公害防止管理者の資格を取ると、工場の中でどんな立場になるのか。その答えが書かれているのが「公害防止組織法」です。正式名称は「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」で、公害総論の試験で出る定番の法律です。この記事では、e-Gov法令検索で法律・施行令・施行規則を確認しながら、役割の違い、選任と届出の期限、解任命令、罰則を順に整理します。試験全体の仕組みは公害防止管理者試験とは?、環境基本法は環境基本法の要点にまとめています。
公害防止組織法は何のための法律か
1条は、公害防止統括者等の制度を設けることで、特定工場における公害防止組織の整備を図り、公害の防止に資することを目的とする、と定めています。
大気汚染防止法や水質汚濁防止法は、排出基準そのものを決める法律です。これに対して公害防止組織法は、基準を守るために工場の中に誰が責任を持つのかという体制を決める法律です。工場ごとに責任者の組織をつくらせるイメージです。
排出基準を決めるのは大気汚染防止法・水質汚濁防止法など。基準を守る人の体制を決めるのが公害防止組織法、と役割を分けて覚えます。
登場人物は次の4つの立場です。
国家試験などの資格が必要なのは、管理者・主任管理者とそれぞれの代理者です(7条)。統括者は資格ではなく、事業の実施を統括管理する立場の人(工場長にあたる人)で決まります。
特定工場と特定事業者とは
この法律の対象になる工場を特定工場、特定工場を設置している者を特定事業者といいます。選任をして届出をする義務を負うのは、特定事業者です。
特定工場になるには、まず業種が決まっています。施行令1条で、次の4つです。
- 製造業(物品の加工業を含む)
- 電気供給業
- ガス供給業
- 熱供給業
そのうえで、2条が設置している施設の種類で7つに分けています。
間違えやすいのは、騒音と振動です。ほかの区分と違い、指定地域の中にある工場だけが対象になります。なお、この記事を載せている公害防止管理者講座は、公害総論と大気関係・水質関係の科目を扱い、騒音・振動やダイオキシン類の試験区分は扱っていません。
選任の期限と届出の期限は別物
この法律で最も入れ替えて問われやすいのが期限です。選任の期限は施行規則、届出の期限は法律本文で決まっています。数え始める日も違います。
「60日」が出てくるのは、管理者と主任管理者を選任するときだけです。届出は、どの役職でも30日です。
「選任の日から60日以内に届け出る」のように、数え始めと期限をすり替えた文は誤りです。選任は「事由が発生した日から」、届出は「選任した日から30日以内」と区別しましょう。
代理者の選任と届出は、本人と同じ期限・同じ手続でします(施行規則10条)。届出は、法令上は都道府県知事宛てですが、政令で定める市の区域では、その市の長が事務を行うことがあります(14条)。
統括者が不要な場合と、主任管理者が必要な工場
統括者は原則として選任しますが、小規模の事業者には例外があります。施行令6条により、常時使用する従業員の数が20人以下であることが条件です。条件は従業員数だけで、工場の規模や業種は関係しません。
主任管理者を置く工場の要件は、施行令9条にあります。ばい煙の施設と汚水の施設をどちらも持つ工場のうち、
- 排出ガス量が4万m³(温度0度・1気圧に換算した1時間あたりの量)以上、かつ
- 排出水量が1万m³(1日あたりの平均的な量)以上
であることが要件です(主務省令で定める要件に該当して処理を確実に行える場合は除かれます)。
自分で作った例で判定してみましょう。
「以上」「以下」は、その数字を含みます。20人ちょうど、4万ちょうども条件に入る点を落とさないようにします。
兼任できるのは管理者だけ
同じ人を複数の工場の責任者にできるかも、区別して問われます。
管理者は、2つ以上の工場について同じ人を選任してはいけません。ただし、工場相互間の距離や指揮命令系統などの基準を満たし、職務の遂行に特に支障がないときは、例外が認められます(施行規則5条2号)。例外になるのは次のようなケースです。
- 1つの特定事業者が設置する複数の工場で、同じ人を選任する場合
