貸金業務取扱主任者試験の法令を学び始めると、早い段階で「年20%・18%・15%」という数字に出会います。利息制限法の上限金利です。数字そのものは覚えやすいのですが、「どの元本のときにどの利率か」「超えたらどうなるのか」で取り違えが起きやすい論点です。この記事では、条文を確かめながら、上限の3区分と周辺のルールを順に整理します。
条文は2026年10月9日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験では出題年度の4月1日時点の法令が基準になりますので、受験する年度の案内もあわせて確認してください。
結論:上限は「元本の額」で3段階に分かれる
利息制限法1条は、お金の貸し借り(金銭を目的とする消費貸借)の利息について、上限の利率を元本の額に応じて定めています。上限を超える部分は無効です。
| 元本の額 | 上限の利率 | 条文 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 年20% | 1条1号 |
| 10万円以上100万円未満 | 年18% | 1条2号 |
| 100万円以上 | 年15% | 1条3号 |
元本が大きくなるほど、上限の利率は低くなります。10万円と100万円がそれぞれの境目です。「10万円ちょうど」は18%側、「100万円ちょうど」は15%側に入る点に注意します(条文は「10万円以上」「100万円以上」と書かれています)。
覚え方としては、「小口ほど高い利率が許される」と考えると整理しやすくなります。小さな金額を貸す側は手間の割に利息が少なく、リスクも相対的に高いため、上限を高めに置いている、という説明がされることがあります。試験で聞かれるのは、この理屈ではなく、数字と境目です。
1年分の利息はいくらまでか
上限を金額に直してみます。次の例は、この記事用に作った計算例です。
| 元本 | 区分 | 上限の利率 | 1年分の利息の上限 |
|---|---|---|---|
| 9万円 | 10万円未満 | 年20% | 1万8,000円 |
| 60万円 | 10万円以上100万円未満 | 年18% | 10万8,000円 |
| 150万円 | 100万円以上 | 年15% | 22万5,000円 |
計算は「元本×上限の利率」です。選択肢の数字が本当に上限以内かを確かめるときは、まず元本がどの区分に入るかを決め、そのあとで掛け算をします。区分を間違えたまま計算すると、必ず答えがずれます。
複数回に分けて借りたときの元本
「元本の額」が何を指すかにも特則があります。利息制限法5条は、同じ貸し手から営業的金銭消費貸借(業として行う貸付け)の借入れがすでにあるところへ新たに借りた場合や、同時に2件以上借りた場合に、それらを合計した額を元本とみなして上限を決める、と定めています。
たとえば、同じ業者から60万円の残高があるところへ、さらに50万円を借りたとします。新しい50万円だけを見れば年18%の区分ですが、合計110万円で区分を判断するため、年15%が上限になります。小さく分けて借りさせることで高い利率を適用する、という抜け道をふさぐ仕組みです。
上限を超えたら契約は丸ごと無効か
上限を超える利息の契約をした場合、無効になるのは「その超過部分」だけです。1条の条文も「その超過部分について、無効とする」と書かれています。
| 項目 | 上限を超える利息を約束したとき |
|---|---|
| 上限以内の利息 | 有効 |
| 上限を超える部分の利息 | 無効 |
| 元本を返す義務 | そのまま残る |
| 契約全体 | 丸ごと無効にはならない |
「上限を超えたら契約全体が無効になり、元本も返さなくてよい」という文は誤りです。試験では、このような極端な言い回しの選択肢が出されます。無効は超過部分に限られる、と覚えてください。
天引きの扱い:受領額が元本
利息を先に差し引いて貸す方法を天引きといいます。利息制限法2条は、天引額が「債務者の受領額を元本として前条に規定する利率により計算した金額」を超えるときは、その超過部分を元本の支払に充てたものとみなす、と定めています。
具体例です。契約書上の元本が20万円で、業者が利息として4万円を先に差し引き、手元には16万円が渡されたとします。
- 上限の計算に使う元本は、契約書の20万円ではなく、受け取った16万円です
- 16万円は10万円以上100万円未満の区分なので、上限は年18%です
