公害防止管理者の大気関係の試験で、多くの受験者が身構えるのが「燃焼計算」です。式が多そうに見えますが、実際は決まった手順を1段ずつ進めるだけの計算です。この記事では、大気特論で使う燃焼計算の道具と手順を、気体燃料の例題で順番に整理します。試験全体のしくみは公害防止管理者試験とは?、区分ごとの違いは大気・水質1種〜4種の違いにまとめています。
燃焼計算はどの試験科目で、どう出るか
産業環境管理協会(公害防止管理者試験センター)の「2026(令和8)年度 受験案内」によると、大気特論の試験科目の範囲は次の6項目です。
- 燃料に関すること
- 燃焼計算に関すること
- 燃焼方法及び燃焼装置に関すること
- 排煙脱硫技術に関すること
- 窒素酸化物排出防止技術に関すること
- 測定に関すること
燃焼計算は、この2番目にあたります。大気特論は同じ受験案内で、問題数15問、令和8年度の時間割では14時10分から15時までの50分とされています。大気関係の第1種から第4種のすべてで受ける科目なので、大気を受けるなら避けて通れません。
公害防止管理者等国家試験では、関数電卓は使用禁止です。使える電卓は、四則演算・開平(ルート)・百分率などの機能だけのものに限られます(受験案内「電卓の取扱」)。対数や指数の計算を電卓に頼れない前提で、数字をきりのよい形に整えて解く練習が必要です。最新の規定は毎年の受験案内で確認してください。
道具をそろえる:4つの約束ごと
燃焼計算は、次の4つの約束ごとを使います。問題文にこの値が書かれている場合は、その値を優先してください。
| 道具 | 内容 |
|---|---|
| 原子量 | 炭素12、水素1、酸素16、硫黄32、窒素14と丸めて使う |
| 気体1kmolの体積 | 気体の種類によらず22.4m³N(0℃・1気圧に直した体積) |
| 空気の組成 | 体積で酸素21%、窒素79%として扱う |
| 気体の体積比 | 気体どうしでは、反応式の係数の比がそのまま体積の比になる |
m³N(ノルマル立方メートル)は、0℃・1気圧の状態に直した体積を表す単位です。気体燃料では「体積比=係数比」が使えるので、kmolに直さずに反応式の係数をそのまま掛け算に使えます。
手順の全体像:1段ずつ進める
気体燃料1m³Nを燃やす場合、与えられるのは燃料の組成と空気比です。そこから、次の順に進みます。
| 段 | 求めるもの | 式 |
|---|---|---|
| 1 | 理論酸素量 O₀ | 成分ごとの「要る酸素」×割合の合計 |
| 2 | 理論空気量 A₀ | O₀ ÷ 0.21 |
| 3 | 実際空気量 A | 空気比 m × A₀ |
| 4 | 燃焼ガスの中身 | CO₂・H₂O・N₂・余った O₂ を足し上げる |
| 5 | 湿り・乾き | 湿り=4つの合計、乾き=湿り−水蒸気 |
空気比とは、実際に送る空気量が理論空気量の何倍かを表す値です。完全に燃やし切るために、ふつうは理論空気量より多めの空気(空気比が1より大きい)を送ります。
成分ごとの「要る酸素」
主な成分1m³Nを燃やすときの、要る酸素・できる二酸化炭素・できる水蒸気は反応式の係数から決まります。
| 成分 | 要る酸素 | 二酸化炭素 | 水蒸気 |
|---|---|---|---|
| 水素 H₂ | 0.5 | なし | 1 |
| 一酸化炭素 CO | 0.5 | 1 | なし |
| メタン CH₄ | 2 | 1 | 2 |
| エタン C₂H₆ | 3.5 | 2 | 3 |
| 窒素 N₂・二酸化炭素 CO₂ | 燃えない | そのまま | なし |
炭化水素なら、要る酸素は「炭素の数+水素の数÷4」で出せます。メタンなら 1+4÷4=2、エタンなら 2+6÷4=3.5です。
例題:メタン主体のガスを空気比1.1で燃やす
燃料ガスが体積で、メタン90%、エタン6%、窒素4%、空気比が1.1のとき、燃料1m³Nあたりの量を求めます(数値はこの記事用に作った例です)。
1. 理論酸素量
2×0.90+3.5×0.06=1.80+0.21=2.01
2. 理論空気量
2.01÷0.21=9.57
3. 実際空気量
1.1×9.57=10.53
4. 燃焼ガスの中身