- 親会社・子会社などが設置する複数の工場で、同じ人を選任する場合
- 事業協同組合などが資格者に指導を行わせ、組合員(従業員50人以下)が選任する場合
- 同一業種の中小企業者が共同で資格者に業務を行わせ、その中小企業者(従業員50人以下)が選任する場合
一方、主任管理者は、2つ以上の工場について同じ人を選任してはならないとされるだけで、例外のただし書はありません(施行規則8条2号)。兼任の例外があるのは管理者だけと覚えます。
職務の義務、解任命令、罰則
9条は、統括者・管理者・主任管理者・代理者に、職務を誠実に行う義務を課しています。さらに、工場の従業員は、これらの人が職務上必要と認めてする指示に従わなければなりません。
違反があったときの流れは次のとおりです。
- 統括者や管理者などが、この法律や、大気・水質・騒音・振動・ダイオキシン類に関する個別の法律(および命令)の規定に違反する
- 都道府県知事が、特定事業者に対して解任を命ずる(10条)
- 解任された人は、解任の日から2年を経過するまで、統括者・管理者・主任管理者・代理者のいずれにもなれない(7条2項)
解任を命じられる相手は本人ではなく、特定事業者です。また、都道府県知事は、必要な範囲で特定事業者に職務の実施状況の報告を求めたり、職員に特定工場へ立ち入って書類を検査させたりできます(11条1項)。
罰則は罰金だけです。
18条により、違反した行為者のほか、その法人または人にも同じ刑が科されます。選任を怠る違反のほうが、届出を怠る違反より重い、という大小関係も覚えやすい整理です。
試験での覚え方と数字のまとめ
数字が多いので、次の表を「何の数字か」から言えるようにしておくと整理しやすくなります。
覚えるときは、次の3点を意識します。
- 誰が主語か:選任・届出をするのは特定事業者、命令を出すのは都道府県知事
- 数え始めがいつか:選任は「事由の発生」、届出は「選任の日」
- 例外があるのはどこか:統括者の免除は20人以下、兼任の例外は管理者のみ
条文の細部は改正されることがあります。出題は受験年度の4月1日現在施行の法令が基準になるため、受験前にはe-Gov法令検索で最新の条文を確認してください。
学習の進め方
公害防止組織法は、公害総論の中でも暗記の分量が少なく、整理すれば得点しやすい分野です。まず4つの立場の違いを表で言えるようにし、次に期限と数字、最後に罰則を覚える順番がおすすめです。
公害防止管理者講座の授業「公害防止組織法」では、本記事と同じ流れで選任・届出・罰則を扱い、わからない点はAI講師のトーレスにその場で質問できます。区分ごとの違いや科目合格の仕組みは大気と水質、1種〜4種の違いも参考にしてください。
よくある質問
Q. 公害防止統括者にも国家試験の資格は必要ですか。
必要ありません。統括者は、その工場で事業の実施を統括管理する者を充てます(3条2項)。国家試験などの資格が必要なのは、管理者・主任管理者とそれぞれの代理者です(7条)。
Q. 管理者の選任期限は30日ですか、60日ですか。
選任は、選任すべき事由が発生した日から60日以内です(施行規則5条1号)。その後、選任した日から30日以内に都道府県知事へ届け出ます(3条3項の準用)。
Q. 従業員が20人の会社は、統括者を置かなくてよいのですか。
常時使用する従業員の数が20人以下であれば、置かなくてよいとされています(施行令6条)。ただし、管理者などの選任義務は別に判断されます。
Q. 解任された人は、いつからまた選任されますか。
解任の日から2年を経過するまでは、統括者・管理者・主任管理者・代理者のいずれにもなれません(7条2項)。2年を過ぎれば、再び選任される資格を持てます。
まとめ
公害防止組織法は、特定工場に統括者・主任管理者・管理者・代理者を置かせる法律です。選任の期限は統括者30日・管理者と主任管理者60日、届出はすべて選任の日から30日以内に都道府県知事へ。統括者が不要なのは従業員20人以下、主任管理者が要るのは排出ガス量4万かつ排出水量1万以上。兼任の例外があるのは管理者だけで、解任命令の相手は特定事業者です。数え始めと主語を意識して、表で繰り返し確認しましょう。