扱主任者試験では、「いつから数えて何年保存か」を書類ごとに問う出題が定番です。この記事では、貸金業法19条・19条の2の帳簿の義務を整理し、そのほかの書類の保存期間と見比べます。
条文は2026年10月24日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験は受験年度の法令が基準になるため、最新の情報は日本貸金業協会の公式サイトでご確認ください。
結論:帳簿は営業所ごとに備え、最終の返済期日から10年保存する
貸金業法19条は、貸金業者に次の3つを求めています。
- 営業所または事務所ごとに、業務に関する帳簿を備え付ける
- 債務者ごとに、貸付けの契約について契約年月日、貸付けの金額、受領金額その他の内閣府令で定める事項を記載する
- その帳簿を保存する
保存期間は、貸金業法施行規則17条1項が決めています。契約に定められた最終の返済期日から少なくとも10年間です。債権が弁済などで先に消滅したときは、その消滅した日から数えます。
10年の起算点は「契約を結んだ日」ではありません。返済が終わる約束の日(または債権が消えた日)からです。
帳簿に何を書くのか
法律そのものに書かれている記載事項は、契約年月日・貸付けの金額・受領金額の3つにとどまります。そのほかの事項は施行規則16条1項が定めていて、主な内容は次のとおりです。
| 区分 | 主な記載事項 |
|---|---|
| 契約時 | 契約締結時に交付する書面の記載事項の一部(利率、返済の方式、返済期間・回数など) |
| 保証契約を結んだとき | 保証契約の書面の記載事項 |
| 弁済を受けたとき | 各回の受領金額・受領年月日など |
| 弁済以外で債権が消滅したとき | その事由と年月日、残っている債権の額 |
| 債権を譲渡したとき | 譲受人の商号・名称または氏名と住所、譲渡年月日、債権の額 |
| 交渉の経過 | 債務者等その他の者との交渉の経過の記録 |
「交渉の経過の記録」も帳簿の記載事項に含まれる点が、試験では狙われやすいところです。条文の文言は「貸付けの契約に基づく債権に関する債務者等その他の者との交渉の経過の記録」です。債務者だけでなく、保証人など「その他の者」との交渉も対象になります。
なお、契約時に交付した書面の写しを営業所等ごとに保存すれば、その書面でカバーされる事項の記載に代えられます(施行規則16条3項)。
保存期間の起算点は契約の種類で変わる
ふつうの貸付けと、カードローンのような極度方式基本契約(限度額の枠内で繰り返し借りられる契約)では、数え始める日が違います。
| 契約の種類 | 保存の起算点(そこから少なくとも10年) |
|---|---|
| ふつうの貸付けの契約 | 契約に定められた最終の返済期日。債権が弁済などで消滅したときはその消滅した日 |
| 極度方式基本契約 | 基本契約の解除の日、または基本契約に基づくすべての貸付けの契約に定められた最終の返済期日のうち最後のもの。そのうちいずれか遅い日(債権がすべて消滅したときはその消滅した日) |
極度方式の場合は、基本契約と、そこから出たすべての貸付けをひとまとめにして考えるのがコツです。枠の契約を解除した日と、最後の貸付けの返済期日の、遅いほうから10年になります。
また、営業所等が現金自動設備(無人の自動契約機のようなもの)であるときは、帳簿の備付け自体が不要です(施行規則17条2項)。
帳簿の閲覧・謄写を請求できる人
貸金業法19条の2は、帳簿(利害関係がある部分に限る)の閲覧または謄写を請求できる人を決めています。
| 区分 | 請求できる人 |
|---|---|
| 法律に書かれている人 | 債務者等、債務者等であった者 |
| 施行規則17条の2で定める人 | 法定代理人・後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人 |
| 〃 | 債務者等または債務者等であった者の相続人 |
| 〃 | 債務者等のために、または代わって弁済をした者 |
| 〃 | 上記の人から請求について代理権を付与された者 |
完済した人も請求できます。「債務者等であった者」が含まれるからです。また、債務者の代わりに弁済をした人も、債務者の承諾がなくても請求できる人に入っています。
貸金業者は、請求が請求者自身の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかなときを除き、請求を拒めません(19条の2後段)。閲覧・謄写をさせる時間は、法19条の2に定める場合を除き、営業時間内です(施行規則17条の3)。
義務を破ったときの罰則
帳簿に関する違反は、貸金業法49条で次のように定められています。