- 1年分の上限は2万8,800円です
- 天引きした4万円のうち、上限を超える1万1,200円は、元本の支払に充てたものとみなされます
- 返すべき元本は、20万円から1万1,200円を引いた18万8,800円になります
ここで取り違えやすいのが、「超えた分は利息が減るだけ」という誤解です。超えた分は、利息が減るのではなく、返すべき元本そのものが減ります。
利息とみなされるお金:みなし利息
利息制限法3条は、名目にかかわらず、貸付けに関して債権者が受け取る元本以外のお金を利息とみなす、と定めています。「手数料」「調査料」などの名前をつけても、上限規制を逃れることはできません。契約の締結や弁済の費用などは例外として扱われます。どの費用がみなし利息に入り、どの費用が入らないかは別の論点として細かく問われますので、この記事では入口だけ触れておきます。
遅延損害金(賠償額の予定)の上限
返済が遅れたときの損害賠償をあらかじめ決めておくことを、賠償額の予定といいます。違約金という名前で契約に書かれていても、賠償額の予定とみなされます(4条2項)。
| 貸し手 | 賠償額の予定の上限 | 条文 |
|---|---|---|
| 業として行うものでない貸し借り | 1条の上限利率の1.46倍 | 4条1項 |
| 営業的金銭消費貸借(貸金業者など) | 年20% | 7条1項 |
貸金業者の貸付けでは、元本の額にかかわらず年20%が上限です。利息の上限が元本で3段階に分かれるのに対し、賠償額の予定は一律に年20%という違いがあります。
たとえば60万円を貸金業者から借りた場合、約定の利息は年18%まで、返済が遅れたときの賠償額の予定は年20%までです。
貸金業法12条の8:業者にはさらに禁止がある
ここまでは利息制限法の話で、無効になるという民事上の効果が中心でした。貸金業者には、貸金業法12条の8が追加でかかります。
| 項 | 禁止されること |
|---|---|
| 1項 | 利息制限法1条の上限を超える利息の契約を締結すること(みなし利息を含む) |
| 4項 | 利息制限法1条の上限を超える利息を受領し、またはその支払を要求すること |
契約すること、受け取ること、求めることのいずれも許されません。違反すると、監督上の処分の対象になります。
刑事罰の話は別の法律に出てきます。出資法5条2項は、業として貸付けを行う者が年20%を超える利息の契約をしたときの罰則を定めています。利息制限法・貸金業法・出資法の3つで、上限が二重三重に支えられているイメージです。出資法の詳細は、別の記事で改めて整理する予定です。
試験での問われ方と覚え方
出題では、次のような形で確認されやすい論点です。
- 元本の額ごとの上限利率を、数字とあわせて正しく選べるか
- 上限超過の効果が「超過部分のみ無効」であることを理解しているか
- 天引きの場合に、何を元本として上限を計算するか
- 賠償額の予定の上限(年20%と1.46倍)を貸し手の種類で使い分けられるか
- 貸金業法12条の8が、契約・受領・要求の3つを禁じていること
覚えるときは、次の順で整理するとぶれにくくなります。
- まず3区分の表(20%・18%・15%)を、境目の10万円・100万円とセットで書けるようにする
- 次に「超過部分だけ無効」を一文で言えるようにする
- 最後に天引き(受領額が元本)と賠償額の予定(年20%)を例で確認する
数字だけを暗記すると、境目の「以上」「未満」で足をすくわれます。区分を決めてから計算する、という手順を毎回守るのが近道です。
学習を進めるなら
利息制限法の上限は、貸金業法の総量規制や出資法、民法の利息の規定と並べて学ぶと、全体のつながりが見えやすくなります。総量規制については総量規制とは? 年収の3分の1のしくみで整理しています。講座の内容は貸金業務取扱主任者講座のページで確認できます。
まとめ
- 利息制限法1条の上限は、元本10万円未満が年20%、10万円以上100万円未満が年18%、100万円以上が年15%
- 上限を超えて無効になるのは超過部分だけで、元本を返す義務は残る
- 天引きは受領額を元本として上限を計算し、超えた分は元本の支払に充てたものとみなす(2条)
- 賠償額の予定の上限は、貸金業者の貸付けでは年20%(7条1項)、業として行うものでない場合は1条の利率の1.46倍(4条1項)
- 貸金業者は、貸金業法12条の8で上限超えの利息の契約・受領・要求が禁じられる

