集じん装置は、ばいじん・粉じん特論の中心になる分野です。重力、遠心力、洗浄、ろ過、電気と種類が多く、「どれがどの粒径に強いのか」「圧力損失が大きいのはどれか」を取り違えやすいところでもあります。この記事では、6種類の集じん装置を「何の力で捕まえるか」「得意な粒径」「圧力損失」「集じん率」の4つの軸で比べます。試験全体のしくみは公害防止管理者試験とは?、区分ごとの科目の違いは大気・水質1種〜4種の違いにまとめています。
集じん装置の6種は、何の力でダストを捕まえるのか
国立環境研究所の環境展望台は、ばいじんを取り除く装置を重力式、慣性式、遠心式、洗浄式、ろ過式、電気式の6種に分類しています。名前のとおり、ダストに働かせる力の違いで分かれます。
力の名前をそのまま装置名にしているので、まずは「装置名=力」を結び付けておけば十分です。
得意な粒径・圧力損失・集じん率を一枚の表で比べる
環境展望台の表(表2)をもとに、6種類を並べます。数値は形式や運転条件で変わる目安です。資料によって範囲の取り方が違うので、試験では数値そのものより、装置同士の大小関係を押さえます。
(出典:国立環境研究所 環境展望台「ばいじん除去技術」、2026年10月26日確認)
この表から、次の3つの読み方ができます。
- 粒径:上から下へ進むほど、細かい粒子まで捕れるようになります。重力・慣性力は粗い粒子向き、遠心力は数μmまで、洗浄・ろ過・電気は0.1μm前後まで届きます
- 圧力損失:洗浄式がいちばん大きく、電気式・重力式は小さい。圧力損失はファンの動力に直結するので、運転費の大きさにも響きます
- コスト:電気式は圧力損失が小さく運転費は抑えられますが、設備費が大きい。洗浄式は運転費が大きい側です
電気集じんは「圧力損失が小さいのに、集じん率が高い」という、表の中で目立つ組み合わせです。反対に、洗浄集じん(ベンチュリースクラバー)は細かい粒子まで捕れますが、圧力損失が最大です。「細かい粒子が捕れる=圧力損失が小さい」とは限りません。
各装置の特徴を、試験で問われる角度から整理する
重力集じんと慣性力集じん
重力集じんは、含じんガスを広い空間に通して流速を落とし、粒子を沈めます。圧力損失は小さい一方、ガスをゆっくり流す必要があるため装置が大きくなります。集じん率は高くなく、主に一次処理(前処理)に使われます。慣性力集じんも20μm以上の粒子向きで、集じん率は低めです。
遠心力集じん(サイクロン)
円筒の中でガスを旋回させ、遠心力で粒子を壁に寄せます。構造が簡単で可動部がなく、高温に耐える材質でも作れます。数μmまで捕れますが、それより細かい粒子には不十分なことが多く、一次処理や粉体の回収に使われます。小型のサイクロンを多数並べたマルチサイクロンもあります。
洗浄集じん
水滴や水膜を捕集に使う湿式で、高温のガスにも使え、液体のミストも除去できます。加圧水型にはスプレー塔、充填塔、ベンチュリースクラバーがあり、ベンチュリースクラバーは洗浄式の中で最も性能が高い一方、圧力損失も大きくなります。
ろ過集じん(バグフィルター)
ろ布の袋でダストをこし取る装置です。ろ布の表面にダストの層ができると、細かい粒子までほぼ捕れるようになります。ダストは振動、逆洗、パルスジェットなどで払い落とします。現在はパルスジェット式が最も普及しているとされます。
電気集じん
直流の高電圧によるコロナ放電で粒子を帯電させ、クーロン力で集じん電極に付着させます。高温・高湿のガスにも対応でき、約0.05μmまでの粒子を捕集できるため、最終段の集じん装置として広く使われています。
前段と仕上げ — 装置はどう組み合わせて使うのか
実際の施設では、1種類だけで済ませず、役割を分けて組み合わせます。
- 前段(一次処理):重力・慣性力・遠心力の装置で、粗い粒子をまとめて減らす
- 仕上げ(最終):洗浄・ろ過・電気の装置で、細かい粒子まで捕り、排出基準を守る
たとえば、粗い粉じんと細かい粉じんが混ざって出る工程なら、前段のサイクロンで大きい粒子を取り除き、後段のバグフィルターで残りの細かい粒子を仕上げます。前段で量を減らせば、後段の装置の負担も軽くなります。
計算の入口 — 沈降速度とサイクロンの遠心効果
