区分所有法は令和7年に大きく改正され、2026年4月1日に施行されました。管理業務主任者試験は、試験年度の4月1日現在施行の法令等が出題の基準です。改正で入った新しい制度は、区分所有法の条文と、標準管理規約の対応条文をセットで押さえると整理しやすくなります。この記事では、決議の数え方の変化を短く確認したうえで、新制度を「誰が・何を・どこに届けるか」の視点で整理します。条文は、2026年10月17日にe-Gov法令検索のデータと、国土交通省が公表している令和7年改正の標準管理規約(単棟型)で確かめました。
決議要件の全体像は、区分所有法と標準管理規約の決議要件を1枚の表で整理した記事にまとめています。試験の概要は管理業務主任者試験とは? 50問・四肢択一・合格基準と出題分野を読んでください。
結論:改正は「決議の数え方」と「新制度」の2本立て
改正後の規定を、2つのグループに分けて覚えると整理できます。
| グループ | 内容 | 主な条文 |
|---|---|---|
| 決議の数え方 | 普通決議は出席した区分所有者と議決権の各過半数。特別決議は過半数の出席が前提で、出席者の各4分の3などで決める | 39条1項、17条1項、31条1項 |
| 母数の調整 | 裁判所が認めた所在等不明区分所有者を、決議の母数から外す | 38条の2 |
| 新しい制度 | 国内管理人、所有者不明専有部分管理命令、管理不全専有部分管理命令、管理不全共用部分管理命令 | 6条の2、46条の2〜46条の14 |
| 協力・保存の規定 | 区分所有者の相互協力、他の区分所有者の専有部分を使う保存の請求 | 5条の2、6条2項 |
「出席者で数える決議」の中身は、普通決議が出席した区分所有者と議決権の各過半数(39条1項)、共用部分の変更や規約の変更が出席者の各4分の3以上(17条1項、31条1項)です。一方、建替えなどの再生の決議は全体で数えます。ここは決議要件の記事で詳しく書いたので、この記事では新制度に絞ります。
区分所有者の責務と、保存の請求
改正で、区分所有者が相互に協力する責務が条文になりました(5条の2)。区分所有者は、建物、敷地、附属施設の管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければなりません。
また、6条2項は、自分の専有部分や共用部分を保存・改良するため必要な範囲で、他の区分所有者の専有部分などを使うこと、または自らこれらを保存することを請求できると定めています。相手が損害を受けたときは、償金を支払います。たとえば、上階の配管が傷んで下の部屋に水が漏れるとき、被害を受けた人が、上階の配管の保存を自らすることを請求する、という場面で使います。
国内管理人:海外在住の区分所有者の代わり
区分所有者が国内に住所や居所を持たない場合、専有部分と共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所または居所のある人から管理人を選任できます(6条の2第1項)。これが国内管理人です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 選任するか | 「選任することができる」。法律上の義務ではない |
| 権限(6条の2第2項) | 保存行為/専有部分の性質を変えない範囲の利用・改良/集会の招集通知の受領/集会での議決権の行使/他の区分所有者に対して負う債務の弁済 |
| 通知 | 管理者または管理組合法人があるときは、遅滞なく、選任した旨と国内管理人の氏名・住所などを通知する(同条3項) |
| 本人との関係 | 5つの権限のほかは、委任の規定に従う(同条4項) |
標準管理規約の対応条文は31条の3です。組合員が国内管理人を選任したときは、直ちに、その旨と国内管理人の氏名または名称、住所または居所を、書面で理事長に届け出ます。選任を終了させたときや、届出の内容が変わったときも、直ちに書面で届け出ます。
5つ目の権限は、債務を弁済する権限です。国内管理人が管理費を支払う義務を負うという意味ではありません。選択肢に「国内管理人は管理費の支払義務を負う」とあれば、誤りの疑いが強いと読めます。
