光化学オキシダントの環境基準は、令和8年(2026年)4月1日から新しくなりました。結論から言うと、旧基準の「1時間値が0.06ppm以下」という1つの条件が、新基準では「8時間値が0.07ppm以下」と「日最高8時間値の1年平均値が0.04ppm以下」の2つの条件を同時に満たすことへ変わっています。この記事では、新旧の違い、8時間値の出し方、測定方法を整理し、自分で作った例題で「基準を満たすか」の判定を練習します。公害防止管理者試験の全体像は公害防止管理者試験とは?にまとめています。
光化学オキシダントの環境基準は、何がどう変わったのか
環境省の「光化学オキシダント関連情報」によると、環境省は令和8年1月30日に、光化学オキシダントに係る環境基準の見直しを行いました(「大気の汚染に係る環境基準について」の告示改正)。新しい環境基準は令和8年4月1日から施行されています。
新旧の違いを表にします。旧基準と新基準の内容は、宮城県の案内ページと、環境省の報道発表(中央環境審議会の第一次答申)の別表で確かめました。
| 項目 | 旧基準(令和8年3月31日まで) | 新基準(令和8年4月1日から) |
|---|---|---|
| 条件の数 | 1つ | 2つ(同時に満たす) |
| 短期の条件 | 1時間値が0.06ppm以下 | 8時間値が0.07ppm以下 |
| 長期の条件 | なし | 日最高8時間値の1年平均値が0.04ppm以下 |
| 数値の基準になる物質 | (案内ページに記載なし) | オゾンとして |
| 測定方法 | (この記事では扱いません) | 紫外線吸収法、またはエチレンを用いる化学発光法 |
新基準の核心は「時間の単位が1時間値から8時間値へ」「長期の条件が新設」の2点です。数字は0.07と0.04。どちらがどちらの条件かを取り違えないことが、いちばん大事です。
ここでいう「8時間値」と「日最高8時間値」は、似ているのに別のものです。次の章で、中身を順番に確認します。
8時間値と日最高8時間値と1年平均値
宮城県の案内ページによると、8時間値とは「連続する8時間の濃度の平均値」で、1時間ごとに、その時刻から遡った8時間の平均を計算する「移動平均」の手法を使います。たとえば16時の8時間値は、9時から16時までの8つの1時間値の平均です。1時間進めれば17時の8時間値になり、毎時刻、同じように出していきます。
3つの言葉を並べると、次のようになります。
| 言葉 | 意味 | 使い道 |
|---|---|---|
| 1時間値 | 1時間ごとの測定値 | 8時間値を作る材料(注意報の発令基準にも使う) |
| 8時間値 | その時刻から遡った8時間の1時間値の平均 | 短期の条件(0.07ppm以下)の判定 |
| 日最高8時間値 | その日に出した8時間値のうち最大のもの | 長期の条件の材料 |
| 日最高8時間値の1年平均値 | 毎日の日最高8時間値を1年分平均したもの | 長期の条件(0.04ppm以下)の判定 |
覚え方は「材料→移動平均→その日の最大→1年で平均」の順です。1日の平均値を1年分平均するのではなく、その日の最大を1年分平均するところが、つまずきやすい点です。
例題で判定する:日Cと日Dの8時間値
ここからは、この記事のために作った例題です(実際の測定データではありません)。ある測定局の、日Cと日Dの9時から18時までの1時間値(単位ppm)を次のとおりとします。表にない時刻の1時間値は、どれも0.030とします。
| 時刻 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日C | 0.045 | 0.055 | 0.066 | 0.078 | 0.086 | 0.092 | 0.088 | 0.074 | 0.062 | 0.050 |
| 日D | 0.040 | 0.050 | 0.060 | 0.072 | 0.080 | 0.088 | 0.068 | 0.056 | 0.046 | 0.040 |
どちらの日も、午後に1時間値が0.07を超えています。旧基準(1時間値が0.06ppm以下)なら、どちらの日も基準を超えた時間があったことになります。新基準では8時間値で見ます。
日Cで、8時間値がいちばん大きくなる時刻を探します。昼から夕方にかけて高い値が続くので、15時〜18時あたりを順に計算します。
| 時刻 | 対象の時間帯 | 8時間分の合計 | 8時間値(合計÷8) |
|---|---|---|---|
| 16時 | 9〜16時 | 0.584 | 約0.073 |
| 17時 | 10〜17時 | 0.601 | 約0.075 |
| 18時 | 11〜18時 | 0.596 | 約0.0745 |
最大は17時の約0.075で、これが日Cの日最高8時間値です。0.075は0.07を超えるので、日Cは短期の条件を満たしません。
日Dも同じ手順です。
| 時刻 | 対象の時間帯 | 8時間分の合計 | 8時間値(合計÷8) |
|---|---|---|---|
| 16時 | 9〜16時 | 0.514 | 約0.0643 |
| 17時 | 10〜17時 | 0.520 | 0.065 |
| 18時 | 11〜18時 | 0.510 | 約0.0638 |
日Dの日最高8時間値は17時の0.065で、0.07以下です。日Dは、1時間値が0.088まで上がったのに、8時間値で見ると短期の条件を満たします。
