旅券(パスポート)の発給申請は、総合旅行業務取扱管理者試験の海外旅行実務で、出入国の法令の一部として問われる分野です。「戸籍謄本はいつまでのものか」「保険証だけで本人確認できるか」「誰が代わりに出せるか」といった、条文の細かい決まりを正誤で判断させる形になりやすい論点です。
この記事では、旅券法と旅券法施行規則の条文を2026年10月21日に確認し、申請で出すもの、本人確認書類、代理提出、署名、受け取りの順に整理します。条文の改正で変わりうる部分もあるため、申請の実務は外務省や各都道府県の案内で最新を確認してください。
旅券の発給申請で出す書類は何か
結論から言うと、書面で申請するときの基本の書類は、一般旅券発給申請書・戸籍謄本・写真の3つです。根拠は旅券法3条1項で、渡航先の官憲が発給した入国許可証などが必要な人は、その書類も付けます。
| 書類 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般旅券発給申請書 | 18歳未満や5年用の申請では様式が別になる | 施行規則3条1項 |
| 戸籍謄本 | 提出の日前6か月以内に作成されたもの1通 | 旅券法3条1項2号、施行規則4条1項 |
| 写真 | 施行規則の別表第一の要件を満たすもの。書面なら1葉 | 施行規則3条5項 |
| 本人確認書類 | 次の章で説明する | 施行規則5条 |
| 住民票の写し | 住民基本台帳ネットワークで確認できる場合は不要 | 施行規則5条1項・2項 |
ここで押さえたいのは、戸籍は「抄本」ではなく「謄本」で、「6か月以内に作成されたもの」という点です。期限の数え方が「申請の日」ではなく「提出の日」である点も、条文の言い回しとして覚えておくと選択肢の判断が楽になります。
なお、旅券の有効期間は、18歳以上なら10年、18歳未満なら5年です(旅券法5条1項)。申請の様式が年齢で分かれるのは、この有効期間の違いに対応しています。
戸籍謄本を出さなくてよいのはどんなときか
戸籍謄本は、一定の場合に提出を省略できます(旅券法3条2項、施行規則4条3項)。試験では、この省略の条件が正誤問題の材料になります。
| 省略できる場合 | 補足 |
|---|---|
| 有効な旅券を返納して申請するとき | 都道府県知事などが身分上の事実を確認するために特に必要と認めるときは、省略できない |
| 同じ戸籍の2人以上が同時に申請するとき | 1人が謄本を出せば、ほかの人は省略できる |
| 緊急に渡航する必要があるとき | 本籍入りの住民票の写し(提出日前6か月以内)で代える。謄本の提出が困難な場合に限る |
| 国外で、有効な国籍証明書または船員手帳を出すとき | 国外の申請の話 |
| 国外で、現在の旅券の有効期間が切れたあとに申請するとき | 期限内に更新できなかった、真にやむを得ない理由がある場合 |
省略が認められる場合は国内と国外で異なります。たとえば「期限が切れたあとの申請で謄本を省略できる」のは国外の場合の規定で、国内の申請には当てはまりません。選択肢に「国内外を問わず」といった言葉があれば、いったん疑って条文を思い出すとよいでしょう。
戸籍謄本の出し方は、手続と場所で変わる
申請には、書面で行う「書面手続」と、オンラインで行う「電子手続」があります(施行規則1条)。戸籍謄本の出し方は、この手続の違いと、国内か国外かで次のように分かれます。
| 国内 | 国外 | |
|---|---|---|
| 書面手続 | 戸籍謄本を提出する | 戸籍謄本の提出に代えて、戸籍電子証明書提供用識別符号を提供することもできる |
| 電子手続 | 識別符号を送信する | 識別符号の送信に代えて、領事館に出頭して戸籍謄本を出すことができる |
