総合旅行業務取扱管理者の約款では、旅行者が契約を解除するときの取消料が毎年のように問われます。国内旅行の取消料はすでに学んだ、という国内旅行業務取扱管理者の合格者でも、海外旅行の表は日数も率も違うので、混ざりやすいところです。
この記事では、標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部にある海外旅行の取消料を、国内旅行と並べて整理します。確認したのは観光庁が公表している標準旅行業約款(令和8年3月9日の改正を反映し、令和8年4月1日から適用される版)で、2026年10月17日時点の内容です。
結論:海外旅行の取消料は「3段+ピーク時」
旅行者は、いつでも別表第一に定める取消料を旅行会社に支払って、募集型企画旅行契約を解除できます(16条1項)。理由は問われません。海外旅行(出国時か帰国時に航空機を使うツアー)の取消料は、次のとおりです。
| 区分 | 解除の時期 | 取消料(旅行代金の) |
|---|---|---|
| イ | ピーク時の旅行だけ。旅行開始日の前日から数えて40日目に当たる日以降 | 10%以内 |
| ロ | 30日目に当たる日以降 | 20%以内 |
| ハ | 旅行開始日の前々日以降 | 50%以内 |
| ニ | 旅行開始後の解除、または無連絡不参加 | 100%以内 |
どの率も「以内」、つまり上限です。実際の金額は旅行会社が契約書面に明示します(別表第一の備考)。
日数は「旅行開始日の前日を1日目」として、さかのぼって数えます。開始日の前日が1日目、前々日が2日目です。「前々日以降」は2日目から当日までを指します。
国内旅行と並べて比べる
国内旅行の取消料(日帰りでない場合)と並べると、違いが見えます。
| 項目 | 国内旅行 | 海外旅行 |
|---|---|---|
| かかり始め | 20日目以降(日帰りは10日目以降)で20%以内 | 30日目以降で20%以内(ピーク時は40日目以降で10%以内) |
| 途中の段 | 7日目以降30%以内、前日40%以内 | 段なし |
| 直前 | 当日50%以内 | 前々日以降50%以内 |
| 旅行開始後・無連絡不参加 | 100%以内 | 100%以内 |
国内は段が細かく、海外は段が少ない代わりに、早くかかり始めて前々日から一気に50%に上がります。「海外は30日目から、前々日から半額」と覚えると、国内の「20日目・7日目・前日・当日」と取り違えにくくなります。
数え方の練習:日付から「何日目」を出す
日数の数え方は、解除の日から旅行開始日までの日数を数える形で出題されます。旅行開始日から引き算すると、n日目は「旅行開始日のn日前の日」です。金額はすべて架空の例です。
例1(ピーク時):旅行代金40万円の海外ツアー、旅行開始日は8月20日。
- 8月20日はピーク時(7月20日〜8月31日)に入ります。
- 40日目に当たる日は8月20日の40日前の7月11日です。7月11日以降に解除すると、イの10%以内が上限になります。
- 7月12日に解除すると39日目なので、上限は10%で4万円です。7月10日なら41日目で、取消料はかかりません。
- 30日目は7月21日です。7月21日以降は20%以内に上がり、上限は8万円です。
例2(ピーク時でない):旅行代金40万円の海外ツアー、旅行開始日は6月20日。
- ピーク時ではないので、イの区分はありません。30日目に当たる日は5月21日です。
- 5月20日までなら取消料は要りません。5月21日以降は20%以内(上限8万円)です。
- 6月18日(前々日)以降は50%以内で、上限は20万円です。6月19日(前日)も当日も同じ50%以内です。
国内旅行では前日40%・当日50%と分かれていましたが、海外には前日・当日の区別がありません。
ピーク時は「旅行開始日」で決まる
ピーク時は、別表第一の注で次のように定められています。
- 12月20日から1月7日まで
- 4月27日から5月6日まで
- 7月20日から8月31日まで
ここで見るのは旅行開始日だけです。旅行開始日が7月19日なら、旅行が7月20日以降に及んでもピーク時の旅行にはなりません。反対に、旅行開始日が8月31日ならピーク時で、9月にまたがっても40日目以降10%以内の区分が使えます(9月1日開始ならピーク時ではありません)。
年末年始は12月20日〜1月7日と年をまたぎます。12月25日開始のツアーも1月3日開始のツアーも、どちらもピーク時です。
