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論点解説

旅程保証とは? 変更補償金を支払う変更・支払わない変更を約款29条で整理

募集型企画旅行の旅程保証(標準旅行業約款29条)で、変更補償金が必要な9つの変更、支払わない事由と過剰予約の例外、率・上限・1,000円未満の扱い、支払時期を例題つきで整理します。

トーレス先生
トーレス

募集型企画旅行の旅程保証(標準旅行業約款29条)で、変更補償金が必要な9つの変更、支払わない事由と過剰予約の例外、率・上限・1,000円未満の扱い、支払時期を例題つきで整理します。

この記事の要点

  • 旅程保証は、契約書面に書いた内容が別表第二の9つの変更に当たるときに、旅行会社が変更補償金を支払う制度
  • 天災地変・サービス提供の中止・運行計画によらない運送などは支払わない。ただし座席や部屋の不足(過剰予約)は支払う
  • 率は1件ごとに、旅行開始前は1.0〜2.5%、開始後は2.0〜5.0%。通知した日が旅行開始日の前日までかどうかで決まる
  • 上限は旅行代金の15%以上で会社が定める率。合計が1,000円未満なら支払わず、支払時期は旅行終了日の翌日から30日以内
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国内旅行業務取扱管理者試験の約款では、「この変更で変更補償金は支払われるか。いくらか」という問題が定番です。ホテルが変わった、飛行機の会社が変わった、集合時刻が早まった。どれが支払い対象で、どれが対象外なのかを、条文の順番に沿って整理します。

約款の内容は、観光庁が公表している標準旅行業約款(令和8年3月9日改正、同年4月1日適用)の募集型企画旅行契約の部を2026年10月16日に確認したものです。試験では、その年度に定められた基準日時点の約款が問われます。最新の内容は観光庁の公式サイトでご確認ください。

旅程保証とは — 重要な変更に対する補償

旅程保証は、募集型企画旅行(旅行会社があらかじめ行程と代金を定めて売り出すツアー)で、契約内容の重要な部分が変わったとき、旅行会社が旅行者へ変更補償金を支払う仕組みです。標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部29条1項と、別表第二が定めています。

ここで大切なのは、旅行会社に落ち度があるかどうかを問わない点です。ミスがなくても、別表第二に載っている変更が起きれば、原則として支払います。逆に、旅行会社のミスで変更が起きたことが明らかな場合は、変更補償金ではなく、27条1項の損害賠償の問題として扱います(29条1項ただし書)。

判定は、次の3段で進めると迷いません。

  1. 起きた変更が、別表第二の9つのどれかに当たるか(当たらなければ支払わない)
  2. 29条1項の1号・2号の「支払わない事由」に当たるか(当たれば支払わない)
  3. 座席や部屋の不足による変更ではないか(不足によるものなら、支払わない事由から除かれ、支払う)

別表第二の9つの変更

支払いが必要な変更は、別表第二の一〜九号に並んでいます。どれも「契約書面に記載したもの」の変更に限られます。

号 変更の内容 旅行開始前 旅行開始後
一 旅行開始日・旅行終了日の変更 1.5% 3.0%
二 入場する観光地・観光施設(レストランを含む)など目的地の変更 1.0% 2.0%
三 運送機関の等級・設備の、より低い料金のものへの変更 1.0% 2.0%
四 運送機関の種類・会社名の変更 1.0% 2.0%
五 本邦内の旅行開始地・終了地の空港が異なる便への変更 1.0% 2.0%
六 本邦内と本邦外を結ぶ直行便が、乗継便・経由便に変わること 1.0% 2.0%
七 宿泊機関の種類・名称の変更 1.0% 2.0%
八 宿泊機関の客室の種類・設備・景観などの条件の変更 1.0% 2.0%
九 一〜八号の変更のうち、ツアー・タイトルに記載のあった事項の変更 2.5% 5.0%

率は、どの行も旅行開始後が開始前のちょうど2倍です。覚えるのは「1.5・1.0・2.5」の3つだけで、あとは2倍にすれば済みます。

国内旅行は本邦内だけの旅行なので、本邦外との直行便を扱う六号は使いません。国内ツアーの問題では、一〜五号(空港が異なる便への変更を含む)と七〜九号を中心に判定します。

