公害防止管理者の試験には、燃焼計算やBOD負荷の計算など、数字を扱う問題が出ます。ところが会場に持ち込める電卓には制限があり、普段使っている関数電卓は使えません。この記事では、使える電卓の範囲を協会の受験案内で確かめたうえで、「四則と開平(ルート)だけ」で計算問題を解く手順を、新しく作った例題で整理します。試験全体のしくみは公害防止管理者試験とは?にまとめています。
試験で使える電卓・使用できない電卓はどれか
産業環境管理協会(公害防止管理者試験センター)の「2026(令和8)年度 受験案内」の「電卓の取扱」には、次のように書かれています。
つまり、ルートのキー(√)と、パーセントのキーがあれば足ります。対数(log)や指数(べき乗)、三角関数のキーは使えません。なお、騒音・振動関係の試験では対数表が問題冊子に添付される、とも書かれています。この記事の対象である大気・水質関係の計算は、四則と開平で解ける形で出題される、という前提で準備します。
電卓の規定は年度ごとに見直される可能性があります。受験する年度の受験案内で、「電卓の取扱」を必ず確認してください。上の内容は2026(令和8)年度の受験案内(2026年11月6日確認)に基づきます。
計算問題で失点しないための3つの原則
使える機能が限られていても、手順を決めておけば計算は難しくありません。次の3つを習慣にします。
原則1:割り算は最後にまとめて押す
燃焼計算では、掛け算と割り算が長く連なります。途中で答えを紙に書き写すと、写し間違いと丸め誤差の両方が起きます。電卓は「左から順に、そのまま押し続ける」ほうが安全です。
原則2:途中で丸めない
途中の値を「だいたい0.083」のように丸めると、最後の選択肢と合わなくなることがあります。最後に1回だけ丸める、と決めておきます。五肢択一の選択肢は値が近いこともあるため、丸めの方針を最初から固定しておくことが大切です。
原則3:概算で桁を確かめる
電卓で出した数字を、有効数字1〜2桁の暗算と見比べます。桁を1つ取り違える失敗(小数点の位置、単位の千倍)は、概算で必ず気づけます。
例題1:メタンの燃焼で必要な空気量を出す
気体燃料のメタン(CH₄)1 m³N を完全に燃やす場合を考えます。反応式は CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O です。
- 理論酸素量:メタン1に対して酸素2なので、2 m³N
- 理論空気量:空気の酸素は体積の21%なので、2 ÷ 0.21 = 9.52 m³N
- 空気比1.2で燃やすときの実際の空気量:2 ÷ 0.21 × 1.2 = 11.43 m³N
電卓では「2 ÷ 0.21 × 1.2 =」と続けて押すだけです。途中の9.5238…を書き留めて丸め直す必要はありません。概算では「2を0.2で割ると10、それより少し小さい。×1.2で約11」と確かめられ、答え11.43と矛盾しません。
燃焼計算の全体の流れは、燃焼計算の基本で順を追って整理しています。
例題2:排ガスの酸素濃度から空気比を近似する
乾き排ガス中の酸素濃度が3.5%のとき、空気比はおよそ次の式で出せます。
空気比 ≒ 21 ÷(21 − O₂)
21 − 3.5 = 17.5 なので、21 ÷ 17.5 = 1.2 です。引き算を先にして、そのあと割る順番を間違えなければ、四則だけで済みます。
分母を先に計算して数値メモリに入れておく、という使い方もできます。数値メモリは使える機能として受験案内に書かれているので、同じ分母を何度も使う問題で役立ちます。
例題3:標準酸素濃度への補正(濃度換算)
排ガスの濃度を、決められた標準の酸素濃度に直す問題も出ます。測定したときの酸素濃度が4%、測定濃度が100 ppm、標準の酸素濃度を6%とすると、補正後の濃度は次の式で求めます。
補正後の濃度 = (21 − 標準の酸素濃度)÷(21 − 測定時の酸素濃度)× 測定濃度
(21 − 6)÷(21 − 4)× 100 = 15 ÷ 17 × 100 = 88.2 ppm
電卓では「15 ÷ 17 × 100 =」です。概算では「15と17はほぼ同じなので、答えは100より少し小さい」と見当がつきます。補正の向きを取り違えて100より大きい値(約113)が出たら、式の上下が逆になっているとすぐ分かります。
