公害防止管理者試験を受ける人がほぼ全員そろって通る科目が、公害総論です。その最初に出てくる法律が環境基本法です。条文の数は多くありませんが、「公害」と「環境への負荷」の定義や、環境基準の対象のように、言葉を一語入れ替えただけの選択肢で問われやすい箇所が集まっています。この記事では、e-Gov法令検索で条文を確認しながら、環境基本法のうち試験対策で押さえたい条を順に整理します。試験全体の仕組みは公害防止管理者試験とは?にまとめています。
環境基本法は公害総論のどこで問われるのか
産業環境管理協会の2026(令和8)年度受験案内では、公害総論の試験科目の範囲は次の5つとされています。
- 環境基本法及び環境関連法規の概要に関すること
- 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律体系に関すること
- 環境問題全般に関すること
- 環境管理手法に関すること
- 国際環境協力に関すること
公害総論は全試験区分に共通の科目で、大気関係も水質関係も同じ問題を解きます。つまり、どの区分を受けるにしても、環境基本法は避けて通れません。
2026年度の受験案内では、解答にあたって適用する関係法令とJISは、令和8年4月1日時点で施行のものとされています。次の試験を受けるときは、その年度の基準日を受験案内で確認しましょう。
1条:環境基本法の目的は何か
1条は、この法律が何を定め、何のために定めるのかを述べています。
ここで覚えたいのは、「責務を負う主体は4者(国・地方公共団体・事業者・国民)」という点です。選択肢で「国、地方公共団体及び事業者」のように国民が抜けていないかを見ます。
2条:「環境への負荷」「地球環境保全」「公害」の定義
2条は3つの言葉を定義します。試験ではここがいちばん狙われます。
公害の7つの現象(典型7公害)
公害の定義に挙げられた現象は、次の7つに限られます。
- 大気の汚染
- 水質の汚濁
- 土壌の汚染
- 騒音
- 振動
- 地盤の沈下
- 悪臭
条文には細かい注記が2つあります。水質の汚濁には、水質以外の水の状態や水底の底質が悪化することも含まれます。地盤の沈下からは、鉱物の掘採のための土地の掘削によるものが除かれます。この2つは、例外を問う選択肢で使われやすいところです。
「環境への負荷」と「公害」の読み分け
例を挙げて確認します。ある工場が排水を出し、下流の広い範囲の井戸水が飲めなくなったとします。事業活動に伴い、相当範囲にわたって水質が汚濁し、人の健康や生活環境に被害が出ているので、公害の定義に当てはまります。
一方、まだ被害は出ていないけれど、このまま排水を続けると支障が出るかもしれない、という段階の影響は、環境への負荷です。被害が出ていなくても、おそれがあれば足りるからです。見分けるコツは、文の終わりが「被害が生ずること」なら公害、「おそれのあるもの」なら環境への負荷、と覚えることです。
3〜5条:3つの基本理念
3条から5条は、環境の保全をどんな考え方で進めるかという基本理念です。見出しと要点を対応させて覚えます。
4条の要の言葉は、「公平な役割分担」「自主的かつ積極的」「未然に防がれる」です。選択肢でこれらが別の言葉(たとえば「国が主導して」など)に差し替えられていないかを確かめます。
6〜9条:4者の責務は主語で分ける
6条から9条は、国・地方公共団体・事業者・国民それぞれの責務です。どれも「基本理念にのっとり」で始まります。
施策を策定して実施するのは、国と地方公共団体です。事業者と国民に施策を策定する責務があるという選択肢は誤りです。
事業者の責務(8条)は4項まであり、段階的に広がります。
- 1項:ばい煙、汚水、廃棄物等の処理など、公害を防止し、又は自然環境を適正に保全する措置を講ずる責務
- 2項:製品などが廃棄物となった場合に、適正な処理が図られるようにする措置を講ずる責務
- 3項:製品の使用・廃棄による環境への負荷の低減に資するよう努め、再生資源などを利用するよう努める(努力義務)
- 4項:事業活動に伴う環境への負荷の低減などに自ら努め、国や地方公共団体の施策に協力する責務
3項は「責務」でなく「努めなければならない」と書かれている点も、条文の文末を問う問題で意識しておきます。
10条:環境の日は6月5日
10条は環境の日を定めます。事業者及び国民の間に環境の保全についての関心と理解を深め、活動への意欲を高めるために設けられ、日付は6月5日です。国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めます。日付と、「実施するよう努める」主体が国と地方公共団体であることがセットで問われます。
15条:環境基本計画の決め方
15条は、政府が環境の保全に関する基本的な計画(環境基本計画)を定めることを定めています。手続は次の順です。
- 環境大臣が、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成する
- 閣議の決定を求める
- 閣議の決定があったら、遅滞なく環境基本計画を公表する
計画に定めるのは、環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱と、施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項です。案を作るのが環境大臣、意見を聴く先が中央環境審議会、決めるのが閣議、という分担を押さえます。
16条:環境基準の対象は4つだけ
16条1項は、政府が環境基準を定めると規定しています。環境基準は、人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準です。
典型7公害のうち、環境基準が定められるのは4つです。この4つは、条文に挙げられた順に覚えるとよいでしょう。
16条にはほかに、次の内容があります。
- 基準が二以上の類型を設ける場合、地域や水域の指定の事務は、その区分に応じて政府、市の長、都道府県知事のいずれかが行う(2項)
- 基準には、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない(3項)
- 政府は、公害の防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより、基準が確保されるよう努める(4項)
環境基準は「維持されることが望ましい基準」で、守らなければ罰則がかかる規制値ではなく、行政が目指す目標です。この点は、排出基準などの規制の値と取り違えないようにしましょう。環境基準の改定の具体例は、光化学オキシダントの新しい環境基準で整理しています。
試験で間違えやすいポイントのまとめ
学習の進め方と講座のご案内
環境基本法は、条文を一度通して読むより、「定義」「4者の責務」「環境基準」「環境基本計画」の4つの束に分けて、表で確認するほうが定着しやすい法律です。語句の入れ替えで問われるので、表の「文の終わり」や「主語」の列を声に出して言えるようにしておきましょう。
公害防止管理者講座では、公害総論の授業で環境基本法の条文を順に取り上げ、AI講師のトーレスにわからない点をその場で質問できます。まずは公害総論から進めると、どの区分を受ける場合にも土台になります。
よくある質問
Q. 環境基本法に罰則はありますか。
この記事で取り上げた条文は、理念・責務・計画・環境基準を定めるもので、個別の規制や罰則は大気汚染防止法・水質汚濁防止法などの個別法で定められています。
Q. 公害の定義に「悪臭」は含まれますか。
含まれます。2条3項の公害の7つの現象は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭です。ただし悪臭は環境基準の対象ではありません。
Q. 環境基準は守らないと罰せられますか。
環境基準は、維持されることが望ましい基準として政府が定める目標です。工場に直接かかる排出基準や排水基準とは性格が異なります。
Q. 条文は暗記が必要ですか。
定義や環境基準の対象のように、語句の入れ替えで問われやすい箇所は、言葉のまま覚える価値があります。全文の暗記ではなく、表で整理した要点を押さえるのが効率的です。
まとめ
環境基本法は、1条の目的、2条の定義、3〜5条の基本理念、6〜9条の4者の責務、15条の環境基本計画、16条の環境基準が試験の中心です。公害は被害が生ずること、環境への負荷はおそれで足りること、環境基準の対象は大気・水質・土壌・騒音の4つであることを、表で繰り返し確認しましょう。法令の最新の内容は、e-Gov法令検索で確認できます。