総合旅行業務取扱管理者の約款の科目では、「この旅行は国内旅行か、海外旅行か」を最初に判定させる問題が出ます。判定を間違えると、取消料も、通知の期限も、特別補償の金額も、すべて違う表を引いてしまいます。
この記事では、標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部を中心に、海外旅行に関わる規定をひとつにまとめます。確認したのは、観光庁が公表している標準旅行業約款(令和8年3月9日の改正を反映し、令和8年4月1日から適用される版)で、2026年10月27日時点の内容です。国内旅行業務取扱管理者の合格者で、約款を海外旅行の目で読み直したい方にも向いています。
結論:外国を少しでも含めば、全行程が海外旅行
募集型企画旅行契約の部の2条2項は、2つの言葉を次のように定めています。
「本邦内」は日本の中のことです。大事なのは「のみ」の2文字です。行程の一部でも外国を含めば「本邦内のみ」ではなくなるので、その旅行は海外旅行になります。しかも判定は旅行全体に対して行います。日本の中を移動する区間があっても、そこだけ国内旅行の規定を使うことはありません。受注型企画旅行契約の部と手配旅行契約の部にも、同じ定義があります。
判定の手順は1つだけです。行程を最初から最後まで見て、外国が1か所でも入っていれば全行程が海外旅行。入っていなければ国内旅行です。
外国に寄港するクルーズは海外旅行か
架空の船旅で考えます。神戸港を出港して広島港に寄港し、次に釜山(韓国)に寄港して、神戸港に戻って下船するクルーズです。
- 神戸港から広島港までは日本の中です
- しかし釜山という外国を含むので、「本邦内のみの旅行」ではありません
- したがって、神戸から広島までの区間も含めて、全行程が海外旅行です
「外国で降りて観光するかどうか」は関係ありません。寄港するだけでも、行程に外国が含まれることに変わりはありません。
国内線がつくツアーはどう判定するか
次は、旅行業者が作った計画の範囲の問題です。
募集型企画旅行は、旅行業者があらかじめ作った計画に基づいて実施する旅行です(2条1項)。計画に入っている部分だけが、その企画旅行の範囲になります。旅行者が自分で手配した部分は、同じ日程に並んでいても、企画旅行の外です。
国内と海外で違う4つの規定
判定のあとに使い分ける規定は、主に次の4つです。
手荷物の損害の賠償は、旅行者1名につき15万円が限度です(旅行業者に故意または重大な過失がある場合を除きます)。この15万円は国内と海外で同じです。取消料の表の中身は、別の記事で国内旅行と並べて詳しく整理しています。
手配代行者が外国の会社のとき
海外旅行では、現地の手配会社にホテルや送迎の手配を任せることが普通です。4条は、旅行業者が手配の全部又は一部を、本邦内又は本邦外の他の旅行業者や手配を業として行う者などに代行させることがあると定めています。代行させた相手が手配代行者です。外国の会社でもかまいません。
責任は27条に書かれています。
手配代行者が故意又は過失で旅行者に損害を与えたときは、旅行業者自身が与えたときと同じように賠償する責任があります(27条1項)。ただし、損害発生の翌日から起算して2年以内に旅行業者へ通知があったときに限ります。手荷物の損害だけは、前の表のとおり、通知の期限がもっと短くなります。
旅行地で暴動が起きたとき
天災地変・戦乱・暴動などで、旅行の安全で円滑な実施が不可能になる場合の規定です。旅行の開始前か開始後かで、使う条文が変わります。
開始前は、不可能になった場合だけでなく、不可能になるおそれが極めて大きい場合でも解除できます。開始後に解除したときの効果は、契約関係が将来に向かってのみ消滅することです。すでに受けたサービスの分はそのまま有効に終わっています。
打ち切ったときの払戻しと帰路の手配
旅行開始後に旅行業者が解除したときの払戻しは、18条3項で次のように決まっています。
払戻額=旅行代金のうち、まだ提供を受けていない旅行サービスに係る部分の金額 − そのサービスに対して払う(払った)取消料・違約料などの費用