「低い料金へ」の限定がつくのは三号だけ

格上げのときの扱いは、運送機関と宿泊機関で違います。

  • 運送機関の等級・設備(三号): 変更後の料金の合計額が契約書面より下がる場合に限って対象。グリーン車が普通車になれば対象ですが、普通車がグリーン車になっても対象外です
  • 運送機関の会社名(四号): 等級や設備が高いものへの変更を伴うときは適用しません(注四)
  • 宿泊機関の名称(七号)・客室の条件(八号): 格上でも格下でも、変わったこと自体が対象です

つまり、ホテルが格上のホテルに変わっても、変更補償金の対象になります。ここは引っかけとして出題されやすい点です。

別表第二にない変更は支払わない

別表第二に載っていない事項が変わっても、変更補償金は出ません。たとえば、同じ日の中での集合時刻や出発時刻の変更、食事のメニューの変更は、九つのどれにも当たりません。契約書面に書かれていなかった事項の変更も対象外です。

紛らわしいのは日付と時刻です。旅行開始日や終了日が別の日に動けば一号ですが、同じ日の中で時刻が動くだけなら対象外です。

支払わない事由 — 29条1項1号・2号

別表第二の変更でも、次の変更は支払いの対象から除かれます。

1号(次の事由による変更)

  • 天災地変、戦乱、暴動
  • 官公署の命令
  • 運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止
  • 当初の運行計画によらない運送サービスの提供(列車の遅延や運休など)
  • 旅行参加者の生命または身体の安全確保のため必要な措置

2号

  • 16条から18条までの規定に基づいて契約が解除されたときの、その解除された部分に係る変更

例外 — 座席や部屋の不足(過剰予約)は支払う

1号の事由には、かっこ書きによる例外があります。運送・宿泊機関が旅行サービスの提供を行っているのに、座席・部屋その他の諸設備が足りなくなったことによる変更は、支払わない事由から除かれています。いわゆる過剰予約(予約の受けすぎ)です。

場面 判定 理由
大雪でホテルが休業し、別のホテルになった 支払わない 旅行サービス提供の中止(1号ホ)
ホテルは営業しているが部屋が足りず、別のホテルになった 支払う 設備の不足は除外されている(七号)
豪雨で道路が通れず、観光施設を変えた 支払わない 天災地変(1号イ)
列車の遅れで予定の観光施設に入れなかった 支払わない 当初の運行計画によらない運送サービス(1号ヘ)
航空会社の座席が足りず、別の会社の便になった 支払う 座席の不足による会社名の変更(四号)
集合時刻が30分早まっただけ 支払わない 別表第二にない

いずれも、旅行会社に責任があることが明らかではない場合の判定です。

変更補償金の額 — 率・件数・開始前後

額は「旅行代金 × 1件あたりの率」を、変更1件ごとに計算して足したものです。約款は「率を乗じた額以上」の変更補償金を支払うと定めているので、別表第二の率は最低ラインです。

開始前か開始後かは、通知した日で決まる

別表第二の注一により、旅行開始前とは、変更を旅行開始日の前日までに旅行者へ通知した場合です。旅行開始後とは、旅行開始当日以降に通知した場合です。変更が実際にいつ起きたかではなく、旅行会社が通知した日で判定します。

件数の数え方

件数の決まりは別表第二の注にあります。

  • 確定書面が交付された場合は、「契約書面」を「確定書面」と読み替える。契約書面から確定書面への変更と、確定書面から実際のサービスへの変更は、それぞれ1件(注二)
  • 運送機関が宿泊設備の利用を伴うもの(寝台列車やフェリーなど)の三号・四号の変更は、1泊につき1件(注三)
  • 四号・七号・八号の変更が、1回の乗車船等や1泊の中で複数起きても、1回の乗車船等または1泊につき1件(注五)
  • 九号(ツアー・タイトルの事項)の変更には、一〜八号の率は使わず、九号の率だけを使う(注六)

