不動産を担保にお金を借りるとき、使われるのが抵当権です。事業者が銀行と継続して取引をするときには、根抵当権が使われます。行政書士試験の民法では、この2つの違いが、担保物権の分野で繰り返し問われます。
結論から言うと、抵当権は「ある特定の債権」を担保し、根抵当権は「一定の範囲の、増えたり減ったりする債権」をまとめて、極度額(上限の金額)まで担保します。この記事では、条文を確かめながら、違いを表で整理します。
この記事は、2026年10月31日に e-Gov 法令検索で確認した条文(同日時点の現行法令)に基づきます。試験は、実施する年度の法令を基準に出題されます。受験する年度の試験案内(行政書士試験研究センター)で、出題の基準日を確認してください。判例の詳しい内容は、裁判所の判例検索や教材で原典を確かめてください。
抵当権とは? 根抵当権とは?
まず、それぞれの定義を条文で確かめます。
どちらも、担保にした不動産を、持ち主が使い続けられる点は同じです(占有を移転しない)。根抵当権は、抵当権の一種です。398条の2は「抵当権は…不特定の債権を…担保するためにも設定することができる」と書き、その抵当権を「根抵当権」と呼んでいます。
たとえで考える
- 抵当権:「今日借りた1,000万円」の返済を担保する
- 根抵当権:「この会社との取引で、これから生じる債権」を、たとえば5,000万円までまとめて担保する
商店が仕入れ先と毎月取引をする場合、そのたびに抵当権を設定していては手間がかかります。そこで、取引の範囲を決めて、上限の金額までまとめて担保するのが根抵当権です。
抵当権と根抵当権の違いを表で整理
抵当権では、債権と抵当権が一体として動きます。根抵当権は、元本が確定するまでは、債権から切り離されて動きます。この違いが、表の下の方の論点(債権の譲渡・処分・相続)の出題につながります。
付従性と随伴性:なぜ根抵当権は別扱いなのか
抵当権は、担保する債権があってこそ成り立ちます。債権が弁済で消えれば、抵当権も消えます。これを付従性といいます。また、債権が他人に移れば、抵当権も一緒に移ります。これを随伴性といいます。
ところが、根抵当権は、取引のたびに債権が生まれたり消えたりします。ある債権が弁済で消えるたびに根抵当権まで消えてしまっては、継続的な取引の担保になりません。そのため、根抵当権は、元本が確定するまで、付従性・随伴性が緩められています。
債権を譲り受けても、根抵当権は付いてきません。もとの根抵当権は、根抵当権者のもとに残り、その後に生じる債権を担保し続けます。
極度額と利息:担保の上限のちがい
抵当権の利息は「最後の2年分」まで
抵当権者は、利息などの定期金を請求できるとき、満期となった最後の2年分についてだけ、抵当権を行使できます(375条1項)。債務不履行による損害賠償も、最後の2年分で、利息と合わせて2年分を超えられません(375条2項)。後順位の抵当権者などの利益を守るための制限です。
ただし、それ以前の分も、満期後に特別の登記をすれば、その登記の時から行使できます(375条1項ただし書)。
根抵当権は「極度額まで全部」
根抵当権者は、確定した元本と、利息・定期金・債務不履行による損害賠償の全部について、極度額を限度として、根抵当権を行使できます(398条の3第1項)。「2年分」の制限はありません。その代わり、極度額という天井があります。
「根抵当権は利息が2年分に限られる」とあれば誤りです。2年分の制限は、抵当権(375条)の話です。
元本の確定:根抵当権だけにある重要論点
根抵当権には、担保される元本が固定される元本の確定という手続があります。確定すると、それ以降に生じた新しい債権は担保されなくなります。確定した後の根抵当権は、抵当権に近い扱いになります。
確定の方法
確定期日の定めがあるときは、確定請求の規定は適用されません(398条の19第3項)。
確定事由(398条の20)
次のような場合に、元本は確定します(398条の20第1項)。
- 根抵当権者が、抵当不動産について競売などを申し立てて、手続が開始されたとき
- 根抵当権者が、抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき
- 競売手続の開始や滞納処分による差押えがあったことを知ってから2週間を経過したとき
- 債務者または根抵当権設定者が、破産手続開始の決定を受けたとき
