団体旅行で貸し切るバスの運賃は、どうやって決まるのでしょうか。結論から言うと、時間制運賃とキロ制運賃を足した額です。時間には点呼点検の2時間を足し、距離には回送の分も入れ、それぞれ決まった端数処理をしてから単価を掛けます。この記事では、国土交通省の「標準適用方法」にそって、計算の手順と間違えやすい点を例題つきで整理します。国内旅行業務取扱管理者試験では、運送機関の料金の計算は国内旅行実務の中心的な内容です。貸切バスもその一つとして押さえておきましょう。
貸切バスの運賃はどう計算する? 基本は時間制+キロ制
貸切バスの運賃の種類は、時間・キロ併用制運賃です。次の2つを別々に計算して合算します。
| 運賃 | 計算の考え方 |
|---|---|
| 時間制運賃 | (点呼点検時間の2時間+走行時間)× 1時間あたりの運賃額 |
| キロ制運賃 | 走行距離 × 1キロあたりの運賃額 |
ここでの用語を整理します。
- 点呼点検時間: 出庫の前と帰庫の後に、運転者の確認と車両の点検をする時間。1時間ずつ、合計2時間とされています
- 走行時間: 出庫から帰庫までの拘束時間。回送時間を含みます
- 走行距離: 出庫から帰庫までの距離。回送距離を含みます
- 出庫・帰庫: バスがバス会社の営業所を出ること・戻ること
- 回送: お客様を乗せずに走ること。営業所から集合場所まで、解散場所から営業所までなどです
つまり、団体を乗せている時間と距離だけではなく、営業所を出てから戻るまで全部が対象です。ここを見落とすのが、いちばん多い間違いです。
なお、1時間あたり・1キロあたりの運賃額(単価)は、地方運輸局長が地域ごとに公示する基準額をもとに、バス会社が届け出た額です。運賃は車種(大型・中型・小型)ごとに計算した、上限額と下限額の範囲内とされています。国土交通省は令和7年9月26日に新しい基準額を公示しており、実際の単価は運輸局とバス会社ごとに違います。この記事の例題の金額は、計算の手順を見やすくするための仮の数字です。実際の公示額ではありません。
試験で問われるのは「時間」と「距離」の出し方です。単価は問題文に与えられます。掛ける前の時間・距離を正しく出せるかが勝負になります。
時間制運賃の時間はどう出す? 3つのルール
時間制運賃の「時間」は、次の順番で出します。
- 出庫から帰庫までの走行時間を出す(回送を含む)
- 端数を処理する(30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げ)
- 走行時間が3時間未満なら3時間にする
- 点呼点検時間の2時間を足す
端数は「30分」が分かれ目
走行時間の端数は、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げます。9時間29分なら9時間、9時間30分なら10時間です。
走行時間は最低3時間。点呼点検は別に足す
走行時間が3時間に満たないときは、3時間として計算します。ただし、これは走行時間だけの最低です。点呼点検の2時間は、そのあとで足します。たとえば走行時間が2時間20分なら、3時間にして、点呼点検の2時間を足し、時間制の時間は5時間になります。「点呼点検の2時間も3時間に含まれる」と考えるのは誤りです。
宿泊を伴うときは、点呼点検が計4回
2日以上にわたって途中で宿泊する運送では、宿泊場所に着いた後と、宿泊場所を出発する前にも、1時間ずつ点呼点検の時間を数えます。
- 出庫の前に1時間
- 1日目の宿泊場所に着いてから1時間
- 2日目に宿泊場所を出る前に1時間
- 帰庫したあとに1時間
合計で4回、4時間です。国土交通省の説明会資料にある2泊3日の事例では、初日と最終日がそれぞれ点呼点検2回分、運行のない2日目は0時間として計算されています。運行しない日の分は数えません。
フェリーに載せるときは、航送時間の上限が8時間
行程の途中でバスごとフェリーに乗せることを航送といいます。乗船してから下船するまでの航送時間は、8時間を上限として計算します。たとえば航送が10時間でも、8時間までしか数えません。なお、ガイド料・有料道路の料金・航送料・駐車料などは運賃とは別に、実費を旅客が負担します。
キロ制運賃の距離はどう出す?
