総量規制では、年収の3分の1を超えて貸せる場面が条文に定められています。ところが「除外」と「例外」という似た名前の2つがあり、どちらがどちらか混ざってしまう人が少なくありません。この記事では、貸金業務取扱主任者試験の受験者に向けて、2つの違いを残高の数え方を軸に整理します。
総量規制そのものの基本は、先に公開した総量規制とは? 年収の3分の1のしくみで整理しています。条文は2026年10月8日にe-Gov法令検索で確認した現行の貸金業法と同施行規則に基づいています。試験では出題年度の4月1日時点の法令が基準になるため、受験する年度の案内もあわせて確かめてください。
結論:分かれ目は「残高を合算に入れるか」
先に結論です。どちらも3分の1を超えて結べる点は同じです。違いは、その貸付けの残高を、その後の判断で数えるかどうかです。
| 除外契約 | 例外契約 | |
|---|---|---|
| 条文 | 貸金業法13条の2第2項の「住宅資金貸付契約等」。中身は施行規則10条の21 | 同項の括弧書き「個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約」。中身は施行規則10条の23 |
| 総量規制との関係 | 枠の外に置かれる | 枠の中にある |
| 3分の1を超えて結べるか | 結べる | 要件を満たせば結べる |
| 残高の扱い | 個人顧客合算額に入れない | 個人顧客合算額に入れる |
「合算から外すのが除外契約、合算に入れたうえで超えても結べるのが例外契約」と覚えます。名前の「除外」は、数える対象から除く、と読むと整理しやすくなります。
条文の位置づけ:13条の2第2項の読み方
13条の2第2項は、個人過剰貸付契約を次のように定めています。要点だけを取り出すと、読み方が見えてきます。
- 対象となる契約から、「住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約」(住宅資金貸付契約等)と、極度方式貸付けに係る契約が除かれている
- 個人顧客合算額からも、「住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高」が除かれている
- 最後の括弧書きで、「個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約」として内閣府令で定めるものが、個人過剰貸付契約から除かれている
1つ目と2つ目が除外契約のしくみです。契約そのものも、残高も、はじめから数えません。3つ目が例外契約のしくみです。合算額の計算からは外れませんが、その契約自体は個人過剰貸付契約にならないので結べます。
試験では、「住宅資金貸付契約等」という条文上の呼び名が除外契約にあたる、という対応を問われることがあります。名前が長いので、ここで対応づけておきましょう。
除外契約(施行規則10条の21)の中身
施行規則10条の21第1項は、除外契約を8つの号で並べています。
| 号 | 内容 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 1号 | 不動産の建設・購入、または改良に必要な資金(借地権の取得資金を含む) | 住宅ローンが代表例 |
| 2号 | 1号の貸付けが行われるまでのつなぎ | 他の人が行う1号の貸付けのつなぎでもよい |
| 3号 | 自動車の購入資金 | 貸金業者が所有権を取得するか、譲渡担保になっているものに限る |
| 4号 | 高額療養費を支払うための資金 | 本人か、生計を一にする親族の分 |
| 5号 | 一定の有価証券を担保とする貸付け | 貸付けの金額が、契約時の時価の範囲内であること |
| 6号 | 不動産を担保とする貸付け | 居宅など一部の不動産は除かれる。価格の範囲内で、返済能力を超えないこと |
| 7号 | 売却予定の不動産の売却代金で弁済される貸付け | 本人の不動産で、価格の範囲内。返済能力を超えないこと |
| 8号 | 施行規則1条の2の3の2号〜5号の契約 | 手形の割引、証券会社の保護預り有価証券を担保にした貸付けなど |
見落としやすいのは、号ごとに条件がついている点です。たとえば自動車ローンは、購入資金でありさえすれば除外契約になるわけではありません。所有権の取得か譲渡担保という形が必要です。同じく、有価証券や不動産を担保にする貸付けも、金額が時価や価格の範囲内であることが要件です。
「自動車の購入資金ならすべて除外契約」「自宅を担保にすれば必ず除外契約」という理解は誤りです。6号は、個人顧客や担保提供者の居宅、居宅の用に供する土地、生計の維持に不可欠なものを担保から除いています。
例外契約(施行規則10条の23)の中身
施行規則10条の23第1項が並べる例外契約は、次のとおりです。号の数え方は条文の呼び方に合わせています。
| 号 | 内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 1号 | 顧客に一方的に有利な借換え | 1か月の負担が増えない、将来の返済総額が増えない、担保・保証の条件が不利にならない、など6つ |
| 1号の2 | 残高が段階的に減る借換え | 弁済する債務がすべて貸金業者等のもの、利率が上回らない(複数ならば残高で加重平均)、定期の返済で残高が段階的に減る見込み、など |