標準管理規約の総会の議決権行使の代理人には、「国内管理人」も挙げられています。代理人になれるのは、配偶者または一親等の親族、同居する親族、他の組合員、国内管理人です。
所在等不明区分所有者の除外
区分所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないときは、裁判所が、その人以外の区分所有者による集会の決議ができる旨の裁判をすることができます(38条の2第1項)。請求できるのは、所在等不明区分所有者以外の区分所有者か、管理者です。
この裁判で所在等不明区分所有者とされた人は、集会での議決権を持ちません(同条2項)。一般の区分所有者が請求して裁判があったときは、その区分所有者が遅滞なく管理者に通知します。管理者がいなければ、建物内の見やすい場所に掲示します(同条3項)。
標準管理規約の対応条文は67条の3です。
| 項目 | 区分所有法 | 標準管理規約(67条の3) |
|---|---|---|
| 請求する人 | 他の区分所有者または管理者 | 理事長が、理事会の決議を経て請求する |
| 他の区分所有者が請求したとき | 管理者に通知(管理者がなければ掲示) | 理事長以外の区分所有者は、遅滞なく理事長に通知する |
| 裁判の確定後 | 集会の議決権を持たない | 総会で議決権を持たず、組合員総数・議決権総数・敷地利用権の持分の総数から除外する。総会の招集通知なども要らない |
| 費用 | — | 請求に要した経費を、弁護士費用等を加算して、その区分所有者に請求できる |
母数に与える影響は、次の例で確かめられます。この例は、記事のために作ったものです。
区分所有者が20人で、議決権が1戸1個の20個のマンションで、居場所が分からない人が2人いるとします。除外の裁判が確定すると、母数は18人・18個です。5分の4を数える決議では、18の5分の4は14.4なので、15人・15個以上の賛成が必要です(除外前は16人・16個以上)。全体の数で数える決議ほど、除外の効果が大きくなります。
3つの管理命令:所有者不明と管理不全
改正で、裁判所が管理人を選任して専有部分や共用部分を管理させる制度が、区分所有法に設けられました。
| 命令 | 場面 | 条文 |
|---|---|---|
| 所有者不明専有部分管理命令 | 区分所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない専有部分 | 46条の2 |
| 管理不全専有部分管理命令 | 区分所有者による専有部分の管理が不適当で、他人の権利や法律上保護される利益が侵害される(おそれがある)とき | 46条の8 |
| 管理不全共用部分管理命令 | 区分所有者による共用部分の管理が不適当で、同様の侵害のおそれがあるとき | 46条の13 |
どの命令も、利害関係人の請求により、裁判所が命令の中で管理人を選任します。なお、民法の所有者不明建物管理命令と管理不全建物管理命令の規定(民法264条の8、264条の14)は、専有部分と共用部分には適用されません(区分所有法6条4項)。
管理人の権限の違い
試験で差がつきやすいのは、管理人の権限の違いです。
| 項目 | 所有者不明専有部分管理人 | 管理不全専有部分管理人 |
|---|---|---|
| 管理・処分の権利 | 対象の専有部分などの管理・処分をする権利が、管理人に専属する(46条の3第1項) | 管理・処分をする権限を持つ(46条の9第1項) |
| 保存・利用・改良を超える行為 | 裁判所の許可が必要(46条の3第2項) | 裁判所の許可が必要(46条の9第3項) |
| 集会での議決権 | 標準管理規約では、組合員に代わって議決権を行使できる(組合員とみなす) | 集会において議決権を行使することができない(46条の9第2項) |
| 専有部分の処分 | 裁判所の許可を得て行う | 許可をするには、その区分所有者の同意が必要(46条の9第4項) |
