マンションの管理費を何年も払わない区分所有者がいたとき、管理組合の請求権はいつまで残るのでしょうか。管理業務主任者試験では、滞納の回収と並んで「時効」の仕組みがよく出ます。この記事では、時効の期間と、時効を止める「完成猶予」「更新」を、民法の条文(2026年10月30日に e-Gov で確認)にそろえて整理します。
滞納管理費の時効は何年? 答えは5年
民法166条1項は、債権(お金を払ってもらう権利)の時効を2つ定めています。
どちらか早く来たほうで、時効が完成します。管理費は規約で支払期日が決まっていて、管理組合はそれを当然知っています。そのため、5年のほうが先に来ます。
たとえば、毎月27日が期日の管理費なら、ある月の分は、その期日の翌日から5年を数えます。ほかの月の分とは別々に進むので、古い月から順に消えていくイメージです。
「滞納がずっと続いても、請求できるのは直近5年分だけ」という見方は、何もしなかった場合の話です。管理組合が手を打てば、時効は止まります。
時効期間が過ぎても、自動では消えない
期間が過ぎても、債権が自動で消えるわけではありません。民法145条は、時効は当事者が援用しなければ、裁判所がそれによって裁判できないと定めています。援用とは、「時効の利益を受けます」と相手に伝えることです。
また、時効の利益は、あらかじめ放棄できません(146条)。「時効を主張しません」という約束を、滞納が起きる前に規約や契約に入れても、効力はありません。
完成猶予と更新はどう違う?
時効を動かす仕組みは2つあり、試験ではこの区別が問われます。
ここで大事なのは、同じ事由が、猶予だけで終わる場合も、更新まで進む場合もあることです。次の章で事由ごとに見ます。
事由ごとに、猶予か更新か
催告は6か月の猶予だけ
催告は、裁判所を使わずに「払ってください」と求めることです。民法150条1項により、催告の時から6か月を過ぎるまで時効は完成しません。
注意点は3つです。
- 効果は猶予だけで、数え直しにはならない
- 猶予の間に、もう一度催告しても、猶予は延びない(150条2項)
- 方式の決まりはないので、内容証明郵便でなくても催告になる(内容証明は、いつ催告したかの証拠を残すために使う)
たとえば、時効の完成日が令和13年4月27日で、同年2月10日に催告したなら、完成は同年8月10日まで先送りされます。この6か月の間に訴えるなど、次の手を打つのが実務の流れです。
訴えは、判決の確定で更新
裁判上の請求(訴え)や支払督促があると、手続が終わるまで時効は完成しません(147条1項)。そして、確定判決などで権利が確定すると、手続が終わった時から新たに時効が進みます(147条2項)。
このとき、新しい時効期間は10年です。民法169条1項により、判決で確定した権利は、もとの期間が10年より短くても10年になるためです。
承認は、一部の支払いでも更新
承認とは、滞納者が「払うべき管理費がある」と認めることです。民法152条1項により、承認があった時から時効は新たに進みます。
具体的には、次のような行為が承認にあたりえます。
- 滞納額の一部を支払った
- 「分割で払います」と申し出た
- 支払の猶予を求めた
承認をするのに、行為能力の制限を受けていないことや、処分する権限は要りません(152条2項)。
協議を行う旨の合意は、書面で
管理組合と滞納者が、支払について話し合うことを書面で合意すると、次のうち一番早い時まで時効は完成しません(151条1項)。
- 合意から1年を経過した時
- 合意で1年未満の協議期間を定めたときは、その期間を経過した時
- どちらかが書面で協議の続行を拒絶したときは、その通知から6か月を経過した時
電子データ(電磁的記録)での合意も、書面とみなされます(151条4項)。猶予中に再度合意することもできますが、本来の完成時から通じて5年が上限です(151条2項)。
試験での問われ方と、取り違えやすい点
過去問の文章はここに載せられませんが、取り違えが起きやすい論点は次の4つです。
覚え方は、「更新は、権利が確定したか、相手が認めたとき」です。確定や承認という「動かぬ状態」ができたときに、時計がゼロに戻ります。
管理業務主任者の実務とのつながり
管理会社は、管理組合から委託を受けて、滞納者への督促を行うことがあります。滞納者がいつから払っていないのかを把握し、時効が近い月があれば、催告から訴えへ移すタイミングを管理組合に示せることが大切です。
滞納した管理費を、誰に請求できるのか(買主・競売の買受人・相続人など)は、滞納管理費は誰に請求できるかで整理しています。請求先が決まっても、時効が完成してしまえば回収は難しくなるため、この2つはセットで押さえておくと得点につながります。
管理業務主任者講座では、管理費の時効の授業で、完成猶予と更新を日付つきの例で確認できます。トーレスに質問しながら、事由ごとの違いを自分の言葉で説明できるようになるまで確かめてみてください。
よくある質問
Q. 管理費を5年以上滞納された場合、管理組合は一切請求できませんか?
いいえ。時効が完成しても、相手が援用しなければ請求権は残ります。また、完成前に訴えや承認があれば、時効は止まったり、数え直しになったりします。
Q. 催告を何度も繰り返せば、時効を延ばし続けられますか?
できません。猶予の間にした再度の催告には、猶予の効力がありません(民法150条2項)。6か月の間に、訴えなどの手続に進む必要があります。
Q. 滞納者が一部だけ払ったら、時効はどうなりますか?
承認にあたりえるので、一部の支払いがあった時から新たに時効が進みます(民法152条1項)。何を承認とみるかは、個別の事情で判断されます。
まとめ
- 滞納管理費の時効は5年。毎月の分が、支払期日の翌日から別々に進む(民法166条1項)
- 期間が過ぎても、援用されるまでは請求権は残る。完成前の放棄は無効(145条・146条)
- 完成猶予は先送り、更新は数え直し。催告は6か月の猶予だけ、訴えは確定で更新(新しい期間は10年)、承認は更新
- 協議の合意は書面(電子データも可)で、最長1年などの猶予
条文の数字は、試験年度の4月1日現在の法令が基準になります。最新の条文は、e-Gov 法令検索で確認してください。