旅行代金を払ったのに旅行会社が倒れてしまったら、旅行者のお金はどうなるのでしょうか。旅行業法は、そのために2つの「預けるお金」を用意しています。営業保証金と弁済業務保証金です。名前が似ていて、試験では「誰が」「いくら」「いつまでに」納めるのかを取り違えやすい論点です。この記事では、2つの違いを表で整理します。
営業保証金と弁済業務保証金は何が違う?
結論から言うと、営業保証金は旅行業者が自分で国の供託所に預けるお金、弁済業務保証金は旅行業協会が、会員(保証社員)から集めた分担金をもとに供託所へ預けるお金です。旅行者を守るという目的は同じで、預ける人と預け方が違います。
| 項目 | 営業保証金 | 弁済業務保証金 |
|---|---|---|
| 預ける人 | 旅行業者本人 | 旅行業協会(協会に入った旅行業者が分担金を納める) |
| 根拠(旅行業法) | 7条・8条 | 48条〜53条 |
| 対象の旅行業者 | 協会に入っていない旅行業者 | 協会の保証社員 |
| 預け先 | 主たる営業所の最寄りの供託所 | 供託所(協会が供託する) |
| 旅行者が弁済を受ける根拠 | 17条 | 48条(協会の認証が要る) |
| 旅行業者代理業者の客 | 所属旅行業者の営業保証金から弁済 | 所属する保証社員の分から弁済 |
保証社員になると、営業保証金を供託しなくてよくなります(旅行業法53条)。2つの制度は、1人の旅行業者に重ねてかかるものではなく、「どちらか」の関係です。
営業保証金のしくみと額
旅行業者は営業保証金を供託し、供託書の写しを添えて観光庁長官へ届け出ます。届け出た後でなければ事業を始められません(旅行業法7条2項・3項)。登録の通知を受けた日から14日以内に届出がないと、観光庁長官は7日以上の期間を定めて届け出るよう催告します。その期間内にも届出がなければ、登録を取り消すことができます(同条4項・5項)。
営業保証金の額は、前の事業年度の旅行者との取引額と、登録の種別で決まります(旅行業法8条、施行規則7条と別表第一)。取引額が400万円未満の、いちばん少ない区分はこうなっています。
最も少ない区分で並べると、地域限定が15万円、第3種が300万円、第2種が1,100万円、第1種が7,000万円です。種別が上がるほど、預ける額は大きくなります。
取引額が増えると、第2種・第3種・地域限定では額が上がっていきます。第1種は、海外の募集型企画旅行の取引額が大きいときに、別表第二の額が加わります。
供託するものは現金だけではありません。国債証券・地方債証券・政府が保証した有価証券は額面金額、そのほかの有価証券(特別の法律により法人が発行する債券など)は額面の90%で数えます(施行規則9条)。
弁済業務保証金のしくみと分担金
協会に入った旅行業者は保証社員と呼ばれます。保証社員は、協会が定める額の弁済業務保証金分担金を協会に納めます。協会はそれをもとに弁済業務保証金を供託します。観光庁の資料に載っている、取引額が400万円未満の区分の分担金は次のとおりです。
| 種別 | 営業保証金 | 分担金 |
|---|---|---|
| 第1種旅行業 | 7,000万円 | 1,400万円 |
| 第2種旅行業 | 1,100万円 | 220万円 |
| 第3種旅行業 | 300万円 | 60万円 |
| 地域限定旅行業 | 15万円 | 3万円 |
どの種別も、分担金は営業保証金の5分の1になっています。つまり、協会に入ると、旅行業者が一度に用意するお金が少なくて済みます。なお、分担金の額は協会の弁済業務規約で決まる額で、取引額が増えれば増えます。最新の額は、協会の案内で確かめてください。
分担金の5分の1という関係は、観光庁の資料の表で確かめた事実です。試験の条文として「5分の1」と書いてあるわけではありません。条文で押さえるのは「規約で定める額」という書き方と、次の弁済限度額の規定です。
弁済限度額は営業保証金の額を下回れない
保証社員と取引をした旅行者は、協会の認証を受けたうえで、協会が供託している弁済業務保証金から弁済を受けます。ただし、受け取れる額には上限があり、これを弁済限度額といいます(旅行業法48条1項・2項)。
ここで大事なのが48条5項です。弁済限度額は、保証社員が協会に入っていなかったら供託するはずの営業保証金の額を下回れません。観光庁の資料では、弁済限度額は保証社員が納めた分担金の5倍と説明されています。分担金が営業保証金の5分の1なので、5倍にすると営業保証金と同じ額になり、条文と合います。