保存行為と、対象の性質を変えない範囲の利用・改良を目的とする行為を超える行為には、どちらも裁判所の許可が必要です。ただし、許可がないことを、善意の第三者に対抗することはできません(46条の3第2項、46条の9第3項)。管理不全共用部分管理人には、管理不全専有部分管理人の規定が準用されます(46条の14)。
管理人の費用と報酬は、管理不全の場合、管理不全専有部分等の所有者の負担です(46条の12第2項)。共用部分の場合は、共用部分を共有する者が連帯して負担します(46条の14の読替え)。
標準管理規約の手続
標準管理規約には、所有者不明専有部分管理命令の手続が67条の4、管理不全専有部分管理命令の手続が67条の5に定められています。
- 理事長は、理事会の決議を経て、裁判所に請求する
- 管理人がその任務に違反して著しい損害を与えたなど重要な事由があるときは、理事会の決議を経て、理事長が管理人の解任を求める請求をする
- 選任された管理人は、自分の氏名・住所と、裁判所の命令を受けて対象の専有部分を管理することを、遅滞なく理事長に届け出る
- 管理組合が負担した管理に必要な経費は、その専有部分の区分所有者に請求できる。請求に要した費用には、弁護士費用等を加算できる
標準管理規約の総会の規定では、所有者不明専有部分管理人は、組合員に代わって議決権を行使できます。その場合は、資格を証する書面の写しを理事長に提出します。決議の人数を数える規定でも、所有者不明専有部分管理人は組合員とみなされます。
保険金等の請求と受領
区分所有法26条2項は、管理者の職務に、共用部分等の保険金や損害賠償金などの請求・受領を含めました。その場面では、管理者は、請求権を持つ区分所有者と元区分所有者を代理します。ただし、書面または電磁的方法で別段の意思表示をした元区分所有者は除かれます。
標準管理規約24条の2は、これを具体的に定めています。理事長が、保険金等の請求と受領について、区分所有者と旧区分所有者を代理します。理事会の決議を経て、訴訟の原告や被告になることもできます。区分所有権を譲渡する場合は、別段の意思表示を行わないものとされています。受け取った保険金等は、原因となった敷地・共用部分等の瑕疵の修繕に充てるのが原則です。
試験での問われ方と覚え方
- 「誰が請求するか」:所在等不明区分所有者の除外は、他の区分所有者か管理者(標準管理規約では理事長が理事会の決議を経る)
- 「義務か任意か」:国内管理人の選任は、条文は「選任することができる」
- 「議決権」:管理不全専有部分管理人は行使できない。所有者不明専有部分管理人は、標準管理規約では組合員とみなす
- 「裁判所の許可」:保存・利用・改良を超える行為には必要
- 「届出先」:国内管理人の選任も、管理人の就任も、標準管理規約では理事長に届け出る
制度の名前が似ているので、「所有者不明は居場所が分からない、管理不全は管理が不適当」と、場面で区別すると取り違えを防げます。
古い参考書や問題集には、改正前の規定や旧条番号が載っています。教材の改訂時期を確かめ、試験年度の4月1日現在の法令で確認してください。
講座で学ぶには
新制度は、制度の名前、請求する人、管理人の権限、規約の条番号を同時に覚える必要があります。管理業務主任者講座では、令和7年改正の新制度を整理する授業を用意しています。授業の内容と進め方は、講座ページで確認できます。
まとめ
- 改正の新制度は、国内管理人、所在等不明区分所有者の除外、所有者不明・管理不全の管理命令
- 国内管理人の選任は任意。権限は保存行為、利用・改良、通知の受領、議決権の行使、債務の弁済の5つ
- 所在等不明区分所有者は、裁判の確定後、議決権を持たず、母数から外れる
- 管理不全専有部分管理人は議決権を行使できない。所有者不明専有部分管理人は、標準管理規約で組合員とみなされる
- 標準管理規約では、除外の請求や管理命令の請求は、理事会の決議を経て理事長が行う
法令や標準管理規約は改正されます。この記事は2026年10月17日時点の確認内容で、2026年4月1日施行の規定です。受験前には、e-Gov法令検索、国土交通省のページ、マンション管理業協会の最新の案内で確かめてください。

