管理業務主任者試験では、管理会社が管理組合から預かるお金をどう扱うかが、毎年のように問われます。口座の種類が3つ、方法が3つ、さらに保証契約と印鑑等の例外が重なるので、頭の中で混ざりやすい分野です。この記事では、マンション管理適正化法76条と施行規則87条を、2026年10月27日に確認した e-Gov の条文にそろえて整理します。
分別管理とは? 結論は「自社の財産とも、他の組合の財産とも混ぜない」
適正化法76条は、管理会社(マンション管理業者)に対して、管理組合から委託を受けて管理する修繕積立金などを、次の2つと分けて管理するよう求めています。
分けて管理する対象は、施行規則87条1項が決めています。修繕積立金のほか、管理組合や区分所有者等から受け取った、管理の費用に充てるお金(金銭)や有価証券です。つまり、毎月の管理費も含みます。この記事では、これらをまとめて「修繕積立金等」と呼びます。
条文の構造は「76条=分けて管理せよという原則」「施行規則87条=対象と方法の細目」です。試験で細かい数字や要件が問われるのは、ほとんど87条です。
有価証券の場合は、金融機関か証券会社に、保管場所を自社や他の組合の分と明確に区分させ、どの管理組合のものか判別できる状態で管理させます(87条2項2号)。以下は、金銭の場合の話です。
3つの口座:名義の決まりが違う
87条6項が、口座を3種類に分けています。
「管理組合等」とは、管理組合、またはその管理者等のことです(87条3項1号)。名義の条件が付くのは保管口座と収納・保管口座だけ、というのがまず押さえる点です。
イ・ロ・ハの方式の違いを、お金の流れで見る
金銭の管理方法は、次の3つのうちどれかです(87条2項1号)。
覚え方は、「収納口座を通るのはイとロ、通らないのはハ」です。ロは、修繕積立金だけが収納口座を飛ばして直接保管口座に入ります。
例として、あるマンションの毎月の収入が、修繕積立金300万円、管理費用に充てる分が200万円で、その月の管理事務に使った費用が180万円だったとします(数字は説明用の架空の例です)。
- イの方式:500万円がすべて収納口座に入り、500万円から180万円を引いた320万円を、翌月末日までに保管口座へ移します
- ロの方式:300万円は最初から保管口座へ入り、200万円が収納口座へ入ります。200万円から180万円を引いた20万円を、翌月末日までに保管口座へ移します
- ハの方式:500万円がそのまま収納・保管口座で管理されます
イとロでは、管理会社が当月の管理事務の費用を、収納口座から差し引ける仕組みになっています。
保証契約が必要なのは、収納口座を使うイとロ
87条3項は、イまたはロの方法で管理する管理会社に、有効な保証契約を締結することを求めています。額は、区分所有者等から徴収される1か月分の修繕積立金等(金銭)の合計額以上です。管理会社がお金を返せなくなったときに備える仕組みだと考えると分かりやすいでしょう。
ただし、次の2つの両方に当てはまれば、保証契約は不要です。
「ハの方式は保証契約が要らない」と覚えるより、「保証契約を求める条文がイとロだけに書かれている」と覚えるほうが、条文に沿っています。ハで管理会社が印鑑等を持てる例外のときは、別の保証契約の要件が出てきます(次の見出し)。
印鑑等は原則、管理会社が持てない
87条4項は、イ・ロ・ハのどの方式でも、保管口座または収納・保管口座の印鑑等を、管理会社が保管してはならないと定めています。収納口座の印鑑等は、この項の対象に入っていません。管理会社が収納口座の印鑑等を持つ場合は、前の見出しのとおり、保証契約が必要になります。
例外は2つだけです。
- 管理組合に管理者等がいない場合で、管理者等が選任されるまでの比較的短い期間に限って保管するとき
- 管理会社自身が管理者等になっている場合で、次の5つの要件をすべて満たすとき
ここで問われやすいのは、「理事長がいるのに、頼まれたから一時的に預かる」はできない、という点です。1つめの例外は、管理者等がいない期間の話だからです。
毎月の会計報告は、翌月末日までに書面で
87条5項は、管理会社に、毎月の会計の収入と支出の状況を書面にまとめることを求めています。渡し方は、管理組合の状況によって2通りです。
備え置く期間は、その月が属する管理組合の事業年度の終了の日から2か月を経過する日までです。数字がいくつも出てくるので、「翌月末日」と「事業年度の終了から2か月」を取り違えないようにしましょう。
試験でよくある取り違え
分別管理の肢は、条文の言葉を入れ替えた誤りを作りやすい分野です。次の表を、自分で正誤を考えるときの確認に使ってください。
学習のすすめ方
分別管理は、次の順で整理すると記憶が崩れにくくなります。
- 口座を3つ描き、名義の条件が付くのはどれかを確かめる
- イ・ロ・ハごとに、お金の矢印を書く
- 矢印が収納口座を通る方式に、保証契約の印を付ける
- 印鑑等と、毎月の書面は別の項目として覚える
管理業務主任者講座では、財産の分別管理を1本の授業にまとめ、口座の流れを図で追えるようにしています。会計の考え方を先に固めたい方は、管理組合の仕訳の記事も参考にしてください。管理会社に課される書面の義務は、重要事項説明と契約成立時の書面の記事で整理しています。
よくある質問
Q. 収納口座と保管口座は何が違いますか?
収納口座は、集めたお金を一時的に預かる口座で、名義の定めはありません。保管口座は、修繕積立金などを預貯金として管理する口座で、名義は管理組合等と決まっています。
Q. ハの方式なら、管理会社は印鑑等を持てますか?
原則として持てません。印鑑等の保管禁止は、イ・ロ・ハのどの方式でも同じで、例外は管理者等がいない短い期間か、管理会社が管理者等のときの5要件をすべて満たす場合だけです。
Q. 保証契約の額はいくらですか?
イまたはロの方式で、区分所有者等から徴収される1か月分の修繕積立金等(金銭)の合計額以上です。例外の要件をすべて満たす場合は、保証契約が不要になります。
まとめ
- 76条が原則、87条が方法と要件。管理会社の固有財産とも、他の管理組合の財産とも分ける
- 収納口座を通るのはイとロで、保証契約は1か月分以上。収納口座の名義には定めがなく、保管口座と収納・保管口座は管理組合等の名義
- 保管口座等の印鑑等は原則持てない。毎月の収支は翌月末日までに書面で。管理者等がいないときは備え置いて閲覧
条文の言葉を1つずつ入れ替えて、自分で誤りの肢を作ってみると、取り違えに強くなります。制度は改正されることがあるため、最新の条文は e-Gov 法令検索でご確認ください。