| 比べる点 | 営業保証金 | 弁済業務保証金 |
|---|---|---|
| 旅行者が受けられる上限 | 供託している営業保証金の額の範囲 | 弁済限度額の範囲 |
| 請求の合計が上限を超えたとき | 額の範囲で、請求額に応じて按分 | 限度額の範囲で、請求額に応じて按分 |
| 協会に入ると守りは薄くなるか | — | 薄くならない(限度額は営業保証金以上) |
期限をまとめて押さえる
試験では日数の取り違えがよく狙われます。表にまとめます。
| 場面 | 誰が | 期限 |
|---|---|---|
| 登録の通知後に届出がないとき、催告を受ける | 旅行業者 | 通知を受けた日から14日以内に届出がなければ催告(7日以上の期間) |
| 前事業年度の取引額の報告 | 旅行業者 | 事業年度終了後100日以内(10条) |
| 事業年度が終わって分担金が増える | 保証社員 | 終了の日の翌日から100日以内(49条2項) |
| 変更登録で分担金が増える | 保証社員 | 変更登録を受けた日から14日以内(49条2項) |
| 弁済があったときの供託し直し | 協会 | 弁済(還付)があった日から21日以内(48条3項) |
| 還付充当金の納付 | 保証社員 | 協会からの通知を受けた日から7日以内(50条2項) |
還付充当金とは、旅行者に弁済された分を埋め合わせるために、問題を起こした保証社員が協会に納めるお金です。通知から7日以内に納めないと、保証社員は協会の社員の地位を失います(50条3項)。分担金を期日までに納めないときも同じです(49条4項)。
試験での問われ方と取り違えやすい点
よく出る取り違えを、正しい理解と並べて覚えましょう。
- 保証社員も営業保証金を供託する → 誤り。保証社員は供託しなくてよい(53条)
- 弁済を受けるのに協会の認証は要らない → 誤り。保証社員の場合は認証が要る(48条2項)
- 営業所が増えたら営業保証金を追加する → 営業保証金の額を決めるのは取引額と種別で、営業所の数ではない
- 営業保証金の供託先は営業所ごと → 誤り。主たる営業所の最寄りの供託所(8条7項)
- 旅行業者代理業者も供託する → 誤り。所属旅行業者の保証で守られる
旅行業者代理業者の客は、所属する旅行業者の営業保証金から、または所属する保証社員の弁済業務保証金から弁済を受けられます(17条・48条)。
「営業保証金のほうは14日と7日、分担金のほうは100日と14日と7日」のように、制度ごとに日数をセットにして覚えると整理しやすくなります。登録の種別そのものの違いは、旅行業の登録の種別と業務範囲の記事であわせて確認してください。
学習の進め方
この論点は、旅行業法令の科目で毎年のように問われる分野です。条文の番号を暗記するより、次の順で整理すると崩れにくくなります。
- 旅行業者が自分で預けるのが営業保証金
- 協会に入ると、分担金を納めて営業保証金は免除される
- 額は種別で比べる(第1種から地域限定までの並び)
- 期限は表にして、1つずつ声に出して確認する
国内旅行業務取扱管理者講座では、トーレスに質問しながら、授業で営業保証金や旅行業協会の弁済業務を順番に確認できます。確認問題で、日数や額を取り違えていないかも試せます。
まとめ
- 営業保証金は旅行業者本人が供託。弁済業務保証金は協会が、保証社員の分担金をもとに供託する
- 保証社員は営業保証金の供託が不要(53条)
- 営業保証金は、最も少ない区分で第1種7,000万円・第2種1,100万円・第3種300万円・地域限定15万円。分担金はその5分の1
- 弁済限度額は営業保証金の額を下回れない。協会の規約では分担金の5倍
- 期限は14日・7日・100日・21日が中心。制度ごとにセットで覚える
額や制度は変わることがあります。受験する年度の法令と、協会の最新の案内は、公式サイトで確かめてください。
よくある質問
Q. 営業保証金と弁済業務保証金は両方納める必要がありますか? A. いいえ。保証社員になれば営業保証金は不要です(旅行業法53条)。
Q. 分担金はいくらですか? A. 取引額が400万円未満の区分で、第1種1,400万円・第2種220万円・第3種60万円・地域限定3万円です。取引額が増えると額も増えます。
Q. 弁済限度額はどう決まりますか? A. 協会の弁済業務規約で決まりますが、営業保証金の額を下回れません(48条5項)。観光庁の資料では分担金の5倍とされています。