1時間値が0.07を超えたことと、8時間値が0.07を超えたことは別です。新基準が比べるのは、平均をとった8時間値です。1時間値の最大だけを見て判定しないようにしましょう。
検算のしかた
- 8時間値は8つの1時間値の平均なので、その8つの最小値以上、最大値以下に入る(日Cの17時なら、0.050〜0.092の間にある約0.075は妥当)
- 逆算:0.075 × 8 = 0.600 で、17時の合計に戻る
- 表にない時刻は0.030と低いので、8時間値が最大になる時間帯は、高い値が続く午後に決まる
長期の条件:日最高8時間値の1年平均値
長期の条件は、毎日の日最高8時間値を1年分足して日数で割り、0.04ppm以下かどうかを見ます。判定は単純な割り算です。
たとえば、1年365日の日最高8時間値の合計が14.6なら、14.6 ÷ 365 = 0.04です。0.04以下なので、長期の条件を満たします。合計が15.33なら、15.33 ÷ 365 ≒ 0.042で、0.04を超えます(これらも自作の数値です)。検算は 0.04 × 365 = 14.6 で合計に戻ります。
新基準は、短期と長期の両方を同時に満たすことが求められます。環境省の報道発表によると、答申では、短期曝露は健康影響評価から1時間値0.12ppmと8時間値0.07ppmの2つが導かれたものの、常時監視のデータで検討すると8時間値を達成すれば1時間値も満たせることから、8時間値のみとするのが適当とされました。長期曝露は、日最高8時間値の年平均値0.04ppmが候補となり、植物への影響についてもこの値で保護的になると結論づけられています。
測定方法と、よくある入れ替え
測定方法は、環境省の報道発表(答申の別表)では「紫外線吸収法又はエチレンを用いる化学発光法」です。化学発光法で使う物質を、オゾンと取り違えないようにしましょう。
また、光化学オキシダントの定義(備考)は、オゾン、パーオキシアセチルナイトレートその他の光化学反応により生成される酸化性物質で、中性ヨウ化カリウム溶液からヨウ素を遊離するものに限り、二酸化窒素を除く、とされています。二酸化窒素は含みません。
間違えやすい点を表にまとめます。
| 正しい | よくある誤り |
|---|---|
| 短期は8時間値が0.07ppm以下 | 0.07と0.04を入れ替える |
| 長期は日最高8時間値の1年平均値が0.04ppm以下 | 1日平均値の1年平均値とする |
| 条件は2つを同時に満たす | どちらか一方でよいとする |
| 測定はエチレンを用いる化学発光法 | オゾンを用いる化学発光法とする |
| 定義から二酸化窒素は除く | 二酸化窒素を含むとする |
| 注意報などの発令基準は1時間値0.12ppm以上のまま | 環境基準が変わったので発令基準も変わったとする |
宮城県の案内ページによると、注意報等の発令基準(1時間値0.12ppm以上)に変更はありません。環境基準は「維持されることが望ましい基準」(環境基本法第16条第1項に基づく行政上の目標)、注意報は高濃度の時に出す注意喚起、と役割が違います。
試験ではどこで関わるか
産業環境管理協会の2026(令和8)年度の受験案内では、大気概論の試験科目の範囲に「大気汚染防止対策のための法規制」「大気汚染の現状」「大気汚染の発生機構」「大気汚染による影響」などが含まれます。大気概論は10問で、大気関係の第1種〜第4種、特定粉じん関係、一般粉じん関係で受ける科目です(水質関係の区分では受けません。公害防止主任管理者は大気・水質概論の中で大気概論の範囲を受けます)。光化学オキシダントの環境基準は、この大気概論の範囲に関わる論点と考えられます(科目のどこで出るかを受験案内が個別に定めているわけではありません)。
同じ受験案内には、試験問題の解答にあたって適用する関係法令は、令和8年4月1日時点で施行のものとする、と書かれています。新しい環境基準の施行日は同じ令和8年4月1日です。翌年度以降の試験では、その年の受験案内で適用日を必ず確認してください。区分や科目の組み合わせは大気・水質1種〜4種の違いも参考になります。
講座で光化学オキシダントを学ぶには
公害防止管理者講座では、大気概論の授業の中で、光化学オキシダントの新しい環境基準を、条件・定義・測定方法の確認から、8時間値の計算の練習まで扱っています。講座ページで授業の構成を確認できます。
まとめ
- 光化学オキシダントの環境基準は令和8年4月1日から、オゾンとして「8時間値が0.07ppm以下」かつ「日最高8時間値の1年平均値が0.04ppm以下」。
- 旧基準は「1時間値が0.06ppm以下」の1条件だった。
- 8時間値は、その時刻から遡った8時間の1時間値の平均。その日の最大が日最高8時間値。
- 判定は材料→移動平均→日最大→1年平均の順。1時間値の最大だけで判定しない。
- 注意報などの発令基準(1時間値0.12ppm以上)は変わっていない。
基準値や適用日は、必ず環境省や産業環境管理協会の最新の案内で確認してください(この記事は2026年10月21日時点で確認した内容に基づきます)。
よくある質問
Q. 新しい基準はいつから適用されますか?
環境省の案内では、令和8年1月30日に告示が改正され、令和8年4月1日から施行されています。
Q. 8時間値は、1日に何回出しますか?
1時間ずつずらして毎時刻出す移動平均です。その日の8時間値のうち最大のものが日最高8時間値になります。
Q. 光化学スモッグの注意報の基準も変わりましたか?
宮城県の案内によると、注意報等の発令基準(1時間値0.12ppm以上)に変更はありません。