「同じ1泊の中の宿の名称と客室の変更」は1件、「1泊目と2泊目の両方で宿が変わる」と2件です。契約書面を基準に考える点は、同じ約款の別表を使う取消料の計算の記事と共通です。

上限と最低額、支払時期

29条2項と1項は、次のように定めています。

項目 内容
上限 旅行者1名、1つの募集型企画旅行につき、旅行代金に15%以上で旅行会社が定める率を乗じた額
最低額 旅行者1名、1つの旅行につき支払うべき額が1,000円未満なら、支払わない
支払時期 旅行終了日の翌日から起算して30日以内

1,000円の判定は、1件ごとではなく、旅行全体の合計額で行います。支払時期は、旅行終了日の翌日を1日目と数えます。

計算練習 — 3つの例題

金額は、この記事のために作った例です。

例題1 — 1,000円に届かない 旅行代金が40,000円のツアーで、出発の3日前に「宿泊機関の名称の変更(七号)」と「入場する観光施設の変更(二号)」が通知されました。旅行開始前の率で、どちらも1.0%です。40,000円 × 1.0% = 400円が2件で、合計800円。1,000円未満なので、支払われません。

例題2 — 通知が当日だと支払われる 同じ変更が出発当日に通知されたとします。旅行開始後の率になり、どちらも2.0%です。40,000円 × 2.0% = 800円が2件で、合計1,600円。1,000円以上なので、1,600円が支払われます。

例題3 — 上限で打ち切る 旅行代金が30,000円で、出発当日に、ツアー・タイトルに書かれたホテルが2泊とも変わり、さらに目的地が2か所変わると通知されました。件数はホテルが2件、観光施設が2件の4件です。ホテルは九号の5.0%、目的地は二号の2.0%なので、率の合計は5.0 × 2 + 2.0 × 2 = 14.0%。30,000円 × 14.0% = 4,200円です。上限の率が15%の会社なら、上限は4,500円なので、この例では上限に届かず、4,200円が支払われます。

責任が分かったときは、返して相殺する

変更補償金を支払った後で、その変更が旅行会社の責任(27条1項)によるものだと明らかになることがあります。このときは、旅行者が変更補償金を旅行会社に返還し、旅行会社は支払うべき損害賠償金の額と返還される額を相殺して、残額を支払います(29条3項)。

たとえば、変更補償金4,200円を受け取った後に、旅行会社の予約ミスと分かり、損害賠償の額が20,000円とされたなら、差し引きの15,800円を旅行会社が支払います。

試験での問われ方と覚え方

  • 判定は「別表第二にあるか → 支払わない事由か → 過剰予約か」の順で考える
  • 率は「1.5・1.0・2.5」で、開始後はその2倍
  • 「開始前・開始後」は通知日で決まる。前日までなら開始前
  • 「低い料金へ」の限定は三号(運送機関の等級・設備)だけ
  • 上限は15%以上、最低額は合計で1,000円未満なら不支給、支払いは終了日の翌日から30日以内

国内旅行業務取扱管理者講座では、約款の各条文を授業で順に学び、トーレスに質問しながら確認問題で定着させられます。講座ページで授業の一覧と内容を確認できます。

まとめ

旅程保証は、別表第二の9つの変更が起きたときに、旅行会社が変更補償金を支払う制度です。天災地変やサービス提供の中止などは支払わない一方、座席や部屋の不足(過剰予約)は支払います。率は開始前と開始後で2倍違い、通知した日で区別します。上限は旅行代金の15%以上、合計1,000円未満なら不支給、支払いは旅行終了日の翌日から30日以内です。

この順番で条文を読めば、事例の判定も計算も手順どおりに進められます。約款は毎年改正されることがあるため、受験する年度の基準日時点の約款を、観光庁の公式サイトで必ず確認してください。

参考にした情報

記事の内容は、記載の日付時点で確認した情報にもとづいています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。内容に誤りを見つけた場合は、お問い合わせからお知らせください。確認のうえ修正します。

2026年10月16日約10分で読めます
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