数字は試験で狙われます。「設定から3年・確定請求から2週間」「確定期日は5年以内」「差押えを知ってから2週間」を、セットで覚えておきましょう。
根抵当権の特有の論点
債権の範囲・債務者・極度額の変更
根抵当権者・債務者に相続や合併があったとき
元本の確定前に、根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と設定者の合意で定めた相続人が、相続の開始後に取得する債権を担保します(398条の8第1項)。この合意について、相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(398条の8第4項)。
合併の場合は、合併後の法人が取得する債権も担保されます(398条の9第1項)。ただし、根抵当権設定者は、元本の確定を請求できます(398条の9第3項)。この請求は、設定者が合併を知った日から2週間、または合併の日から1か月を過ぎると、できなくなります(398条の9第5項)。
譲渡と処分
根抵当権は、抵当権と違い、元本の確定前に設定者の承諾があって初めて譲渡できます。
確定後の対応:減額請求と消滅請求
元本が確定した後は、設定者を守る制度があります。
- 極度額の減額請求:元本の確定後、設定者は、極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息などの額を加えた額に減額するよう請求できます(398条の21第1項)
- 根抵当権の消滅請求:元本の確定後、現に存する債務の額が極度額を超えるとき、他人の債務を担保するために根抵当権を設定した者や、抵当不動産について所有権などを取得した第三者は、極度額に相当する金額を払い渡すか供託して、根抵当権の消滅を請求できます(398条の22第1項)
抵当権に共通する論点も確認しておく
根抵当権は抵当権の一種です。そのため、次の論点は、根抵当権でも基本的に同じです。
試験での問われ方と解き方
条文の知識を問う問題
次の点を、先に頭の中で確認します。
- 問われているのは「抵当権」か「根抵当権」か
- 根抵当権なら、「元本の確定前」か「確定後」か
- 数字(2年・3年・5年・2週間・6か月)はどれの話か
肢を切る手順
- 「根抵当権は、元本の確定前でも、債権を譲り受けた人が根抵当権を使える」→誤り(398条の7第1項)
- 「抵当権者は、利息について、最後の2年分に限らず全部を請求できる」→誤り(375条)
- 「根抵当権の極度額の変更は、後順位の抵当権者の承諾なしにできる」→誤り(利害関係を有する者の承諾が必要。398条の5)
- 「根抵当権の債権の範囲の変更は、後順位の抵当権者の承諾が必要」→誤り(不要。398条の4第2項)
「債権の範囲の変更は承諾不要」「極度額の変更は承諾必要」の対比は、定番の引っかけです。講座で全体像から学びたい人は、行政書士講座のカリキュラムで、民法の授業の構成を確認できます。
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担保物権は、対抗要件の考え方ともつながっています。不動産の二重譲渡と民法177条の記事で、登記の役割を確かめると、抵当権の順位(373条)の理解が進みます。
よくある質問
Q. 根抵当権は、抵当権とは別の権利ですか。
いいえ。根抵当権は、抵当権の一種です。398条の2は、不特定の債権を極度額の限度で担保する抵当権を「根抵当権」と呼んでいます。
Q. 根抵当権の元本は、いつ確定しますか。
確定期日の到来、確定請求(設定者は設定から3年経過後、根抵当権者はいつでも)、または398条の20の確定事由(競売の開始、破産手続開始の決定など)で確定します。
Q. 極度額は、利息を含んだ金額ですか。
はい。根抵当権者は、元本・利息・損害賠償の全部について、極度額を限度に行使できます(398条の3第1項)。
まとめ
- 抵当権は特定の債権を担保し、根抵当権は一定の範囲の不特定の債権を極度額まで担保する(398条の2)
- 根抵当権は、元本の確定前は、債権の譲渡や弁済代位があっても、根抵当権は付いていかない(398条の7)
- 利息は、抵当権は最後の2年分まで(375条)、根抵当権は極度額まで全部(398条の3)
- 元本の確定は根抵当権特有の論点。「3年・2週間」「5年以内」「6か月」など、数字をセットで覚える
「抵当権か根抵当権か」「元本の確定前か後か」を最初に確認する習慣をつけると、肢の判断が速くなります。