酸素濃度補正は「分子が標準(基準)の側、分母が測定の側」という向きを問題文の条件で確かめてから計算します。式の暗記より、答えが100より大きいか小さいかの感覚が検算になります。
例題4:べき乗は開平キーの連打で解く
大気の拡散や風速の計算では、べき乗が出ることがあります。たとえば地上の風速から高さによる風速を求める場面では、高さの比のべき乗を使います。関数電卓なら「xのy乗」キーで一発ですが、使用できないので次のように分解します。
「0.25乗はルートを2回」と覚えておけば、電卓の√キーを続けて押すだけです。1/2、1/4、1/8のようなきれいな指数は、この方法で解けます。指数がこれ以外の半端な値の場合は、開平の連打では解けません。問題文に与えられた数値があればそれを使い、手計算で無理のない形かどうかを確かめます。
例題5:水質の負荷計算は単位をそろえてから
活性汚泥法のBOD容積負荷は、1日に流入するBODの量を、曝気槽の容積で割って出します。流入水量1,000 m³/日、流入水のBODが200 mg/L、曝気槽の容積が500 m³とします。
- mg/L は g/m³ と同じ大きさなので、200 g/m³
- 1日のBOD量:200 g/m³ × 1,000 m³/日 = 200,000 g/日 = 200 kg/日
- 容積負荷:200 kg/日 ÷ 500 m³ = 0.4 kg/(m³・日)
電卓の操作は「200 × 1000 ÷ 500 ÷ 1000 =」です。最後の「÷1000」はgをkgに直す操作です。単位換算を忘れると答えが千倍ずれます。概算で「200 kg を500 m³ で割る → 1 m³ あたり半分くらい(0.4)」と確かめます。
BOD負荷の計算全体は、活性汚泥法の計算で扱っています。
本番までに準備しておくこと
電卓を決めて、練習から同じものを使う
受験案内では、貸出は行わず、持ち込める電卓は1台とされています。「√」と「%」と数値メモリのキー位置は機種によって違います。本番で慌てないよう、練習の段階から本番で使う電卓を決めて使い続けます。購入の際は、受験案内の「使用可能な電卓」の条件(機能が四則・開平・百分率などに限られること、タッチパネル式でないこと)に合うかを、機種の仕様で確かめてください。
計算の型を、科目ごとに持つ
大気特論は燃焼計算、汚水処理特論はBODの負荷や反応槽の容積、というように、出る計算の型は科目ごとに偏りがあります。型ごとに「式 → 単位 → 電卓の押す順 → 概算」を1枚にまとめておくと、本番で迷いません。
暗算できる数字を増やす
0.21、22.4、12、32、44といった、燃焼計算で何度も出る数字は、暗算で概算できるようにしておきます。概算が速くなると、電卓の打ち間違いにも早く気づけます。
公害防止管理者講座では、公害総論と大気関係・水質関係の科目の授業で、計算問題を電卓で追える形に整理しています。騒音・振動やダイオキシン類の科目は、講座では扱っていません。
よくある質問
Q. 関数電卓を持っていても、機能を使わなければ持ち込めますか。
受験案内では、関数電卓は使用禁止機器とされています。機能を使うかどうかにかかわらず、使用できない電卓は持ち込まず、使用可能な電卓を用意してください。判断に迷うときは、試験センターの案内に従います。
Q. スマートフォンの電卓アプリは使えますか。
使えません。受験案内では、携帯電話・スマートフォン・タブレットなどを使用禁止機器とし、通信機能のあるものは電波を発しない状態でも使用を認めない、とされています。
Q. 電卓の予備は持ち込めますか。
受験案内では、机の上に置ける使用可能な電卓は1台とされています。電池切れが心配なら、電池の状態を前日までに確認しておきます。
まとめ
- 使える電卓は、四則・開平・百分率などの機能だけのもの。関数電卓・通信機能付き・メモリで数式を記憶できるもの・タッチパネル式は使用できない
- 割り算は最後にまとめる、途中で丸めない、概算で桁を確かめる、の3つを習慣にする
- べき乗は開平の連打(0.25乗は2回、0.125乗は3回)で解ける
- 練習から本番で使う電卓を使い、科目ごとの計算の型を1枚にまとめておく
- 規定は年度ごとに変わりうるので、受験する年度の受験案内で確認する