国内旅行業務取扱管理者試験の約款では、「この日にキャンセルすると取消料は何%か」という計算が定番です。ところが、日数の数え方を一つ間違えるだけで、区分が一段ずれて答えが変わってしまいます。この記事では、募集型企画旅行の取消料について、標準旅行業約款の別表第一を日付つきの例題で整理します。
約款の内容は、観光庁が公表している標準旅行業約款(令和8年3月9日改正、同年4月1日適用)を2026年10月15日に確認したものです。試験では、その年度に定められた基準日時点の約款が問われます。最新の内容は観光庁の公式サイトでご確認ください。
取消料の基本 — 旅行者はいつでも解除できる
標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部16条1項は、旅行者はいつでも、別表第一に定める取消料を旅行会社に支払って契約を解除できると定めています。解除の理由は問われません。通信契約(クレジットカードで電話やインターネットから申し込む契約)の場合は、旅行者の署名がなくても、カードで取消料が支払われます。
つまり、解除すること自体は自由で、そのときに取消料が「いつ」「いくら」かかるかを決めているのが別表第一です。なお、ここで扱うのは募集型企画旅行(旅行会社があらかじめ行程と代金を決めて参加者を募るツアー)です。受注型企画旅行の別表第一は、区分の最初に企画料金に相当する金額という行があり、形が少し違います。受注型は別の記事・授業で整理するとよいでしょう。
別表第一(国内旅行)の区分イ〜ホ
国内旅行の取消料は、次の5つの区分です。率はすべて「以内」、つまり上限です。
| 区分 | 解除の時期 | 取消料の上限 |
|---|---|---|
| イ | 旅行開始日の前日から起算してさかのぼって20日目(日帰り旅行は10日目)にあたる日以降 | 旅行代金の20% |
| ロ | 同じく7日目にあたる日以降 | 旅行代金の30% |
| ハ | 旅行開始日の前日 | 旅行代金の40% |
| ニ | 旅行開始当日(ホの場合を除く) | 旅行代金の50% |
| ホ | 旅行開始後の解除、または無連絡不参加 | 旅行代金の100% |
別表第一の備考には、次の2点が書かれています。
- 取消料の金額は、契約書面に明示する
- 「旅行開始後」の意味は、特別補償規程2条3項の定める開始時点より後とする
また、貸切船舶を利用する募集型企画旅行は、この表ではなく、その船舶に係る取消料の規定によります。
表の中の「(ロからホまでに掲げる場合を除く。)」のような括弧書きは、「より後ろの区分に当たるときは、そちらを使う」という意味です。解除が遅くなるほど、より高い区分になります。
日数の数え方 — 前日が1日目
計算の中心になるルールは、旅行開始日の前日を1日目として、さかのぼって数えることです。旅行開始日そのものは数えません。
たとえば12月10日出発の旅行なら、次のようになります。
| 数え方 | 日付 |
|---|---|
| 1日目(前日) | 12月9日 |
| 7日目 | 12月3日 |
| 10日目 | 11月30日 |
| 20日目 | 11月20日 |
日付から「何日目か」を求めるときは、「出発日の日付 − 解除日の日付」で日数の差を出すと確実です。12月10日出発で11月25日に解除するなら差は15日なので、15日目になります。前日が1日目なので、差がそのまま「何日目か」と一致します。
「20日前」と言うと、1日ずれやすくなります。試験では「前日から起算してさかのぼって20日目にあたる日以降」という言い回しをそのまま、前日=1日目で数えましょう。
計算例1 — 宿泊を伴うツアーを段階ごとに解除
旅行代金5万円、12月10日出発の1泊2日のツアーを考えます。旅行会社は、契約書面に各区分の取消料率を上限どおり(20%・30%・40%・50%)で明示しているものとします。
| 解除する日 | 何日目か | 区分 | 取消料 |
|---|---|---|---|
| 11月19日 | 21日目 | 区分に当たらない | かからない |
| 11月25日 | 15日目 | イ | 5万円×20%=1万円 |
| 12月3日 | 7日目 | ロ | 5万円×30%=1万5,000円 |
| 12月9日 | 前日 | ハ | 5万円×40%=2万円 |
| 12月10日(出発前) | 当日 | ニ | 5万円×50%=2万5,000円 |
11月19日は21日目で、20日目(11月20日)より前なので、別表第一のどの区分にも当たりません。取消料はかからないのが原則です。また、区分の境目の日は、より重い方に入ります。12月3日は7日目ちょうどなので、区分イではなく区分ロです。
取消料の「率」は上限です。実際の率は旅行会社が契約書面に明示します。試験の問題では、「契約書面に○%と明示されていた」のように条件が与えられるので、その率で計算します。
計算例2 — 日帰り旅行は区分イだけが10日目から
日帰り旅行で違うのは、区分イの始まりが20日目ではなく10日目になる点だけです。区分ロ以降(7日目、前日、当日)は、宿泊を伴う場合と同じです。
旅行代金8,000円、12月10日出発の日帰りバスツアーで確かめます。
- 11月28日に解除 … 12月9日を1日目とすると12日目。日帰りの区分イは10日目(11月30日)以降なので、まだ区分に当たらず、取消料はかかりません
- 11月30日に解除 … 10日目で区分イ。契約書面に20%とあれば、8,000円×20%=1,600円です
同じ12日目でも、宿泊を伴うツアーなら20日目以降に入るため区分イになります。「宿泊を伴うか、日帰りか」は、問題文の最初に必ず確認するポイントです。
区分ホの「旅行開始後」はいつから?
