管理業務主任者試験の会計では、「3月に入った4月分の管理費は何にするか」といった仕訳が出ます。お金の動きだけを見ると迷いますが、決め手は一つで、「何月分のお金か」です。この記事では、未収入金・前受金・預り金の振り分け方を、自分で作った数字の例題で整理します。
結論:入金は「入った日」でなく「何月分か」で決める
管理組合の会計では、収入は「その月の分」として数えます。月ごとに収入を決める考え方を発生主義(お金の出入りの日ではなく、権利や義務が生まれた月で記録する考え方)といいます。
| 入金の中身 | 処理 | 科目の区分 |
|---|---|---|
| 前の月までの分(滞納分) | 前に収入に入れた分の回収なので、未収入金が減る | 資産が減る |
| 当月の分 | その月の収入 | 収入 |
| 翌月以後の分(先払い) | まだ収入にしない。前受金とする | 負債が増える |
| 返す約束で預かったお金 | 預り金とする | 負債が増える |
「入金があったか」ではなく「何月分か」で考えます。入金がなくても、当月の分は当月の収入です。
4つの科目の意味と、借方・貸方
仕訳は、お金の動きを借方(左)と貸方(右)に分けて書く方法です。資産が増えると借方、負債や収入が増えると貸方に書きます。減るときは反対側です。
| 科目 | 何を表すか | 仲間 | 記入する側(増加) |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 口座にある現金 | 資産 | 借方 |
| 未収入金 | 請求できるのに、まだ入っていない管理費等 | 資産 | 借方 |
| 前受金 | 来月以降の管理費等を、早めに受け取った分 | 負債 | 貸方 |
| 預り金 | 後日返す前提で、一時的に預けられた金額 | 負債 | 貸方 |
標準管理規約60条1項は、当月分の管理費等を別に定める徴収日までに一括して徴収すると定めています。当月分は当月に入るのが原則で、そこからずれた分を未収入金や前受金で整えるイメージです。
例題:ひなた館の3月の入金を5戸で見る
自作の例題です。ひなた館の月額は、1戸あたり管理費10,000円と修繕積立金6,000円で、合計16,000円です。今は年度末の3月です。
| 部屋 | 3月中の入金 | 中身 |
|---|---|---|
| 201号室 | 16,000円 | 3月分 |
| 202号室 | 32,000円 | 払い遅れていた2月分と3月分 |
| 203号室 | 32,000円 | 3月分と、先払いの4月分 |
| 204号室 | なし | 3月分が未入金 |
| 205号室 | なし | 3月分を2月に先払い済み |
201号室:当月分を当月に受け取った
借方は普通預金16,000円です。貸方は管理費収入10,000円と修繕積立金収入6,000円です。これが基本の形で、そのまま3月の収入になります。
202号室:2月分は未収入金の回収
2月分は2月末に、借方を未収入金、貸方を収入として計上済みです。入金があった3月には、借方が普通預金、貸方が未収入金になります。収入は2月に入れてあるので、3月の収入にはしません。一緒に払われた3月分は、201号室と同じ当月分です。
203号室:4月分は前受金
4月分は先払いなので、借方は普通預金、貸方は前受金です。前受金は「まだ来ていない月の分を先にもらった」状態で、負債です。4月になったら、借方を前受金、貸方を収入にして取り崩します。
204号室:入金がなくても3月分は3月の収入
お金は入っていないので、普通預金は動きません。借方を未収入金16,000円、貸方を管理費収入と修繕積立金収入にします。あとで入金があれば、202号室の2月分と同じ回収の仕訳です。
205号室:2月に払った3月分は前受金の取り崩し
2月の時点では翌月分なので前受金にしてありました。3月になって当月分になったので、借方を前受金、貸方を収入にして、前受金を取り崩します。
5戸をまとめた3月の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金(当月中の入金) | 80,000円 | 管理費収入(5戸の3月分) | 50,000円 |
| 未収入金(204号室) | 16,000円 | 修繕積立金収入(5戸の3月分) | 30,000円 |
| 前受金(205号室の取り崩し) | 16,000円 | 未収入金(202号室の回収) | 16,000円 |
| 前受金(203号室の先払い) | 16,000円 | ||
| 合計 | 112,000円 | 合計 | 112,000円 |
借方と貸方の合計が一致していることを確認します。入金は201号室16,000円、202号室32,000円、203号室32,000円の合計80,000円です。
管理費と修繕積立金は科目を分けて書く
標準管理規約の28条5項は、「修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない」と定めています(令和6年6月7日改正後の条文。以前は4項だった規定が、改正で項が増えて5項になっています)。
そのため、貸方の収入は「管理費収入」と「修繕積立金収入」に分けます。同じ16,000円でも、まとめて1行にしません。同じ28条のコメントには、分譲時に一括して徴収する修繕積立基金や、修繕時に区分所有者から徴収する一時負担金も、修繕積立金として積み立てて区分経理するものとされています。
古い問題集や資料には「28条4項」と書かれていることがあります。現行の条文では5項です。
駐車場の敷金は預り金
標準管理規約15条は、管理組合が特定の区分所有者に駐車場使用契約で駐車場を使わせることができるとし、使う人は駐車場使用料を納めると定めています(同条1項・2項)。
例として、3月に新しく駐車場の使用契約を結び、4月から使うとします。3月中に敷金20,000円と4月分の使用料10,000円が入りました。仕訳は次のように分かれます。
| 入金 | 貸方の科目 | 理由 |
|---|---|---|
| 敷金20,000円 | 預り金 | 契約が終われば返すお金で、収入ではない |
| 4月分の使用料10,000円 | 前受金 | 翌月分の先払い。4月に駐車場使用料収入へ |
借方は、入金の合計30,000円の普通預金です。敷金の扱いは標準管理規約に細かな定めがないため、一般的な会計の考え方(返す義務があるお金は負債)で整理しています。
よくある取り違え
| 正しい | 取り違え |
|---|---|
| 3月に入った4月分は前受金 | 3月の収入にしてしまう |
| 未入金の3月分も3月の収入 | 入金がないので計上しない |
| 2月分の入金は未収入金の回収 | 3月の収入にしてしまう |
| 敷金は預り金 | 駐車場使用料収入にしてしまう |
どの間違いも、入金の日で決めているのが原因です。迷ったら、まず「それは何月分のお金か」「返すお金か」の2点を確かめます。
授業で学ぶには
この論点は、管理業務主任者講座の仕訳の授業で、入金表を使った演習の形で扱っています。標準管理規約の条文の読み方は、決議要件を1枚の表にまとめた記事でも整理しています。
よくある質問
Q. 滞納されている管理費は、収入に入れないのですか。
当月分以前の分は、入金がなくても、その月の収入として計上します。まだ受け取っていない分は未収入金(資産)に残ります。
Q. 前受金は収入ですか。
収入ではなく負債です。先に受け取った月が来たら、前受金を取り崩して、その月の収入にします。
Q. 修繕積立金と管理費は、1つの口座で管理してよいのですか。
口座の話ではなく経理の話として、標準管理規約28条5項は区分して経理することを求めています。口座が同じかどうかではなく、帳簿の上で分けることが要点です。
まとめ
- 入金は「何月分か」で決める。前の月は未収入金の回収、先の月は前受金、当月はその月の収入
- 返す約束のお金(敷金など)は預り金で、収入にしない
- 修繕積立金は管理費と区分して経理する(標準管理規約28条5項)
- 最後に借方と貸方の合計が一致することを確かめる
出題の基準日は年度ごとに案内されるため、最新の受験案内で確認してください。

