カードローンのように、あらかじめ貸付けの枠(極度額)を決めて、その範囲で何度も借りられる契約があります。貸金業法ではこれを極度方式基本契約といいます。貸金業者は、契約を結んだあとも借り手の返済能力を調べ直さなければなりません。この調べ直しが「途上与信」で、貸金業務取扱主任者試験では、調査の種類・要件・期限・調査後の措置がよく問われます。この記事では、13条の3と13条の4を表で整理します。
条文は2026年10月30日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験は受験年度の法令が基準になるため、最新の情報は日本貸金業協会の公式サイトでご確認ください。
途上与信とは? 契約を結んだあとも返済能力を調べ続ける
契約を結ぶ前の調査と、結んだあとの調査は、別の条文で定められています。
13条の3第1項は、貸金業者が個人顧客と極度方式基本契約を結んでいる場合に、貸付けの時期や金額などの状況から内閣府令で定める要件に当たるとき、指定信用情報機関が持つ信用情報を使って、その契約が「基準額超過極度方式基本契約」に当たるかどうかを調査するよう定めています。契約前の調査については、返済能力の調査と指定信用情報機関の使い方の記事で整理しています。
途上与信の対象は「個人顧客」と結んだ極度方式基本契約です。法人は対象になりません。
「基準額超過極度方式基本契約」とは?
調査で確かめるのは、その契約が基準額を超える契約かどうかです。13条の3第5項は、この契約を次のように説明しています。
- 契約を結んでいることで、その個人顧客の「極度方式個人顧客合算額」が基準額を超えることになる契約
基準額は、13条の2第2項で、年間の給与や定期的な収入を合わせた額に3分の1を掛けた額と定められています。総量規制の考え方と同じです(くわしくは総量規制とはの記事を参照)。
極度方式個人顧客合算額は、次の3つを合算した額です。
②と③から、住宅資金貸付契約等の残高は除かれます。ここで注意したいのは、極度方式の契約は「実際に借りている額」ではなく「枠の大きさ」で数える点です。
調査は2種類 — そのつどの調査と3か月以内ごとの調査
13条の3は、調査を2つの型に分けています。
「そのつど」といっても、貸付けのたびに調べるわけではありません。契約期間を区切った期間ごとに、要件に当たったかどうかを見ます。
そのつどの調査の要件 — 貸付合計5万円超、かつ末日残高10万円超
施行規則10条の24第1項1号は、次のように定めています。
- 契約を結んだ日から1か月以内の一定の期日までの期間と、その翌日以後1か月ごとの期間に区切る
- それぞれの期間で、その期間内の極度方式貸付けの金額の合計が5万円を超える
- かつ、その期間の末日の極度方式貸付けの残高の合計が10万円を超える
2と3の両方に当たった期間が調査の対象になります。どちらか一方だけでは足りません。また、合計額には、同じ個人顧客と結んでいる自社のほかの極度方式基本契約の分も含めます。
特定緊急貸付契約の場合は、5万円と10万円が「零」に置き換わります。
調査が必要になるもう1つの場面が、同条1項2号です。後で説明する新たな貸付けの停止などの措置を解除しようとするときも、調査をします。
「5万円以上」「10万円以上」ではなく「超える」です。ちょうどの額は要件に当たりません。
依頼の期限 — 期間の末日から3週間を経過する日まで
調査では、指定信用情報機関に個人信用情報の提供を依頼します。その期限は、そのつどの調査も定期の調査も同じです。
- そのつどの調査: 要件を満たした期間の末日から3週間を経過する日まで(10条の24第2項)
- 3か月以内ごとの調査: 3か月以内の期間の末日から3週間を経過する日まで(10条の25第2項)
期間の末日が起点であって、貸付けの日ではありません。
定期の調査を行わなくてよい場合
13条の3第2項ただし書を受けて、施行規則10条の25第3項は、定期の調査をしなくてよい場合を並べています。
③では、合理的な理由で止めている場合も含まれますが、その措置を講じた旨・年月日・理由を帳簿に記載していることが条件です。
