旅館やホテルの宿泊料金の計算は、国内旅行実務で「順番を守れば確実に点が取れる」分野です。ところが、サービス料と消費税と入湯税をどの順に足すかを取り違えて、あと一歩で間違える人が少なくありません。この記事では、観光庁のモデル宿泊約款の別表第1にそって、総額の出し方を例題で整理します。
約款の内容は、観光庁が公表しているモデル宿泊約款(令和5年12月13日最終改正)を2026年11月3日に確認したものです。税率や入湯税の額は変わることがあります。試験では出題年度の基準で計算するので、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
宿泊料金の総額は何でできている?
モデル宿泊約款の12条1項は、宿泊客が支払う宿泊料金等の内訳を別表第1に掲げるとしています。別表第1は、総額を次の3つの部分に分けています。
サービス料の率は、約款の別表では空欄です。つまり、ホテルや旅館が自分で決める数字で、試験の問題文には必ず与えられます。
別表第1にあるのは「消費税」と「入湯税」の2つです。宿泊税は別表第1に欄がありません。宿泊税を導入している自治体では別にかかることがあり、額や扱いは各自治体の条例によります。試験では、問題文に書かれた金額をそのまま使えば足ります。
総額は4段で出す — 計算例1
友人3人で、温泉旅館に1泊2食付きで泊まります。1人の基本宿泊料は14,000円、サービス料は10%、この町の入湯税は1人150円とします。
順番のコツは、**「宿の料金を全部足してから消費税を掛け、税金は最後」**です。
消費税は入湯税に掛けない
いちばん間違えやすいのが、入湯税を消費税の土台に入れてしまうことです。先ほどの例で比べてみます。
差は45円と小さいのですが、選択肢が近い数字で並ぶ試験では、この差で正誤が分かれます。
なぜ入湯税に消費税を掛けないのでしょうか。入湯税は、温泉に入る人(利用者)が納める税金で、宿は預かって市町村へ納める立場です。国税庁は、入湯税のように利用者が納税義務者となる税金について、その税額を請求書や領収証で明確に区分している場合は、消費税の課税標準に含まれないとしています(タックスアンサー No.6313)。一方、区分していなければ課税標準に含まれます。別表第1が「イ 消費税」「ロ 入湯税」と別の行に分けているのは、この区分の考え方に沿ったものです。
消費税率は標準税率10%です(国税庁タックスアンサー No.6351)。軽減税率の8%は飲食料品などに適用されるもので、宿泊料金の計算問題は10%で出るのが基本です。
入湯税の額は誰が決める?
入湯税は、鉱泉浴場がある市町村が課す税金です(地方税法701条)。税率は「入湯客一人一日について、百五十円を標準とする」と定められています(同法701条の2第1項)。標準なので、市町村が条例で別の額を定めることもあります。だから問題文では「この町の入湯税は1人150円」のように金額が与えられます。
追加飲食があるときの計算 — 計算例2
別表第1の③④は、夕食時の飲み物など、基本宿泊料に含まれない飲食の欄です。この追加飲食にもサービス料が掛かります。
2人で泊まります。基本宿泊料は1人12,000円、追加で飲んだお酒が6,000円、サービス料は10%、入湯税は1人150円です。
サービス料は、基本宿泊料と追加飲食の合計30,000円に10%を掛けた3,000円と同じです。別々に出しても、まとめて出しても同じ結果になります。
子供料金は「小学生以下」で率は3段階
別表第1の備考2は、子供料金を次のように定めています。
適用されるのは小学生以下です。中学生からは大人と同じ料金になります。
計算例3 — 子供の分も基本宿泊料の段に入れる
大人2人と小学生1人で泊まります。大人の基本宿泊料は1人16,000円、子どもには子供用の食事と寝具を出してもらいます。サービス料は10%とし、入湯税は計算から除きます。
子どもが大人に準じる食事と寝具なら、率は70%なので11,200円、寝具のみなら30%で4,800円です。子供料金の率は、サービス料や消費税を足す前の基本宿泊料に掛ける点に注意しましょう。
違約金の土台は基本宿泊料だけ
取り消したときの違約金は、別表第2が率を定めています。率の表は約款では空欄で、宿が決めます。別表第2の注は、この率が「基本宿泊料に対する違約金の比率」だと書いています。
計算例1の3人が、ある日に取り消したところ、その日の率が20%だったとします。
- 土台は基本宿泊料の42,000円だけ
- 違約金は42,000円 × 20% = 8,400円
サービス料の4,200円、消費税、入湯税は土台に入れません。総額の51,270円に20%を掛けるのは誤りです。
また、連泊の契約日数を短縮したときの違約金は、短縮した日数にかかわらず、1日分(初日)です(別表第2の注)。なお、旅行会社の取消料(標準旅行業約款)と宿の違約金は別の仕組みです。旅行会社の取消料は取消料の計算の記事で整理しています。
申込金と時間外使用の計算
宿泊料金まわりでは、ほかに2つの数字が出ます。
たとえば、1泊15,000円で5泊を予約したときの申込金の限度は、3日を超えるので3日分の45,000円です。
食事込みの料金で時間外使用を頼んだときは、室料金ではなく室料相当額(基本宿泊料の70%)が土台になります。1泊2食で基本宿泊料が30,000円なら、室料相当額は21,000円です。2時間の延長は超過3時間までに当たるので、室料相当額の21,000円の3分の1で7,000円と考えます。約款の9条2項は、室料金の割合のほかに「室料相当額の何%」と宿が定める形も用意しているため、実際の計算は問題文の指示に従います。
試験での問われ方と覚え方
- 総額は 基本宿泊料 → サービス料 → 消費税 → 入湯税 の順に出す
- 消費税の土台は、入湯税を足す前の額(サービス料にも消費税が掛かる)
- 追加飲食にもサービス料が掛かる
- 子供料金は小学生以下。70%・50%・30%を基本宿泊料に掛ける
- 違約金は基本宿泊料だけに率を掛ける
計算問題は、表を書いて段ごとに埋めると、ミスが減ります。10%の計算は、桁を一つ下げると手早く出せます。
宿泊約款の計算は、順番さえ覚えれば短時間で得点源にできる分野です。国内旅行業務取扱管理者講座では、宿泊料金の計算を1本の授業にまとめ、図と例題で説明しています。
よくある質問
Q. 消費税は入湯税にも掛かりますか。
掛かりません。入湯税は利用者が納める税金で、請求書などで区分して示している場合は消費税の課税標準に含まれません(国税庁タックスアンサー No.6313)。計算では、消費税を出してから最後に入湯税を足します。
Q. サービス料は誰が決めるのですか。
ホテルや旅館が決めます。モデル宿泊約款の別表第1ではサービス料の率が空欄で、各施設が埋める形です。試験では問題文に率が書かれます。
Q. 子供料金は何歳まで使えますか。
別表第1の備考2では「小学生以下」に適用されます。中学生からは大人料金です。
Q. 入湯税はいくらですか。
地方税法701条の2では、入湯客一人一日につき150円が標準です。実際の額は、市町村の条例で決まります。
まとめ
- 総額は基本宿泊料→サービス料→消費税→入湯税の順。消費税は入湯税を足す前の額に掛ける
- サービス料は基本宿泊料と追加飲食に掛かる。率は宿が決める
- 子供料金は小学生以下で、70%・50%・30%を基本宿泊料に掛ける
- 違約金の土台は基本宿泊料だけ。申込金の限度は3日分まで