| 中身 | 計算 | 量 |
|---|---|---|
| 二酸化炭素 | 0.90+2×0.06 | 1.02 |
| 水蒸気 | 2×0.90+3×0.06 | 1.98 |
| 窒素 | 0.04(燃料)+0.79×10.53 | 8.36 |
| 酸素(余り) | 0.21×(10.53−9.57) | 0.20 |
| 湿り燃焼ガス量 | 4つの合計 | 11.56 |
| 乾き燃焼ガス量 | 11.56−1.98 | 9.58 |
窒素は「燃料にもともとある分」と「空気から来た分」の2つを足すのを忘れやすいところです。
検算:余りの酸素は別の式でも出る
余った酸素は、別の見方でも出せます。空気比が1.1なら、理論より1割多く空気を送るので、余る酸素は理論酸素量の1割です。0.1×2.01=0.20で、上の表の値と一致します。空気比が1なら余る酸素はゼロになる、という極端な場合とも整合します。
空気比を排ガスの酸素濃度から出す
実際の現場では、排ガスの酸素濃度を測って空気比を見積もります。完全燃焼で、燃料の窒素が少ないとみなせるとき、乾き排ガスの酸素濃度O₂(%)から、空気比はおよそ次の式で出せます。
空気比 m ≒ 21 ÷(21 − O₂)
酸素が0%なら空気比は1、酸素が多いほど空気比は大きくなります。先の例題の乾きガスでは、酸素の濃度は0.20÷9.58=約2.1%です。式に入れると 21÷(21−2.1)=約1.11となり、元の空気比1.1にほぼ一致します。近似式は窒素を79%とみなしているため、わずかに大きめに出ます。
固体・液体燃料は元素ごとに積み上げる
石炭や重油では、燃料の組成が質量の割合(炭素・水素・硫黄・酸素など)で与えられ、燃料1kgあたりで考えます。元素ごとの理論酸素量を足し上げる考え方は同じです。
| 元素1kg | 反応 | 要る酸素 | 理論空気量 |
|---|---|---|---|
| 炭素 | C+O₂→CO₂ | 22.4÷12=1.87m³N | 1.87÷0.21=8.89m³N |
| 水素 | H₂+½O₂→H₂O | 22.4÷4=5.60m³N | 5.60÷0.21=26.7m³N |
| 硫黄 | S+O₂→SO₂ | 22.4÷32=0.70m³N | 0.70÷0.21=3.33m³N |
燃料に酸素が含まれる場合は、その分だけ外から送る酸素が減ります。同じ質量なら、水素の多い燃料ほど必要な空気が増えることも、表から読み取れます。
つまずきやすい点と覚え方
| 正しい | よくある誤り |
|---|---|
| 理論空気量は理論酸素量を0.21で割る | 0.21を掛けてしまう |
| 余りの酸素は空気の差に0.21を掛ける | 差をそのまま酸素量にする |
| 窒素は燃料の分と空気の分を足す | 空気の分だけにする |
| 乾きガスは湿りから水蒸気を引く | 乾きにも水蒸気を含める |
| 濃度は乾き基準か湿り基準かを確かめる | 乾きと湿りの値をそのまま比べる |
迷ったときは、窒素と酸素の収支で確かめます。燃焼ガスの窒素から燃料の窒素を引いた量は、実際空気量×0.79と一致するはずです。この検算は数十秒でできるので、関数電卓を持ち込めない試験では特に有効です。
講座で燃焼計算を学ぶには
公害防止管理者講座では、大気特論の授業の中で、燃焼計算に使う道具の確認から、気体燃料・固体燃料・液体燃料の計算、空気比の求め方、混焼や二酸化いおうの濃度に関する応用まで、順を追って扱っています。講座ページで授業の構成を確認できます。
まとめ
- 燃焼計算は、理論酸素量 → 理論空気量 → 実際空気量 → 燃焼ガス量の順に1段ずつ進める。
- 空気量は0.21で割り、余りの酸素は0.21を掛ける。向きを取り違えない。
- 窒素は燃料の分と空気の分の2つ。乾きは湿りから水蒸気を引く。
- 空気比は乾き排ガスのO₂から、およそ21÷(21−O₂)で見積もれる。
- 試験では関数電卓を持ち込めない。四則とルートで解ける形に整える練習をしておく。
試験の日程や科目の最新情報は、必ず産業環境管理協会 公害防止管理者試験センターの公式ページで確認してください(この記事は2026年10月16日時点で確認した2026年度の受験案内に基づきます)。

