パッケージツアーを申し込んだとき、旅行の契約が「いつ」成立したことになるのか、考えたことはあるでしょうか。結論から言うと、募集型企画旅行契約は旅行会社が承諾し、申込金を受理した時に成立します。カード決済の通信契約だけは、承諾の通知が旅行者に届いた時です。この記事では、国土交通省が告示している標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部(第5条〜第10条)をもとに、契約の成立時期、契約書面、確定書面の違いを整理します。国内旅行業務取扱管理者試験の約款の分野で、条文の言葉どおりに答える力が問われる部分です。
募集型企画旅行契約はいつ成立する?
募集型企画旅行とは、旅行会社があらかじめ旅行の目的地、日程、運送・宿泊のサービス内容、旅行代金を決めて参加者を募る旅行です(約款2条1項)。いわゆるパッケージツアーがこれにあたります。
契約の成立時期は、約款8条に次のように定められています。
通常の契約では、「承諾」と「申込金の受理」の両方がそろった時に成立します。申込書を出しただけ、申込金を払っただけ、では足りません。
通信契約は「通知を送った時」ではなく「通知が旅行者に到達した時」です。試験では、この「到達」という言葉の取り違えが狙われやすいところです。
通信契約とは?
通信契約とは、旅行会社と提携するクレジットカード会社のカード会員との間で、電話、郵便、ファクシミリ、インターネットなどの通信手段による申込みを受けて結ぶ契約です。あらかじめ旅行者が、旅行代金などをカード会員規約に従って後日決済することに承諾していて、署名なしにカードで代金を支払う方法を取るものを指します(約款2条3項)。
「ネットで申し込んでカード払い」のようなケースが典型です。このときは申込金の受理を待たず、承諾の通知が旅行者に届いた時に成立します。
電話やインターネットでの「予約」では契約は成立しない
約款6条は、電話、郵便、ファクシミリ、インターネットなどでの予約を受け付けると定めています。ただし、予約の時点では契約は成立していません。
予約の流れを順に見ると、次のとおりです。
- 旅行者が電話などで予約をする
- 旅行会社が予約を承諾する旨を通知する
- 旅行者が、旅行会社の定める期間内に、申込書と申込金を提出する(通信契約なら会員番号等を通知する)
- 旅行会社が契約の締結を承諾し、申込金を受理した時に契約が成立する
予約の時点で決まるのは、契約を結ぶ順位です。申込書と申込金の提出があったとき、または会員番号等の通知があったときは、締結の順位は予約の受付の順位によります(6条2項)。期間内に申込金の提出も会員番号等の通知もなかったときは、旅行会社は予約がなかったものとして扱います(6条3項)。
契約を断られることもある(7条)
旅行会社は、約款7条に掲げる場合には契約の締結に応じないことがあります。たとえば次のような場合です。
- 旅行会社があらかじめ示した、年齢・資格・技能などの参加条件を満たしていないとき
- 応募した旅行者の数が募集予定数に達したとき
- 通信契約で、カードが無効などで決済できないとき
- 反社会的勢力であると認められるときなど
契約は、旅行会社の「承諾」があって初めて成立します。申込みをしても、必ず契約が結べるわけではない、という点をつなげて覚えておきましょう。
契約書面はいつ、何を渡す?
