国内旅行業務取扱管理者試験の約款では、「この変更で変更補償金は支払われるか。いくらか」という問題が定番です。ホテルが変わった、飛行機の会社が変わった、集合時刻が早まった。どれが支払い対象で、どれが対象外なのかを、条文の順番に沿って整理します。
約款の内容は、観光庁が公表している標準旅行業約款(令和8年3月9日改正、同年4月1日適用)の募集型企画旅行契約の部を2026年10月16日に確認したものです。試験では、その年度に定められた基準日時点の約款が問われます。最新の内容は観光庁の公式サイトでご確認ください。
旅程保証とは — 重要な変更に対する補償
旅程保証は、募集型企画旅行(旅行会社があらかじめ行程と代金を定めて売り出すツアー)で、契約内容の重要な部分が変わったとき、旅行会社が旅行者へ変更補償金を支払う仕組みです。標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部29条1項と、別表第二が定めています。
ここで大切なのは、旅行会社に落ち度があるかどうかを問わない点です。ミスがなくても、別表第二に載っている変更が起きれば、原則として支払います。逆に、旅行会社のミスで変更が起きたことが明らかな場合は、変更補償金ではなく、27条1項の損害賠償の問題として扱います(29条1項ただし書)。
判定は、次の3段で進めると迷いません。
- 起きた変更が、別表第二の9つのどれかに当たるか(当たらなければ支払わない)
- 29条1項の1号・2号の「支払わない事由」に当たるか(当たれば支払わない)
- 座席や部屋の不足による変更ではないか(不足によるものなら、支払わない事由から除かれ、支払う)
別表第二の9つの変更
支払いが必要な変更は、別表第二の一〜九号に並んでいます。どれも「契約書面に記載したもの」の変更に限られます。
| 号 | 変更の内容 | 旅行開始前 | 旅行開始後 |
|---|---|---|---|
| 一 | 旅行開始日・旅行終了日の変更 | 1.5% | 3.0% |
| 二 | 入場する観光地・観光施設(レストランを含む)など目的地の変更 | 1.0% | 2.0% |
| 三 | 運送機関の等級・設備の、より低い料金のものへの変更 | 1.0% | 2.0% |
| 四 | 運送機関の種類・会社名の変更 | 1.0% | 2.0% |
| 五 | 本邦内の旅行開始地・終了地の空港が異なる便への変更 | 1.0% | 2.0% |
| 六 | 本邦内と本邦外を結ぶ直行便が、乗継便・経由便に変わること | 1.0% | 2.0% |
| 七 | 宿泊機関の種類・名称の変更 | 1.0% | 2.0% |
| 八 | 宿泊機関の客室の種類・設備・景観などの条件の変更 | 1.0% | 2.0% |
| 九 | 一〜八号の変更のうち、ツアー・タイトルに記載のあった事項の変更 | 2.5% | 5.0% |
率は、どの行も旅行開始後が開始前のちょうど2倍です。覚えるのは「1.5・1.0・2.5」の3つだけで、あとは2倍にすれば済みます。
国内旅行は本邦内だけの旅行なので、本邦外との直行便を扱う六号は使いません。国内ツアーの問題では、一〜五号(空港が異なる便への変更を含む)と七〜九号を中心に判定します。
「低い料金へ」の限定がつくのは三号だけ
格上げのときの扱いは、運送機関と宿泊機関で違います。
- 運送機関の等級・設備(三号): 変更後の料金の合計額が契約書面より下がる場合に限って対象。グリーン車が普通車になれば対象ですが、普通車がグリーン車になっても対象外です
- 運送機関の会社名(四号): 等級や設備が高いものへの変更を伴うときは適用しません(注四)
- 宿泊機関の名称(七号)・客室の条件(八号): 格上でも格下でも、変わったこと自体が対象です
つまり、ホテルが格上のホテルに変わっても、変更補償金の対象になります。ここは引っかけとして出題されやすい点です。
別表第二にない変更は支払わない
別表第二に載っていない事項が変わっても、変更補償金は出ません。たとえば、同じ日の中での集合時刻や出発時刻の変更、食事のメニューの変更は、九つのどれにも当たりません。契約書面に書かれていなかった事項の変更も対象外です。
紛らわしいのは日付と時刻です。旅行開始日や終了日が別の日に動けば一号ですが、同じ日の中で時刻が動くだけなら対象外です。
支払わない事由 — 29条1項1号・2号
別表第二の変更でも、次の変更は支払いの対象から除かれます。
1号(次の事由による変更)
- 天災地変、戦乱、暴動
- 官公署の命令
- 運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止
- 当初の運行計画によらない運送サービスの提供(列車の遅延や運休など)
- 旅行参加者の生命または身体の安全確保のため必要な措置
2号
- 16条から18条までの規定に基づいて契約が解除されたときの、その解除された部分に係る変更
例外 — 座席や部屋の不足(過剰予約)は支払う
1号の事由には、かっこ書きによる例外があります。運送・宿泊機関が旅行サービスの提供を行っているのに、座席・部屋その他の諸設備が足りなくなったことによる変更は、支払わない事由から除かれています。いわゆる過剰予約(予約の受けすぎ)です。
| 場面 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 大雪でホテルが休業し、別のホテルになった | 支払わない | 旅行サービス提供の中止(1号ホ) |
| ホテルは営業しているが部屋が足りず、別のホテルになった | 支払う | 設備の不足は除外されている(七号) |