金額は架空の例です。海外8日間のツアーで、6日目に暴動が起きて、旅行業者が残りを解除しました。まだ提供を受けていない部分の金額が12万円で、その部分についてホテルなどに払う取消料・違約料等が3万円なら、払戻額は9万円です。
- 払戻しの期限は、契約書面に記載した旅行終了日の翌日から30日以内です(19条1項)。旅行終了日が9月10日なら10月10日まで、と数えます
- 旅行開始前に解除したときの払戻しは、解除の翌日から7日以内です(同じく19条1項)。「開始前は7日、開始後は30日」と覚えます
もう1つ、帰路の手配があります(20条)。旅行業者は、旅行者の求めに応じて、旅行の出発地に戻るために必要な旅行サービスの手配を引き受けます。ただし、戻るための旅行に要する一切の費用は旅行者の負担です。手配は旅行業者、お金は旅行者、と分けて覚えると間違えません。
特別補償の見舞金は海外のほうが2倍
特別補償は、旅行業者の責任が生じるかどうかに関係なく支払われる補償です(28条)。海外旅行を目的とする企画旅行と国内旅行を目的とする企画旅行で、額が違います。
入院見舞金と通院見舞金の額は、国内の2倍になっています。計算の落とし穴は、入院も通院も1日以上あるときです。特別補償規程10条により、大きいほうだけを支払います。足し算はしません。そのとき通院見舞金のほうは、通院日数に入院日数を足した日数を通院日数とみなして額を決めます。
計算例(海外旅行)を2つ出します。
- 入院2日、退院後に通院5日
- 入院見舞金:入院2日は7日未満なので4万円
- 通院見舞金:通院5日+入院2日=7日とみなすと、7日以上90日未満なので5万円
- 大きいのは通院見舞金。答えは5万円
- 入院6日、退院後に通院1日
- 入院見舞金:入院6日は7日未満なので4万円
- 通院見舞金:通院1日+入院6日=7日とみなすと、7日以上90日未満なので5万円
- 大きいのは通院見舞金。答えは5万円(通院が1日だけでも、入院日数を足して数える点に注意)
なお、通院見舞金は通院日数が3日以上にならないと支払われません(9条)。入院日数を足して数えるのは、入院も通院も1日以上あって10条の比較をするときの扱いです。
試験での覚え方
- まず「外国が1か所でも入っているか」で国内旅行か海外旅行かを決める。国内の区間があっても、全行程が海外旅行になる
- 違う規定は4つ(取消料・最少催行人員の中止の通知・手荷物損害の通知・特別補償)。数字は国内→海外の順に「13日→23日」「14日→21日」「1,500万円→2,500万円」と並べる
- 手配代行者の過失は旅行業者の過失と同じ扱い。運送機関のストライキや暴動は関与し得ない事由なので賠償しない
- 打ち切りは「将来に向かってのみ消滅」「払戻しは終了日の翌日から30日以内」「帰路は手配を引き受けるが費用は旅行者負担」の3点セット
この3点セットを暴動の事例で練習するときは、授業で図と計算を順番に追うと整理しやすくなります。総合旅行業務取扱管理者講座の約款の授業では、海外旅行の規定をまとめて確かめる回があります。
よくある質問
Q. 寄港地で観光しないクルーズでも海外旅行ですか。
行程に外国の港が含まれていれば海外旅行です。観光するかどうかは判定に関係しません。
Q. 旅行者が自分で予約した国内線も、海外旅行の規定の対象ですか。
旅行業者の計画に入っていない便は、その企画旅行の範囲の外です。計画に入っている国内線なら、全行程が海外旅行の一部として扱われます。
Q. 手荷物の損害の賠償限度額は、海外旅行では増えますか。
増えません。旅行者1名につき15万円が限度で、国内旅行と同じです。違うのは通知の期限(国内14日以内、海外21日以内)です。
まとめ
国内旅行は「本邦内のみ」、海外旅行は「国内旅行以外」。外国を含めば全行程が海外旅行です。判定のあとは、取消料・中止の通知期限・手荷物損害の通知期限・特別補償の額が国内と違うので、表で数字を押さえます。暴動での打ち切りは、将来に向かってのみ消滅・払戻しは30日以内・帰路の費用は旅行者負担です。約款は改正されることがあるので、最新は観光庁の公表を確認してください。