契約が成立すると、旅行会社は成立後速やかに、旅行者に契約書面を交付します(約款9条1項)。契約書面に記載する事項は次の4つです。
旅行者から求められたときだけ渡す書面ではありません。契約が成立したら、旅行会社のほうから渡します。
手配・旅程管理の範囲は契約書面で決まる
9条2項は、旅行会社が手配し、旅程を管理する義務を負うサービスの範囲は、契約書面に記載するところによると定めています。
たとえば、契約書面に「新幹線で京都へ行き、旅館に1泊、夕食付き」と書いてあれば、旅行会社が手配し旅程を管理するのはそのサービスです。書面に書かれていない、旅行者が自分で予約した夜の食事などは、旅行会社の義務の範囲に入りません。旅程保証や取消料の場面でも、「契約書面に記載した」内容が基準になります。たとえば、旅程保証の変更補償金の対象となる変更も、契約書面に記載した内容と比べて判断します。詳しくは旅程保証の記事を読むと、つながりがよく分かります。
確定書面は「名前を書けなかったとき」だけ
契約書面を渡す時点で、確定した旅行日程や、運送機関・宿泊機関の名称を書けないことがあります。その場合の書面が確定書面です(約款10条)。
流れは次のとおりです。
- 契約書面に、利用予定の宿泊機関と、表示上重要な運送機関の名称を限定して列挙する(例: 「宿泊は、A旅館、Bホテル、C荘のいずれか」)
- 契約書面を渡したあと、契約書面に定めた日までに、確定状況を書いた確定書面を交付する
確定書面は、すべてのツアーで必要になる書面ではありません。契約書面だけで名称を書ききれたツアーには要りません。
確定書面を交付する期限
交付の期限は、旅行開始日の前日までの、契約書面に定めた日です。ただし、申込みが旅行開始日の直前だったときは、期限が旅行開始日までに延びます。
条文では、「旅行開始日の前日から起算してさかのぼって七日目に当たる日以降」に申込みがあった場合は、旅行開始日までと書かれています。出発が10月20日のツアーで数えてみましょう。
数え方は、旅行開始日の前日を1日目とします。取消料の日数の数え方と似ているので、混同しないようにしましょう。取消料の日数の数え方は取消料の記事で整理しています。
確定書面の効果と、交付されなかったとき
確定書面を交付した場合、旅行会社が手配し旅程を管理する義務を負うサービスの範囲は、確定書面に記載するところに特定されます(10条3項)。契約書面には「A旅館、Bホテル、C荘のいずれか」としか書かれていなかったものが、確定書面で「Bホテル」と決まれば、Bホテルが義務の範囲です。
手配状況を知りたい旅行者から問い合わせがあったときは、確定書面の交付前でも、旅行会社は迅速かつ適切に回答します(10条2項)。
また、旅行会社が期日までに確定書面を交付しなかったときは、旅行者は旅行開始前に、取消料を支払うことなく契約を解除できます(16条2項4号)。
契約書面と確定書面の違いを表で整理
試験での問われ方と覚え方
この分野は、次のポイントを押さえると整理できます。
- 成立の時期は、通常は「承諾+申込金の受理」、通信契約は「承諾の通知の到達」
- 電話などの予約だけでは成立しない(予約で決まるのは締結の順位)
- 契約書面は契約が成立してから交付する(申込時ではない)
- 手配・旅程管理の範囲は契約書面の記載(確定書面があれば確定書面)
- 確定書面は名称を書けなかったときだけ。期限は旅行開始日の前日まで、直前の申込みは旅行開始日まで
受注型企画旅行契約の部にも、成立時期・契約書面・確定書面について、似た構造の条文があります。ただし、条番号や言葉づかいが募集型とは少し違います(たとえば、契約の成立で受理する申込金の条文は、募集型が5条1項、受注型が6条1項です)。試験の問題文が、募集型と受注型のどちらを前提にしているかを最初に確かめましょう。
出題の基準は、試験年度の6月1日現在の法令・約款です。標準旅行業約款は、2026年3月9日の改正が同年4月1日から適用されています(国土交通省告示の最終改正)。ここで紹介した条文の内容は、この版で確認したものです。受験する年度の約款は、観光庁のサイトで確かめてください。
条文の言葉を正確に覚えるには、授業で図を見ながら流れをつかんでから、自分で例を作って確かめる方法が効果的です。国内旅行業務取扱管理者講座では、契約の成立から確定書面までを一つの授業にまとめて、図と例で説明しています。
よくある質問
Q. 電話で予約をした時点で、契約は成立しますか。
いいえ。予約の時点では契約は成立していません(約款6条1項)。旅行会社が承諾の旨を通知したあと、期間内に申込書と申込金を出し(通信契約なら会員番号等を通知し)、旅行会社が承諾して初めて成立します。
Q. インターネットでカード払いの契約は、いつ成立しますか。
通信契約にあたり、旅行会社が承諾する旨の通知が旅行者に到達した時に成立します(約款8条2項)。通知を送った時ではありません。
Q. 契約書面と確定書面は、どちらもすべてのツアーで渡されますか。
契約書面は、契約が成立したらすべての契約で交付されます。確定書面は、契約書面に宿や乗り物の名称を確定して書けなかった場合だけです。
Q. 確定書面が期限までに届かなかったら、どうなりますか。
旅行者は旅行開始前に、取消料を支払うことなく契約を解除できます(約款16条2項4号)。
まとめ
- 募集型企画旅行契約は、旅行会社の承諾+申込金の受理で成立。通信契約は承諾の通知が旅行者に到達した時
- 電話などの予約だけでは成立せず、予約で決まるのは契約を結ぶ順位
- 契約書面は成立後速やかに交付。旅行日程・サービス内容・旅行条件・旅行会社の責任を書き、手配・旅程管理の範囲を決める
- 確定書面は宿や乗り物の名称を書けなかったときだけ。直前の申込み(前日から数えて7日目以降)は旅行開始日までに交付