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 帳簿を備え付けない、記載しない、虚偽の記載をする、保存しない | 49条5号 | 100万円以下の罰金 |
| 相当の理由がないのに、閲覧・謄写の請求を拒む | 49条6号 | 100万円以下の罰金 |
罰則に加えて、行政処分(業務改善命令・業務停止・登録の取消しなど)の対象にもなります。主任者は営業所の法令遵守の担当者ですから(貸金業務取扱主任者の設置義務と役割)、帳簿の管理は日々の助言・指導の重要な対象です。
書類ごとの保存期間を比べる
帳簿以外にも、貸金業者が保存する書類・記録はいくつもあります。起算点と期間をそろえて見比べましょう。
| 書類・記録 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 最終の返済期日(債権の消滅日)から少なくとも10年 | 施行規則17条1項 |
| 従業者名簿 | 最終の記載をした日から10年 | 施行規則10条の9の2第3項 |
| 返済能力の調査の記録(貸付け時) | 最終の返済期日まで(債権消滅日などの定めあり) | 施行規則10条の18第2項 |
| 途上与信の調査の記録 | 作成後3年間(書面等を発行後3年を超えて用いるときは、発行後5年間) | 施行規則10条の27第2項・3項 |
| 信用情報の提供に関する同意の記録 | 同意に基づき指定信用情報機関が信用情報を保有している間 | 施行規則30条の16 |
| 取引時確認の確認記録 | 特定取引等に係る契約が終了した日などから7年間 | 犯罪収益移転防止法6条2項 |
| 取引記録 | 取引の日から7年間 | 犯罪収益移転防止法7条3項 |
この表のうち、作成した日から数えるのは途上与信の調査の記録です。ほかは、契約の終了や最終の返済期日、最終の記載といった「終わりの日」から数えます。
返済能力の調査の記録については、保証契約に関する別の定め(保証契約の記録は、契約の最終返済期日などと保証債務が消滅した日のうち早い日まで)もあります。細かい場合分けは出題頻度が高くないので、まず「貸付けの調査記録は最終の返済期日まで」を押さえておきましょう。返済能力の調査そのものの流れは返済能力の調査と指定信用情報機関の使い方で整理しています。
「3年」「5年」「7年」「10年」の数字だけを丸暗記すると、起算点の違いで間違えます。「何から数えるか」とセットで覚えてください。
試験での問われ方と覚え方
出題では、次のような形で誤りを見つける問題が考えられます。
- 保存期間の起算点を「契約締結日」としている(正しくは最終の返済期日など)
- 帳簿を「本店にまとめて備えれば足りる」としている(正しくは営業所または事務所ごと)
- 帳簿の請求者を「債務者本人のみ」としている(正しくは相続人・弁済をした者なども含む)
- 交渉の経過の記録が帳簿の記載事項に入らないとしている
- 保存期間を書類の間で取り違えている(途上与信の記録の3年など)
覚え方は次の順です。
- 帳簿は「営業所ごとに備え、債務者ごとに書き、最終返済期日から10年保存」
- 閲覧の請求者は「債務者等・完済者・代理人・相続人・弁済した者」。拒めるのは調査目的でないことが明らかなときだけ
- ほかの書類は、起算点を一つずつ表で確認する
授業では、帳簿の義務と書類の保存期間を一覧で総復習できます。貸金業務取扱主任者講座の授業ページで内容を確認できます。
よくある質問
Q. 帳簿の保存期間は契約日から10年ですか?
いいえ。契約に定められた最終の返済期日から少なくとも10年です。債権が弁済などで先に消滅したときは、その消滅した日から数えます(施行規則17条1項)。
Q. 完済した人は帳簿を見せてもらえますか?
はい。貸金業法19条の2は「債務者等であった者」も請求できると定めています。貸金業者は、権利の行使に関する調査が目的でないことが明らかな場合を除き、拒めません。
Q. 途上与信の調査記録は何年保存しますか?
作成後3年間です(施行規則10条の27第2項)。ただし、調査に使った書面等を発行後3年を超えて使うときは、発行後5年間保存します(同条3項)。
まとめ
- 帳簿は営業所・事務所ごとに備え、債務者ごとに記載し、最終の返済期日(債権の消滅日)から少なくとも10年保存する
- 極度方式基本契約は、基本契約の解除日と最後の返済期日のうち遅いほうから10年
- 閲覧・謄写の請求者は債務者等のほか、完済者・相続人・弁済をした者・代理人など。調査目的でないことが明らかなとき以外は拒めない
- 書類ごとに期間と起算点が違う。途上与信の記録だけは作成後3年
- 違反は100万円以下の罰金(49条5号・6号)と行政処分