識別符号は、戸籍の電子的な証明書を役所の側で確認してもらうための番号です。国外の電子手続では、領事官が特に必要と認めるときに限り、書留郵便に準じた方法で謄本を送ることも認められています(施行規則4条2項)。「いつでも郵送でよい」ではなく、領事官が必要と認めたときだけ、という点がポイントです。
本人確認書類は「1点」か「2点」か
本人確認の書類は、国内で書面手続をするとき、施行規則5条1項で定められています。条文は、住民票の写しと、次のいずれかの書類を示す形です。ただし住民基本台帳ネットワークで確認できる場合などは、住民票の写しは不要になります(同条2項)。
1点でよい書類は、写真付きの公的な書類です。
- 日本国旅券(有効なもの)
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
- 官公庁が発行した免許証・許可証・資格証明書など(別表第二に掲げるもの。運転免許証など)
- 官公庁(独立行政法人や特殊法人などを含む)が職員に発行した、写真付きの身分証明書
マイナンバーの「通知カード」は、条文にある「個人番号カード」に当たりません。写真付きでない通知カードを1点で使える書類と取り違えないように注意します。
1点の書類がやむを得ず出せないときは、次のイとロを組み合わせます。
| 群 | 主な書類 | 写真 |
|---|---|---|
| イ(A群) | 健康保険などの資格確認書、介護保険の被保険者証、国民年金手帳、年金証書、印鑑登録証明書と実印 など | 不要 |
| ロ(B群) | 学生証、会社の身分証明書、公の機関が発行した資格証明書で、写真を貼り付けたもの など | 必要 |
組合せは「イから1点とロから1点」です。ロの書類が出せないときは、「イから2点」でも認められます。これに対し、ロだけを2点出す組合せは条文にありません。写真付きの学生証と会社の身分証明書を1点ずつ出しても、組合せとしては足りない、という判定になります。
健康保険などの書類は、2024年12月2日施行の施行規則の改正で、条文上の名称が「資格確認書」になりました。その改正の附則では、施行日前に交付された被保険者証が有効な間の経過措置も置かれています。試験の年度によって表現が違うことがあるので、どの時点の法令が出題の基準かは、受験案内で確認してください。
代理提出:誰が、どんな条件で出せるか
旅券の申請書類は、本人が窓口に出向かなくても、別の人を通じて提出できます(旅券法3条6項)。
| 提出する人 | 委任申出書 |
|---|---|
| 申請者の法定代理人(未成年者の親権者など) | 不要(施行規則7条1項ただし書) |
| 申請者の配偶者、2親等内の親族 | 申請書類等提出委任申出書が必要 |
| 申請者が指定した人 | 同じく必要。ただし、申請前5年以内に旅券の発給で不正な行為をした人は指定できない |
委任申出書は、あらかじめ、または申請と同時に出します。代わりに出頭した人が、配偶者や2親等内の親族などに当たるかどうかは、その人自身の本人確認書類(施行規則5条1項各号の書類)で確認されます。
さらに、代わりに出頭する人には条件があります。申請の内容を知っていて、窓口の指示を申請者に確実に伝えられる能力があることです(施行規則7条3項)。2親等内の親族は、親・子・きょうだい・祖父母・孫までと考えます。叔父・叔母や従兄弟姉妹は3親等以上なので、親族であっても「2親等内の親族」にはなりません。
電子手続の場合は、さらに範囲がしぼられます。代理提出ができるのは、申請者が未成年者または成年被後見人で、国内でその法定代理人を通じて申請するときに限られます(施行規則7条4項)。電子手続なら誰でも代わりに申請できる、という書き方は誤りです。
署名は本人、難しい人は「記名」で代える
旅券の署名は、原則として本人がします(旅券法15条)。書面手続なら申請書の所定の場所に署名し、電子手続なら自署の画像を送ります(施行規則14条1項)。