キロ制運賃の距離も、出庫から帰庫までの全距離で、回送を含みます。そのうえで、10キロ未満は10キロに切り上げます。172キロなら180キロ、ちょうど180キロならそのまま180キロです。
切り上げは、回送を含む全部を足し終えてから行います。先に区間ごとに切り上げると、答えがずれることがあります。
時間と距離の端数処理を比べる
| 時間 | 距離 | |
|---|---|---|
| 切り上げ・切り捨て | 30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げ | 10キロ未満は10キロに切り上げ(切り捨てなし) |
| 最低の扱い | 走行時間が3時間未満なら3時間 | 最低の定めなし |
| 点呼点検 | 2時間を別に足す(宿泊時は計4時間) | なし |
| 回送 | 含む | 含む |
時間は「切り捨てもある」、距離は「切り上げのみ」という違いが覚えどころです。
例題で確かめる(単価は説明用の仮の数字)
次の仮の単価で計算します。1時間あたり7,000円、1キロあたり150円(税抜)とします。
例題1 日帰り
出庫7:30、帰庫17:10。営業所から集合場所まで8キロ、団体を乗せて156キロ、解散場所から営業所まで8キロ走ります。
| 手順 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 1 | 出庫から帰庫まで(回送を含む) | 9時間40分 |
| 2 | 40分は30分以上なので切り上げる | 10時間 |
| 3 | 点呼点検2時間を足す | 12時間 |
| 4 | 距離 8+156+8 | 172キロ → 180キロ |
| 5 | 時間制 12時間 × 7,000円 | 84,000円 |
| 6 | キロ制 180キロ × 150円 | 27,000円 |
運賃は84,000+27,000=111,000円(税抜)です。
例題2 近距離の送迎
出庫9:30、帰庫11:50。回送5キロ、団体を乗せて22キロ、回送5キロです。
| 手順 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 1 | 走行時間 | 2時間20分 |
| 2 | 3時間未満なので3時間にする | 3時間 |
| 3 | 点呼点検2時間を足す | 5時間 |
| 4 | 距離 5+22+5 | 32キロ → 40キロ |
運賃は5時間 × 7,000円+40キロ × 150円=35,000+6,000=41,000円(税抜)です。
例題3 1泊2日
1日目は出庫8:00、宿泊場所着15:00。2日目は宿泊場所発9:20、帰庫17:00です。1日目の距離は回送6キロを含めて174キロ、2日目は回送6キロを含めて197キロです。
| 手順 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 1 | 走行時間 1日目7時間+2日目7時間40分 | 14時間40分 |
| 2 | 40分は30分以上なので切り上げる | 15時間 |
| 3 | 点呼点検を4回(4時間)足す | 19時間 |
| 4 | 距離 174+197 | 371キロ → 380キロ |
運賃は19時間 × 7,000円+380キロ × 150円=133,000+57,000=190,000円(税抜)です。宿泊している夜の時間は、運賃の計算に入りません。
運賃のほかにかかるお金とその扱い
運賃のほかに、料金や割引の決まりもあります。主なものを表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 深夜早朝運行料金 | 22時から翌朝5時までの間に、点呼点検時間や走行時間(回送を含む)が含まれたとき、その時間分の1時間あたりの運賃に2割以内の割増 |
| 特殊車両割増料金 | 標準的な装備を超える特殊な設備の車両などで、運賃の5割以内の割増ができる |
| 交替運転者配置料金 | 法令で交替運転者の配置が義務づけられる場合や、運送の申込者と合意した場合に適用 |
| 運賃の割引 | 障害者福祉法などの適用を受ける者の団体は3割引、学校(大学・高等専門学校を除く)に通う人の団体は2割引。いずれも下限額を限度とし、複数に当てはまる場合は高いほうの率だけを適用 |
| 消費税 | 運賃と料金の合計に消費税を加えた総額を旅客から受け取る |
深夜早朝運行料金で数える時間は、点呼点検の時間も含めて考えます。出庫6:00、帰庫22:40の運行なら、22時以降に走った40分と、帰庫後の点呼点検(22:40〜23:40)の1時間、合わせて1時間40分が22時〜翌朝5時の時間帯にかかります。走行時間だけを見ると見落とします。
試験での出題と、授業での学び方
運賃の計算問題では、次の点を順に確認すると取りこぼしを減らせます。
- 出庫・帰庫の時刻から走行時間を出したか(営業所を起点にしているか)
- 回送の距離・時間を入れ忘れていないか
- 宿泊があれば点呼点検を4回数えたか
- 走行時間の3時間未満・フェリー航送の8時間上限に当てはまらないか
- 時間は30分、距離は10キロの端数処理を、足し終えてからしたか
国内旅行業務取扱管理者試験の出題は、基準日の時点で適用される法令・約款などをもとにします。最新の基準日や出題範囲は、ANTAの受験案内でご確認ください。バスツアーを取り消したときの取消料など、ほかの運送・約款の論点は取消料の計算の記事で、試験全体の配点と合格基準は試験の基本の記事で整理しています。
国内旅行業務取扱管理者講座では、貸切バスの時間制運賃・キロ制運賃や、料金・割引・違約料の授業を用意しています。AI講師トーレスに、手順で迷ったところを質問することもできます。
よくある質問
Q. 貸切バスの運賃に回送の分も入りますか?
はい。走行時間も走行距離も、出庫から帰庫までが対象で、回送時間・回送距離を含みます。
Q. 走行時間が2時間なら、時間制運賃は何時間分ですか?
走行時間を3時間として計算し、点呼点検の2時間を足すので、5時間分です。
Q. 距離が200キロちょうどのとき、切り上げますか?
切り上げません。10キロ未満の端数が出たときだけ、10キロに切り上げます。
Q. 単価は全国で同じですか?
同じではありません。地方運輸局が地域ごとに基準額を公示し、バス会社が届け出た額で計算します。最新の額は、バス会社や運輸局の案内でご確認ください。
まとめ
貸切バスの運賃は、時間制運賃とキロ制運賃の合計です。時間は「点呼点検2時間+走行時間」、距離は「出庫から帰庫まで」で、どちらも回送を含みます。端数は時間が30分、距離が10キロを境にし、走行時間は最低3時間、フェリーの航送は8時間が上限です。宿泊を伴うと点呼点検は計4回になります。
運賃の額そのものは運輸局の公示額で変わりますが、この計算の手順は変わりません。手順で身につけておけば、単価が変わっても対応できます。

