貸金業の登録を申請しても、必ず登録されるわけではありません。貸金業法6条は、登録を「拒否しなければならない」場合を1号から16号まで並べています。貸金業務取扱主任者試験では、5年という期間がどの号にかかるのか、罰金はどの法律の違反なら拒否されるのか、といった細かい区別が問われやすい分野です。この記事では、6条1項の全体像から順に、表で整理します。
条文は2026年10月17日にe-Gov法令検索で確認した内容に基づきます。試験は受験年度の法令が基準になるため、最新の情報は日本貸金業協会の公式サイトでご確認ください。
結論:16の事由のうち1つでも当たれば拒否される
貸金業法6条1項は、登録を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、登録を拒否しなければならないと定めています。「拒否できる」ではなく「拒否しなければならない」という義務である点が大切です。
| 号 | 拒否される者(要約) |
|---|---|
| 1号 | 心身の故障により貸金業を適正に行えない者として内閣府令で定める者 |
| 2号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 3号 | 貸金業の登録を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者(法人なら、取消しの日前30日以内の役員を含む) |
| 4号 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わった等の日から5年を経過しない者 |
| 5号 | 一定の法律の違反などで罰金の刑に処せられ、執行を終わった等の日から5年を経過しない者 |
| 6号 | 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(まとめて「暴力団員等」) |
| 7号 | 貸金業に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として内閣府令で定める者 |
| 8号 | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、法定代理人が前各号のいずれかに当たる者 |
| 9号 | 法人で、役員または政令で定める使用人のうちに、心身の故障の者、または2号〜7号に当たる者がいるもの |
| 10号 | 個人で、政令で定める使用人のうちに、同様の者がいるもの |
| 11号 | 暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
| 12号 | 暴力団員等を業務に従事させ、または業務の補助者として使用するおそれのある者 |
| 13号 | 営業所または事務所について12条の3(主任者の設置)の要件を欠く者 |
| 14号 | 純資産額が政令で定める金額に満たない者 |
| 15号 | 貸金業を的確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者 |
| 16号 | 他に営む業務が公益に反すると認められる者 |
これに加えて、登録申請書やその添付書類に重要な事項について虚偽の記載があるときや、重要な事実の記載が欠けているときも、登録は拒否されます。拒否したときは、登録行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)が、遅滞なく、理由を示して申請者に通知します(6条2項)。通知は、財務局長や都道府県知事が定められた様式の登録拒否通知書で行います(施行規則4条の3)。
16号は「どれか1つ」で足ります。全部に当たらなければ拒否されない、全部に当たって初めて拒否される、という読み方は逆です。
5年ルールがかかる号を整理する
6条1項には「5年」が何度も出てきます。どの号で、何から数えるのかを分けて覚えると混乱しません。
| 号 | 5年の起点 | 対象 |
|---|---|---|
| 3号 | 登録の取消しの日 | 取り消された貸金業者(法人の場合は、取消しの日前30日以内に役員だった者も) |
| 4号 | 刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日 | 拘禁刑以上の刑に処せられた者 |
| 5号 | 同上 | 一定の罰金の刑に処せられた者 |
| 6号 | 暴力団員でなくなった日 | 元暴力団員 |
一方、2号の破産は「5年」ではなく「復権を得るまで」という基準です。期間を数える号と、状態で決まる号を分けておきましょう。
刑罰:拘禁刑以上と罰金で扱いが違う
拘禁刑以上の刑(4号)
4号は、拘禁刑以上の刑に処せられた者が対象です。刑の対象となった罪は、貸金業と関係があるかどうかを問いません。刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過するまで、登録は拒否されます。
罰金の刑(5号)
罰金は、何の罪についての罰金かによって結論が変わります。5号が挙げているのは次のとおりです。
| 5号が挙げる法律違反・罪 | 5年間の拒否 |
|---|---|