署名が困難な人には、署名に代えて記名が認められます。対象は、病気やけがで署名できない人、乳児・幼児など署名する能力のない人、その他都道府県知事などが署名困難と認めた人です(同条2項)。
記名をする人には、施行規則14条3項で順位があります。
先頭は法定代理人で、次が配偶者です。その次が渡航に同行する予定の人で、最後に、知事・外務大臣・領事官が「代わりに記名するのが適当」と認めた人が来ます。
記名は、記名する人が申請者の氏名を自分で書き、自分が書いたことを明らかにして行います(同条4項)。順位があるため、「同行予定の人は誰でも先に記名できる」といった選択肢は誤りです。
旅券の受け取りは、原則として本人が出頭する
申請の書類は代理で出せても、交付(受け取り)は原則として申請者本人が出頭して受けます(旅券法8条1項)。ただし、病気、身体の障害、交通至難の事情など、真にやむを得ない理由で出頭が困難と認められ、かつ本人であることが明らかなときは、出頭を求めずに、本人が確実に受け取れる適切な方法で交付できます(同条3項)。
「申請を代理人が行ったのだから、受け取りも代理人でよい」とする選択肢は、典型的なひっかけです。申請の代理提出と、交付時の本人出頭は別のルールだと整理します。
試験での問われ方と覚え方
条文の細かい決まりは、次の3つの軸で整理すると、正誤の判断が速くなります。
- 期間・数の表現: 戸籍謄本は提出日前6か月以内に作成されたもの1通。5年以内の不正は代理人に指定できない
- 誰が: 法定代理人は委任申出書が不要、配偶者・2親等内の親族・指定者は必要。記名の順位は法定代理人が最初
- 国内か国外か: 戸籍謄本の省略や出し方は、国内と国外で異なる
国内旅行業務取扱管理者の合格者は、旅行業法令と国内旅行実務が免除になり、約款と海外旅行実務の2科目を受けます(免除のしくみは科目免除と科目合格の記事にまとめています)。海外旅行実務は200点で、旅券・査証・出入国手続といった法令の分野は、運賃計算などと並ぶ得点源です。
資格のエアポートの講座で学ぶには
総合旅行業務取扱管理者講座の海外旅行実務の授業では、旅券の発給申請を取り上げています。書類・本人確認・代理提出・署名・受け取りの流れを、順に確かめられます。講座の内容や料金は、講座ページで確認できます。試験の全体像は総合旅行業務取扱管理者試験とはにまとめています。
まとめ
- 書面申請の基本は、申請書・戸籍謄本(提出日前6か月以内に作成された1通)・写真。有効期間は18歳以上10年、18歳未満5年
- 戸籍謄本は、旅券の返納を伴う申請や、同じ戸籍の人が同時に申請する場合などに省略できる。国外だけの省略もある
- 本人確認は、写真付きの公的書類1点か、イ(A群)とロ(B群)の1点ずつ。ロがなければイ2点でもよい
- 申請書類は配偶者・2親等内の親族・指定者も代理で出せる(委任申出書が必要)が、受け取りは原則として本人が出頭する
- 署名が困難な人は記名で代え、記名する人の順位は法定代理人、配偶者、同行予定の人、認められた人の順
よくある質問
Q. 健康保険証だけで本人確認はできますか。
資格確認書などイ(A群)の書類は、1点だけでは足りません。ロ(B群)の写真付きの書類との組合せか、イ(A群)の書類を2点出す必要があります。
Q. 戸籍謄本はコピーでもよいですか。
条文は「提出の日前六月以内に作成されたもの一通」としており、コピーを認める規定は書かれていません。窓口の運用は、申請先の都道府県の案内で確認してください。
Q. 旅券は代理人に受け取ってもらえますか。
原則として申請者本人の出頭が必要です。病気や身体の障害など、真にやむを得ない理由があり、本人であることが明らかな場合に限って、出頭を求めずに交付する例外があります。
Q. 18歳未満の人の旅券の有効期間は何年ですか。
5年です(旅券法5条1項ただし書)。18歳以上は10年になります。

