総会の決議要件は、区分所有法にも標準管理規約にも書かれています。試験で混乱しやすいのは、「この割合は法律の話か、規約の話か」という点です。結論を先に言うと、決議の割合は両者でほぼ同じで、違いが出るのは普通決議と定足数です。この記事では、標準管理規約47条と区分所有法を対照表にして整理します。条文は令和7年改正(区分所有法は2026年4月1日施行)後の現行の規定で、2026年10月29日時点の内容です。
結論:違いは「普通決議の数え方」と「定足数」
まず全体像です。
法は普通決議で「頭数と議決権」を数えます。標準管理規約の普通決議は「議決権」だけです。区分所有法39条1項が、規約で別段の定めをすることを認めているため、このような規定ができます。
普通決議の違いを数字で確かめる
ひばりマンションを例にします。組合員は46人、議決権は50個とします。ある議案に、書面や代理人の分を含めて28人・31個が出席し、賛成が23個だったとします。
規約の普通決議は、議決権の過半数だけで決まります。出席者が最少でも通るため、国土交通省のコメントは、大規模修繕工事のように多額の費用がかかる事項は、規約で「組合員総数及び議決権総数の過半数」などと厳しくしてもよいとしています。
定足数の違いは、令和7年改正で大きく動いた
令和7年の区分所有法の改正で、特別多数決議(各4分の3など)は、出席者を母数にして数える方式に変わりました。そのかわり、決議のための出席要件が設けられています。
標準管理規約も、これに合わせて見直されました。47条の1項(総会成立の定足数)は、改正前の「議決権総数の半数以上」から「議決権総数の過半数」になっています。3項(4分の3)と4項(3分の2)の事項は、1項の要件に加えて、組合員総数の過半数の出席も必要です。
なお、国土交通省のコメントは、住戸数の少ない小規模マンションでは、総会成立の定足数を改正前と同じ「議決権総数の半数以上」とすることも考えられる、としています。
4分の3の決議で決める事項
標準管理規約47条3項は、出席組合員とその議決権の各4分の3以上で決める事項を5つ挙げています。
- 規約の制定、変更、廃止
- 敷地・共用部分等の変更(形状または効用の著しい変更を伴わないものと、耐震改修促進法の認定を受けた耐震改修を除く)
- 2に伴って必要になる専有部分の保存行為等
- 区分所有法58条1項・59条1項・60条1項の訴えの提起
- 総会で、この方法で決議することにした事項
規約の変更が一部の組合員に特別の影響を及ぼすときは、その組合員の承諾が必要です(9項)。区分所有法31条1項と同じ考え方です。
3分の2の決議で決める事項
3分の2に緩和されるのは、次の事項です(規約47条4項、法17条5項・61条5項)。
国土交通省のコメントの例では、階段にスロープを併設して手すりを追加する工事は普通決議です。階段室を改造したり、外壁に外付けしたりしてエレベーターを新設する工事は、3分の2の決議にあたります。耐震改修は、柱やはりに炭素繊維シートを巻く程度なら普通決議、基礎を切断して免震構造にするような大きな加工は3分の2です。分かれ目は、建物の基本的構造部分への加工の大きさです。いずれも、最終的には個別の工事の内容で判断します。
マンション再生等の決議は全体の数で決める
建替え決議・建物更新決議・取壊し決議は、出席者ではなく全体の各5分の4以上です。建物敷地売却決議などは、これに敷地利用権の持分の価格の5分の4以上も加わります。耐震性不足などの客観的事由があるときは、いずれも4分の3以上に下がります(法62条2項、規約47条5項・6項)。
試験での取り違えポイント
授業・講座への導線
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決議の割合そのものは区分所有法の決議要件を1枚の表で整理した記事、令和7年改正の全体像は区分所有法改正の記事でも確認できます。
よくある質問
Q. 標準管理規約の普通決議では、頭数は数えないのですか?
数えません。47条2項は、出席組合員の議決権の過半数で決すると定めています。区分所有法39条1項は「出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」ですが、規約で別段の定めをすることができます。
Q. 特別決議の総会に必要な出席はどれだけですか?
組合員総数の過半数であって、議決権総数の過半数を有する組合員の出席が必要です(規約47条3項・4項)。そのうえで、出席組合員とその議決権の各4分の3以上(または3分の2以上)の賛成で決まります。
Q. 標準管理規約は法律と同じ効力がありますか?
ありません。標準管理規約は国土交通省が示したひな型で、各マンションは自分の規約を定めて使います。法律の強行規定に反する定めはできませんが、規約で別段の定めができる事項については、規約が優先します。
まとめ
- 決議の割合(4分の3・3分の2・5分の4)は、法と標準管理規約で同じ。違いは普通決議(規約は議決権だけ)と定足数(規約は議決権総数の過半数)
- 特別決議の事項は、議決権総数と組合員総数の各過半数の出席が必要
- 3分の2は、瑕疵の除去・バリアフリー化と、2分の1を超える滅失の復旧。マンション再生等は全体の5分の4
- 割合を覚えるときは、「出席者で数えるか、全体で数えるか」を必ず確かめる
標準管理規約の条文は、法律の条文と並べて読む習慣をつけると、取り違えが減ります。