| 豪雨で道路が通れず、観光施設を変えた | 支払わない | 天災地変(1号イ) |
| 列車の遅れで予定の観光施設に入れなかった | 支払わない | 当初の運行計画によらない運送サービス(1号ヘ) |
| 航空会社の座席が足りず、別の会社の便になった | 支払う | 座席の不足による会社名の変更(四号) |
| 集合時刻が30分早まっただけ | 支払わない | 別表第二にない |
いずれも、旅行会社に責任があることが明らかではない場合の判定です。
変更補償金の額 — 率・件数・開始前後
額は「旅行代金 × 1件あたりの率」を、変更1件ごとに計算して足したものです。約款は「率を乗じた額以上」の変更補償金を支払うと定めているので、別表第二の率は最低ラインです。
開始前か開始後かは、通知した日で決まる
別表第二の注一により、旅行開始前とは、変更を旅行開始日の前日までに旅行者へ通知した場合です。旅行開始後とは、旅行開始当日以降に通知した場合です。変更が実際にいつ起きたかではなく、旅行会社が通知した日で判定します。
件数の数え方
件数の決まりは別表第二の注にあります。
- 確定書面が交付された場合は、「契約書面」を「確定書面」と読み替える。契約書面から確定書面への変更と、確定書面から実際のサービスへの変更は、それぞれ1件(注二)
- 運送機関が宿泊設備の利用を伴うもの(寝台列車やフェリーなど)の三号・四号の変更は、1泊につき1件(注三)
- 四号・七号・八号の変更が、1回の乗車船等や1泊の中で複数起きても、1回の乗車船等または1泊につき1件(注五)
- 九号(ツアー・タイトルの事項)の変更には、一〜八号の率は使わず、九号の率だけを使う(注六)
「同じ1泊の中の宿の名称と客室の変更」は1件、「1泊目と2泊目の両方で宿が変わる」と2件です。契約書面を基準に考える点は、同じ約款の別表を使う取消料の計算の記事と共通です。
上限と最低額、支払時期
29条2項と1項は、次のように定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上限 | 旅行者1名、1つの募集型企画旅行につき、旅行代金に15%以上で旅行会社が定める率を乗じた額 |
| 最低額 | 旅行者1名、1つの旅行につき支払うべき額が1,000円未満なら、支払わない |
| 支払時期 | 旅行終了日の翌日から起算して30日以内 |
1,000円の判定は、1件ごとではなく、旅行全体の合計額で行います。支払時期は、旅行終了日の翌日を1日目と数えます。
計算練習 — 3つの例題
金額は、この記事のために作った例です。
例題1 — 1,000円に届かない 旅行代金が40,000円のツアーで、出発の3日前に「宿泊機関の名称の変更(七号)」と「入場する観光施設の変更(二号)」が通知されました。旅行開始前の率で、どちらも1.0%です。40,000円 × 1.0% = 400円が2件で、合計800円。1,000円未満なので、支払われません。
例題2 — 通知が当日だと支払われる 同じ変更が出発当日に通知されたとします。旅行開始後の率になり、どちらも2.0%です。40,000円 × 2.0% = 800円が2件で、合計1,600円。1,000円以上なので、1,600円が支払われます。
例題3 — 上限で打ち切る 旅行代金が30,000円で、出発当日に、ツアー・タイトルに書かれたホテルが2泊とも変わり、さらに目的地が2か所変わると通知されました。件数はホテルが2件、観光施設が2件の4件です。ホテルは九号の5.0%、目的地は二号の2.0%なので、率の合計は5.0 × 2 + 2.0 × 2 = 14.0%。30,000円 × 14.0% = 4,200円です。上限の率が15%の会社なら、上限は4,500円なので、この例では上限に届かず、4,200円が支払われます。
責任が分かったときは、返して相殺する
変更補償金を支払った後で、その変更が旅行会社の責任(27条1項)によるものだと明らかになることがあります。このときは、旅行者が変更補償金を旅行会社に返還し、旅行会社は支払うべき損害賠償金の額と返還される額を相殺して、残額を支払います(29条3項)。
たとえば、変更補償金4,200円を受け取った後に、旅行会社の予約ミスと分かり、損害賠償の額が20,000円とされたなら、差し引きの15,800円を旅行会社が支払います。
試験での問われ方と覚え方
- 判定は「別表第二にあるか → 支払わない事由か → 過剰予約か」の順で考える
- 率は「1.5・1.0・2.5」で、開始後はその2倍
- 「開始前・開始後」は通知日で決まる。前日までなら開始前
- 「低い料金へ」の限定は三号(運送機関の等級・設備)だけ
- 上限は15%以上、最低額は合計で1,000円未満なら不支給、支払いは終了日の翌日から30日以内
国内旅行業務取扱管理者講座では、約款の各条文を授業で順に学び、トーレスに質問しながら確認問題で定着させられます。講座ページで授業の一覧と内容を確認できます。
まとめ
旅程保証は、別表第二の9つの変更が起きたときに、旅行会社が変更補償金を支払う制度です。天災地変やサービス提供の中止などは支払わない一方、座席や部屋の不足(過剰予約)は支払います。率は開始前と開始後で2倍違い、通知した日で区別します。上限は旅行代金の15%以上、合計1,000円未満なら不支給、支払いは旅行終了日の翌日から30日以内です。
この順番で条文を読めば、事例の判定も計算も手順どおりに進められます。約款は毎年改正されることがあるため、受験する年度の基準日時点の約款を、観光庁の公式サイトで必ず確認してください。