| 2号 | 緊急に必要と認められる医療費の貸付け | 返済能力を超えない。現にその貸付けの契約を結んでいない場合に限る |
| 2号の2 | 特定緊急貸付契約 | 返済能力を超えない、緊急個人顧客合算額が10万円を超えない、返済期間が3か月を超えない |
| 3号 | 配偶者貸付け | 夫婦それぞれの個人顧客合算額の合計が、夫婦それぞれの基準額の合計を超えない。配偶者の同意がある場合に限る |
| 4号 | 事業を営む個人顧客への貸付け | 事業の実態が確認されていること、事業計画などに照らして返済能力を超えないこと |
| 5号 | 現に事業を営んでいない個人顧客の新規事業の資金 | 確実に事業の用に供される資金と認められること、返済能力を超えないこと |
| 6号 | 金融機関の貸付け(正規貸付け)までのつなぎ | 正規貸付けが確実、返済期間が1か月を超えない。極度方式基本契約は除く |
条文は「次に掲げるすべての要件に該当するもの」という書き方をしているものが多く、一部でも欠ければ例外契約にはなりません。たとえば事業を営む人への貸付けでは、事業の実態の確認だけでは足りず、返済能力を超えないと認められることも必要です。
数字の問われ方に注意
例外契約には数字が多く出てきます。特定緊急貸付契約の「10万円」「3か月」、つなぎの貸付けの「1か月」、事業のための貸付けで事業計画等に代えて事業の状況などで判断できる「100万円を超えないもの」などです。混ざりやすいので、契約の種類と数字をセットで覚えましょう。
医療費は入口が2つ
除外契約と例外契約の両方に医療が関わるため、よく比べられます。
| 高額療養費を支払うための資金 | 緊急に必要と認められる医療費 | |
|---|---|---|
| 区分 | 除外契約(10条の21第1項4号) | 例外契約(10条の23第1項2号) |
| 残高の扱い | 合算に入れない | 合算に入れる |
| 追加の要件 | 本人か生計を一にする親族の療養費であること | 返済能力を超えないこと。現にその貸付けの契約を結んでいない場合に限る |
例外契約の2号には、括弧書きで「10条の21第1項4号に掲げる契約を除く」とあります。つまり、高額療養費の貸付けは除外契約のほうで扱い、緊急の医療費は例外契約のほうで扱うように、条文が切り分けています。
数字で見る:残高の扱いの違い
年収300万円の人を例にします。基準額は100万円です。すでに貸金業者から90万円を借りていて、個人顧客合算額は90万円とします。
除外契約の場合:この人が、高額療養費にあたる費用のために20万円を借りたとします。これは除外契約なので、この20万円は合算に入れません。合算額は90万円のままです。したがって、その後に10万円までなら、通常の貸付けを結べる余地が残ります。
例外契約の場合:同じ人が、緊急に必要と認められる医療費のために、要件を満たして20万円を借りたとします。これは例外契約なので、基準額を超えても結べます。ただし合算には入れるため、合算額は110万円になります。基準額の100万円を超えているので、その後は、除外契約や例外契約にあたらない通常の貸付けは結べません。
この違いは、あとから別の契約を結ぶときに効いてきます。試験では「その残高を個人顧客合算額に含めるか」という形で問われやすいところです。
保存する書面も、号ごとに決まっている
どちらも、契約を結んだ貸金業者に書面の保存義務があります。条文上、除外契約は10条の21第2項、例外契約は10条の23第2項です。保存期間は、その契約に定められた最終の返済期日までです。債権が弁済などで消滅したときはその消滅した日、極度方式の契約では別に定めがあります。
- 除外契約:不動産なら売買契約書や請負契約書、自動車なら売買契約書と自動車検査証、高額療養費なら医療機関の請求書か見積書、など
- 例外契約:緊急の医療費なら医療機関の請求書か見積書、配偶者貸付けなら身分関係を証明する書面と配偶者の同意書、事業を営む個人への貸付けなら確定申告書など事業の実態を確認した書面と事業計画などを記載した書面、など
どの号にどの書面が対応するかは、条文で確認しておくと安心です。
覚え方のコツ
- まず「枠の外か、枠の中か」を決める。除外は外、例外は中
- 残高は「外は数えない、中は数える」
- 号ごとの要件は「すべて満たす」が基本。一部だけでは当てはまらない
- 医療費は、高額療養費が除外、緊急の医療費が例外
- 数字は契約の種類とセットで覚える(10万円・3か月・1か月・100万円)
貸金業法の用語は似た名前が多いので、条文の番号と一緒に覚えると混同しにくくなります。講座で扱う内容は、貸金業務取扱主任者講座のページから確認できます。
まとめ
- 除外契約(施行規則10条の21)は総量規制の枠の外。残高は合算に入れない
- 例外契約(同10条の23)は枠の中。要件を満たせば3分の1を超えて結べるが、残高は合算に入れる
- どちらも、掲げられた要件をすべて満たして初めて当てはまる
- 医療費は、高額療養費が除外契約、緊急に必要な医療費が例外契約
制度は改正されることがあります。受験する年度の法令と、日本貸金業協会の試験案内も、あわせて確認してください。