ここで試験に出やすいのが、貸付けの停止と極度額の減額は別物という点です。新たな貸付けを止めている期間は、定期の調査が要りません(②③)。一方、条文の要件に「極度額を下げたから調査は要らない」という場合は挙がっていません。減額と停止を取り違えないようにしましょう。なお、止めた措置を解除しようとするときは、そのつどの調査が必要になります(10条の24第1項2号)。
資力を明らかにする書面 — 合算額が100万円を超えるとき
13条の3第3項は、調査をしなければならない場合に、極度方式個人顧客合算額が100万円を超えるときは、源泉徴収票など収入や資力を明らかにする書面(または電磁的記録)の提出を受けるよう定めています。
- 基準になるのは極度額ではなく、先ほどの合算額
- すでに同じ種類の書面の提出を受けているときは、あらためて受けなくてよい(ただし書)
100万円という基準は、途上与信の調査で書面の提出を受けるかどうかを分ける数字です。
基準額を超えていたときの措置 — 13条の4
調査の結果、契約が基準額超過極度方式基本契約に当たると認められたら、13条の4により、貸金業者は必要な措置を講じなければなりません。施行規則10条の29が定める措置は2つです。
どちらかを講じる義務があります。調査をして「超えている」と分かっても、何もしないことは許されません。
配偶者貸付けの特例
施行規則10条の28は、基準額超過に当たらない契約(個人顧客の利益の保護に支障がない契約)を定めています。その1つが、個人顧客と配偶者の合算額が、それぞれの基準額の合計を超えない契約です。ただし、配偶者の同意があることが条件です。この特例の契約を結んでいる場合、配偶者の契約を調査するときも、配偶者合算基準額超過になっていないかをあわせて調査します。
調査の記録 — 個人顧客ごとに作成し、3年間保存
13条の3第4項は、調査の記録の作成と保存を求めています。施行規則10条の27第1項が定める記録事項は次の5つです。
記録は、個人顧客ごとに作成し、作成後3年間保存します(同条2項)。資力を明らかにする書面をその発行後3年を超えて用いるときは、発行後5年間の保存が必要です(同条3項)。
試験での問われ方・覚え方
次の観点が問われやすい項目です。
- そのつどの調査の数字(5万円超・10万円超)と、「かつ」であること
- 調査の依頼期限(期間の末日から3週間を経過する日まで)
- 定期の調査(3か月以内ごと)を行わなくてよい場合
- 合算額が100万円を超えたときの書面の提出
- 基準額超過のときの措置は「減額」か「停止」の2つ
- 記録は個人顧客ごと、保存は3年
覚えるときは、数字を表にして自分で書き出す練習が効果的です。「5万円→貸付けの合計」「10万円→末日の残高」「100万円→合算額」「3週間→依頼期限」「3年→記録の保存」と、対応を口に出して確認してください。契約時に交付する書面との関係は、契約締結前の書面と契約締結時の書面の違いの記事もあわせて読むと整理しやすくなります。
授業で順番に確認したい場合は、貸金業務取扱主任者講座のページで内容を確認できます。
よくある質問
Q. 途上与信の調査は貸付けのたびに行いますか?
いいえ。契約期間を1か月ごとなどの期間に区切り、貸付けの合計が5万円を超え、かつ期間の末日の残高が10万円を超えた期間について行います。
Q. 調査の結果、基準額を超えていたらどうなりますか?
13条の4により、極度額の減額、または新たな極度方式貸付けの停止のいずれかの措置を講じる義務があります(施行規則10条の29)。
Q. 調査の記録はいつまで保存しますか?
個人顧客ごとに作成し、作成後3年間保存します(施行規則10条の27)。
まとめ
- 途上与信は、極度方式基本契約を結んだあとも、指定信用情報機関の信用情報で返済能力を調べ直す制度(13条の3)
- そのつどの調査は「貸付合計5万円超かつ末日残高10万円超」、定期の調査は3か月以内ごと。依頼は期間末日から3週間を経過する日まで
- 基準額超過なら13条の4により、減額か新たな貸付けの停止。記録は個人顧客ごとに3年保存