貸切航空機・船舶を使うツアーは別の表
別表第一の海外旅行には、航空機を使う通常のツアーのほかに、次の区分があります。
- 貸切航空機を利用するツアー:90日目以降20%以内、30日目以降50%以内、20日目以降80%以内、3日目以降の解除または無連絡不参加は100%以内。ピーク時の区分はありません
- 出国時と帰国時の両方に船舶を利用するツアー:その船舶に係る取消料の規定によります
通常の海外ツアーの表(40日目・30日目・前々日)と、貸切航空機の表(90日目・30日目・20日目・3日目)は数字が全部違います。問題文の「貸切」の二文字を見落とすと、まるごと別の表を選んでしまいます。
受注型企画旅行との違い
受注型企画旅行(旅行者の依頼で作る旅行)にも、別表第一があります。海外旅行の通常の表で、募集型との違いは次の2点です。
| 項目 | 募集型 | 受注型 |
|---|---|---|
| ピーク時の区分(40日目以降10%以内) | あり | なし |
| 30日目より前 | 取消料なし | 企画料金の金額を契約書面に明示した場合は、企画料金に相当する金額 |
受注型では、30日目より前でも、契約書面に企画料金の金額が明示されていれば、その金額を取消料として払います。募集型は、30日目より前なら(ピーク時の40日目より前も含めて)取消料はかかりません。
取消料がかからない解除と、旅行会社の側の期限
取消料を払わずに解除できるのは、旅行開始前なら16条2項の5つの場合です。
- 旅行会社によって契約内容が変更された(別表第二に掲げる重要なものなど、重要な変更のときに限る)
- 14条1項により旅行代金が増額された
- 天災地変・戦乱・暴動・運送宿泊機関のサービス中止・官公署の命令などで、安全かつ円滑な実施が不可能、またはそのおそれが極めて大きい
- 10条1項の期日までに確定書面が交付されなかった
- 旅行会社の責任で、契約書面の日程どおりの実施が不可能になった
旅行開始後は、旅行者の責任によらず契約書面のサービスを受けられなくなった部分を、取消料なしで解除できます(16条3項)。
反対に、旅行会社が最少催行人員に達しないことを理由に契約を解除するときは、旅行を中止する旨を通知する期限が決まっています。国内旅行は13日目(日帰りは3日目)より前、海外旅行は23日目より前、そのうちピーク時に開始するものは33日目より前です(17条3項)。旅行者の取消料の「30日目・40日目」とは数字が違うので、並べて覚えるときは注意してください。
本人の病気、親族の不幸、空港へ向かう電車の遅れなど、旅行者の側の事情は、やむを得なくても16条2項の5つには当たりません。取消料を払って解除します。
試験での問われ方と覚え方
- 日付から区分を判定する:旅行開始日と解除日が与えられ、取消料の上限額を求める形が定番です。「前日を1日目」で数え、旅行開始日がピーク時かを最初に確認します
- 表の取り違え:国内旅行の日数(20日目・7日目)や、貸切航空機の日数(90日目・20日目)を海外の通常の表に持ち込むミスが多く出ます
- 数字の覚え方:海外の通常の表は「40(ピーク時)→30→前々日」。10%・20%・50%・100%の4つの率が、上から順に対応します
過去問の問題文は載せられないので、自分で日付を決めて、上の例1・例2のように解除日ごとの上限額を出す練習をすると定着します。
授業・講座で学ぶには
総合旅行業務取扱管理者講座の約款の授業では、旅行者の解除権と取消料を、国内旅行と海外旅行の表を並べながら、計算例つきで取り上げています。国内旅行業務取扱管理者の合格者は、この記事の比較表で国内の数字を思い出しながら、海外の数字を重ねて覚えるのが近道です。同じ試験の受け方は科目免除と科目合格の記事、試験の全体像は試験の基本の記事にまとめています。
まとめ
- 海外旅行の取消料は、30日目以降20%以内、前々日以降50%以内、旅行開始後・無連絡不参加100%以内の3段で、ピーク時の旅行だけ40日目以降10%以内が加わる
- 日数は旅行開始日の前日を1日目として、さかのぼって数える。ピーク時かどうかは旅行開始日だけで決まる
- 貸切航空機の表(90・30・20・3日目)、受注型(ピーク時の区分なし)、旅行会社の通知期限(23日目・ピーク時33日目)は、別々の数字として切り分ける
- 約款は改正されることがあるので、最新の標準旅行業約款は観光庁の公表ページで確認してください

