管理組合に毎月納めるお金は「管理費」と「修繕積立金」の2つです。どちらも「管理のためのお金」ですが、使い道は分かれています。管理業務主任者試験では「この支出はどちらから出すのか」「修繕積立金を取り崩せるのはどんなときか」が繰り返し問われます。この記事では、国土交通省の標準管理規約(令和7年10月17日改正・単棟型)を2026年11月1日に確認した内容にそろえて、違いを整理します。
管理費と修繕積立金の違いは? 結論は「通常の管理」と「特別の管理」
区分所有者は、敷地と共用部分等の管理に要する経費にあてるため、次の2つを管理組合に納めます(標準管理規約25条1項。この2つを合わせて「管理費等」と呼びます)。
迷ったときは「日常の経費か、特別な管理か」で分けるのが基本です。ただし、規約には例外やコメントでの解釈があるので、以下で押さえます。
管理費の使い道(27条)
27条は、管理費を充てる経費として次の11項目を挙げています。
十号の「運営に要する費用」には役員活動費も入ります。25条のコメントでは、この運営費を「組合費」として管理費とは分けて集めることもできるとされています。
管理費で出してよい活動・出さない活動
コメントは、管理費の使いみちの線引きも示しています。
- 出せる: マンションとその周辺の美化・清掃、景観形成、防災・防犯活動など。管理組合の目的である建物・敷地・附属施設の管理の範囲内にある活動
- 出さない: 一部の人だけが参加するクラブ・サークル活動の経費、主として親睦を目的とする飲食の経費。参加者が直接払う形にする
- 自治会費・町内会費: 居住者が任意に加入して払うものなので、管理費とは別。管理組合は区分所有者全員の強制加入、自治会は任意加入で、性格が違う
自治会費を管理費と一緒に集める場合は、加入の強制にならないようにすること、加入しない人からは集めないこと、管理費と区分して経理することなどに気をつけます。
修繕積立金を取り崩せるのは6つの場合だけ(28条1項)
修繕積立金は、次の6つの経費に充てる場合に限って取り崩せます。
覚え方は、一〜三が「工事の費用」、四〜六が「工事以外の費用」です。コメントでは、一〜三には実際の工事費だけでなく、計画の立案、工事履歴などの調査、設計といった準備段階の費用も含まれるとされています。
五号の「修繕積立金の管理及び運用」に要する費用は、修繕積立金の取崩しの対象にしないで、管理費から支出することもできる、とコメントにあります。「必ず修繕積立金から」とは限りません。
マンション再生等のための調査費(四号)と2項
四号の「マンション再生等」は、建替え・建物の更新・建物敷地売却・建物取壊し敷地売却・取壊しの5つです。このうち「建物の更新」は、いわゆる一棟リノベーションを指すとコメントにあります。
- 合意形成のための調査費は、1項四号で取り崩せる(調査費を管理費から出す旨を規約に定めることもできる)
- 決議や全員の合意のあと、組合設立の認可などを得るまでの間も、計画・設計等の経費に充てるため2項で取り崩せる
- 取壊し以外のマンション再生等では、管理組合の消滅時に事業へ参加しない区分所有者に帰属する分を除いた金額が限度
借入れの返済と総会の決議
- 借入れ: 1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金でその償還(返済)にあてられる(3項)
- 総会の決議: 28条1項に定める特別の管理の実施、それにあてるための借入れ、修繕積立金の取崩しは、総会の決議事項です(48条十号)
区分経理と使用料(28条4項・29条)
修繕積立金は、管理費と区分して経理しなければなりません(28条4項)。次のものも、修繕積立金として積み立て、区分経理します。
仕訳の面から見たいときは、管理組合の仕訳の記事も参考にしてください。
負担額の決め方(25条2項)
管理費等の額は、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出します。専有部分の床面積の割合に応じることが一般的です。
例として、管理費の総額が月60万円のマンションで、全体の床面積の合計が3,000㎡とします。1㎡あたり200円なので、60㎡の住戸は月12,000円、75㎡の住戸は月15,000円です(数字は説明用の例です)。
- 議決権を1戸1個、または価値割合で定めていても、管理費等の負担は別に共有持分で算出してかまわない(25条コメント)
- 使用頻度は負担割合の決定に勘案しない(同コメント)
- 滞納した場合の徴収や遅延損害金は、60条で定める。時効は管理費の消滅時効の記事にまとめています
試験でひっかかりやすい支出の振り分け表
よくある誤りは次の3つです。
- 借入金の返済を管理費だけから出すとする → 修繕積立金で返済できる(28条3項)
- 1戸1議決権なら負担額も均等にするとする → 負担額は共有持分で、別でかまわない
- 分譲時の基金を管理費に入れるとする → 修繕積立金として区分経理する
授業で確認するには
管理業務主任者講座では、27条・28条の使途を、今回の振り分け表のような例で解説しています。授業ごとの確認問題で、どちらのお金から出すかを繰り返し練習できます。講座は月額 2,484円〜(年額プラン29,800円・一括払いの月あたり。月額プランは4,980円。いずれも税込)のサブスクです。わからないところはAI講師トーレスに、毎月50回まで質問できます。財産の扱いは財産の分別管理の記事も合わせてどうぞ。
よくある質問
Q. 修繕積立金で、日常の清掃費を払えますか。
清掃費は27条七号で管理費にあてる経費です。修繕積立金は28条1項の6つの場合に限って取り崩せるので、清掃費は対象に入りません。
Q. 自治会費は管理費と一緒に集めてよいですか。
一緒に集める場合もありますが、加入の強制にしないこと、希望しない人から集めないこと、管理費とは区分して経理することなどに注意が必要です。管理費等とは別のものです。
まとめ
- 管理費は通常の管理(27条の11項目)、修繕積立金は特別の管理(28条1項の6つの場合)
- 修繕積立金は管理費と区分経理。借入れの返済、修繕積立基金、一時負担金も修繕積立金の側
- 取崩しと特別の管理の実施は総会の決議事項(48条十号)
- 負担額は共有持分で決める。議決権や使用頻度とは連動させなくてよい
規約の条文は改正されることがあります。最新の内容は国土交通省のページで確認してください。