区分ホは、旅行開始後の解除と、連絡をしないで参加しない場合(無連絡不参加)です。「旅行開始後」の起点は、別表第一の備考で、特別補償規程2条3項にある「サービスの提供を受けることを開始した時」とされています。この時点は、次のように決まります。
| 場合 | 開始した時 |
|---|---|
| 添乗員・旅行会社の使用人や代理人が受付を行う | その受付が完了した時 |
| 受付が行われず、最初の機関が航空機 | 乗客だけが入れる飛行場構内での手荷物の検査等が完了した時 |
| 同、船舶 | 乗船手続が完了した時 |
| 同、鉄道 | 改札が終了した時(改札がなければ列車に乗車した時) |
| 同、車両(バスなど) | 乗車した時 |
| 同、宿泊機関 | その施設に入った時 |
| 同、宿泊機関以外の施設 | その施設の利用手続が終了した時 |
集合場所に着いていても、受付が済んでいなければ「旅行開始後」ではなく、当日(区分ニ)の扱いです。
取消料がかからない解除
旅行者はいつでも解除できますが、取消料を払わずに解除できる場合も約款に決められています。16条2項は、旅行開始前に取消料を支払わずに解除できる場合として、次の5つを挙げます。
| 号 | 場合 |
|---|---|
| 1号 | 旅行会社が契約内容を変更したとき(別表第二上欄に掲げる変更など、重要なものに限る) |
| 2号 | 14条1項により旅行代金が増額されたとき |
| 3号 | 天災地変・戦乱・暴動・運送や宿泊機関のサービス提供の中止・官公署の命令などで、安全で円滑な旅行の実施が不可能か、不可能となるおそれが極めて大きいとき |
| 4号 | 10条1項の期日までに確定書面が交付されなかったとき |
| 5号 | 旅行会社の責に帰すべき事由で、契約書面の日程どおりの旅行が不可能となったとき |
どれも、原因が旅行会社の側にあるか、旅行者が左右できない出来事です。旅行者自身の病気やけがは、やむを得ない事情でもこの5つには入らないため、取消料の対象です。
旅行開始後については、3項があります。旅行者の責に帰すべき事由によらず、契約書面に書かれた旅行サービスを受けられなくなったとき(または旅行会社がその旨を告げたとき)は、取消料なしで、その部分の契約を解除できます。払戻しは4項で、旅行会社の責による場合は該当部分の金額が戻り、責によらない場合は、すでに支払った取消料や違約料などを差し引いた額が戻ります。
似ている数字との混同に注意
取消料には、他の条文の日数と混ざりやすい数字があります。
| 内容 | 数字 | 条文 |
|---|---|---|
| 旅行代金の支払期日までに払わない場合 | 期日の翌日に旅行者が解除したものとされ、取消料に相当する額の違約料を払う | 17条2項 |
| 最少催行人員に達しないための旅行会社の中止通知 | 国内は前日から数えて13日目(日帰りは3日目)にあたる日より前 | 17条3項 |
| 取消料の区分イの始まり | 国内は20日目(日帰りは10日目)にあたる日以降 | 別表第一 |
中止通知の「13日目(日帰りは3日目)」と、取消料の「20日目(日帰りは10日目)」は別の数字です。どちらも前日を1日目として数える点は共通しています。
試験での問われ方と解くコツ
取消料は、次の手順で解くとぶれません。
- 宿泊を伴うか、日帰りかを確認する
- 出発日から解除日までの日数を、前日=1日目で数える(日付の差と同じ)
- 区分イ〜ホのどれかを決める(境目の日は重い方)
- 契約書面に明示された率で、旅行代金に掛ける
- 旅行開始後や無連絡不参加なら、区分ホ
最初にやるのは、必ず日数の数え方の確認です。計算そのものは単純なので、日数のずれで落とさないことが得点につながります。
授業で練習するには
国内旅行業務取扱管理者講座では、約款の章で旅行者の解除権と取消料を扱います。日数の数え方に迷ったら、まず出発日と解除日を書き出して日付の差を出す練習をしてみてください。講座ページで、授業の一覧や学習の進め方を確認できます。
まとめ
- 取消料は、旅行開始日の前日を1日目として、さかのぼって日数を数える
- 区分イ(20日目以降)・ロ(7日目以降)・ハ(前日)・ニ(当日)・ホ(開始後・無連絡不参加)で、上限は20・30・40・50・100%
- 日帰り旅行で違うのは区分イの始まり(10日目以降)だけ
- 率は上限で、実際の率は契約書面に明示される。貸切船舶は船舶の取消料の規定による
- 取消料なしで解除できるのは、旅行会社の側の事情や不可抗力などの場合(16条2項・3項)。旅行者自身の都合は含まれない
日数の数え方と区分の判定を身につければ、取消料の問題は安定して得点できます。