試験ではこの分野の計算も出ます。ここでは、自作の数値で2つの基本式を確かめます。
重力沈降室の集じん率
ストークスの式(粒子の終末沈降速度)は、粒径の2乗に比例します。ガスの密度は粒子の密度よりずっと小さいので、省いて考えます。
- 粒径20μm、粒子の密度2,500kg/m³、ガスの粘度1.8×10⁻⁵Pa·s、重力加速度9.8m/s²とする
- 終末沈降速度 = (20×10⁻⁶)²×2,500×9.8 ÷ (18×1.8×10⁻⁵) = 約0.030m/s
沈降室の長さ5m、高さ1m、ガスの水平方向の流速0.3m/sで、層流のモデルなら、集じん率は「沈降速度×長さ÷(流速×高さ)」です。0.030×5÷(0.3×1)=約0.50、つまり約50%になります。粒径を2倍の40μmにすると沈降速度は4倍の約0.12m/sになり、計算値は2を超えます。1以上なら100%捕れる、という扱いです。
サイクロンの遠心効果
遠心効果Zは、遠心力が重力の何倍かを表し、入口流速の2乗を、半径と重力加速度の積で割って求めます。
- 入口流速15m/s、旋回の半径0.25mなら、Z=15²÷(0.25×9.8)=225÷2.45=約92
- 遠心力は重力の約92倍。重力集じんより、はるかに細かい粒子まで捕れる計算です
圧力損失は入口流速の2乗に比例するので、流速を上げると捕れる粒子は細かくなりますが、圧力損失は急に増えます。計算の進め方は燃焼計算の基本の記事と同じく、単位をそろえて一段ずつ追うのがコツです。
公害防止管理者等国家試験では、使える電卓が四則演算・開平計算・百分率計算などの機能だけのものに限られます(受験案内「電卓の取扱」)。最新の規定は毎年の受験案内で確認してください。
ばいじん・粉じん特論の中での位置づけ
産業環境管理協会の「2026(令和8)年度 受験案内」では、ばいじん・粉じん特論の試験科目の範囲は次の6項目です。
- 処理計画に関すること
- 集じん装置の原理、構造及び特性に関すること
- 集じん装置の維持・管理に関すること
- 一般粉じん発生施設と対策に関すること
- 特定粉じん発生施設と対策、測定に関すること
- ばいじん・粉じんの測定に関すること
「集じん装置の原理、構造及び特性」と「維持・管理」の2項目が、この記事の内容にあたります。試験問題数は15問で、大気関係第1種〜第4種と特定粉じん関係の試験区分で受験する科目です(一般粉じん関係は「ばいじん・一般粉じん特論」という別の科目)。時間割は区分ごとに決まっており、令和8年度の大気関係第1種では12時45分〜13時35分(50分)でした。詳細は毎年の受験案内を確認してください。
覚え方のコツと、よくある取り違え
迷ったときは、粒径・圧力損失・設備費と運転費の3つの軸で判定します。
授業で学ぶには
資格のエアポートの公害防止管理者講座では、ばいじん・粉じん特論を、全体像と処理計画、ダストの性質、集じん率、集じんの基礎理論、重力・慣性力・遠心力、洗浄、ろ過、電気と、装置ごとの授業に分けて学べます。AI講師のトーレスに、わからないところをその場で質問することもできます。料金は月額 3,317円〜(年額プラン 39,800円・一括払いの月あたり)です。
まとめ
集じん装置は「力」で6種に分かれ、粗い粒子は重力・慣性力・遠心力、細かい粒子は洗浄・ろ過・電気が受け持ちます。圧力損失は洗浄式が最大で、電気式は小さいのに集じん率が高い。施設では前段で粗い粒子を減らし、後段で仕上げる組み合わせが基本です。
数値は覚えるより、大小関係で押さえましょう。
よくある質問
Q. 集じん装置でいちばん細かい粒子まで捕れるのはどれですか?
電気集じんです。国立環境研究所の表では、適用の粒子径の下限は約0.05μmとされています。洗浄式(ベンチュリースクラバー)とろ過式は0.1μm前後まで届きます。
Q. 圧力損失がいちばん大きい集じん装置はどれですか?
洗浄集じん(ベンチュリースクラバー)です。表の目安は3.0〜9.0kPaで、6種類の中で最大です。
Q. ばいじん・粉じん特論は何問出ますか?
15問です。大気関係第1種〜第4種と特定粉じん関係の試験区分で受験します。年度の最新情報は産業環境管理協会の受験案内で確認してください。