| 貸金業法の違反 | 当たる |
| 出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)の違反 | 当たる |
| 暴力団対策法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)の違反(32条の3第7項・32条の11第1項を除く) | 当たる |
| 金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律の違反 | 当たる |
| 貸付けの契約の締結・債権の取立てに当たっての、物価統制令12条の違反 | 当たる |
| 貸付けの契約の締結・債権の取立てに当たっての、刑法または暴力行為等処罰に関する法律の罪 | 当たる |
| 上記に挙がっていない法律(たとえば道路交通法)の違反による罰金 | 5号には当たらない |
特に、刑法や暴力行為等処罰に関する法律の罪は、「貸付けの契約の締結または債権の取立てに当たり」犯したものに限られています。条文の文言まで確認しておきたい箇所です。
執行猶予の期間が満了したとき
刑の全部の執行猶予の言渡しを受けても、その言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条1項)。この場合、言渡しを受けたこと自体を理由に4号・5号で拒否されることはなくなります。ただし、猶予の期間内に別の罪を犯して公訴が提起されているなどの例外もあるため(同条2項)、細かい事案は試験の範囲を超えて深追いする必要はありません。
破産と復権(2号)
2号が拒否の対象にしているのは、破産手続開始の決定を受けて「復権を得ない者」です。破産した経歴があること自体ではありません。破産者は、免責許可の決定が確定したときなど、破産法255条1項に挙がる事由に当たれば復権します。復権を得れば、2号の拒否事由から外れます。条文には、復権を得たあとに待たなければならない期間は置かれていません。
登録の取消しと役員(3号)
3号は、貸金業の登録を取り消された者を、取消しの日から5年を経過するまで拒否する規定です。取消しの根拠として、6条1項3号は次の条文を挙げています。
| 取消しの根拠 | 内容 |
|---|---|
| 24条の6の4第1項 | 監督上の処分としての登録の取消し |
| 24条の6の5第1項 | 取り消さなければならない場合(登録の時点で拒否事由に当たっていたことが判明したとき等) |
| 24条の6の6第1項(1号に係る部分) | 所在不明者等の登録の取消し |
| 金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律38条1項による登録の取消し(貸金業貸付媒介業務の種別に係るもの) | 同法12条の登録の取消し |
取り消された者が法人である場合は、取消しの日前30日以内にその法人の役員であった者で、取消しの日から5年を経過しないものも、拒否の対象に含まれます。会社の登録が取り消されると、その会社を動かしていた人にも影響が及ぶということです。
貸金業務取扱主任者の登録を拒否する場合(24条の27)にも似た規定がありますが、役員をさかのぼる期間の数え方が違います。貸金業の登録は「取消しの日前30日以内」、主任者登録は「聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内」です。数字の取り違えに注意しましょう。
暴力団員等に関する3つの号
暴力団との関係は、3つの号に分かれています。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 6号 | 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(暴力団員等) |
| 11号 | 暴力団員等が事業活動を支配する者 |
| 12号 | 暴力団員等を業務に従事させ、または業務の補助者として使用するおそれのある者 |
本人が暴力団員でなくても、事業活動を暴力団員等に支配されていたり、暴力団員等を使うおそれがあったりすれば、登録は拒否されます。
法人の場合は役員と使用人も審査される
法人が申請するときは、会社そのものだけでなく、役員や「政令で定める使用人」のうちに、問題のある人がいないかも見られます(9号)。個人が申請する場合も、政令で定める使用人が審査の対象です(10号)。
政令で定める使用人は、施行令3条により、登録を受けようとする者の使用人で、営業所または事務所の業務を統括する者その他これに準ずる者で内閣府令で定めるものとされています。9号・10号の対象になるのは、心身の故障のため貸金業に係る職務を適正に執行することができない者として内閣府令で定める者と、2号から7号のいずれかに当たる者です。なお、8号の未成年者の場合は、その法定代理人(法人ならその役員)が「前各号のいずれか」に当たるかどうかが問われます。
財産と人の配置:13号と14号
財産と人の配置にも基準があります。
| 号 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 13号 | 営業所または事務所ごとに貸金業務取扱主任者を置くこと | 貸金業法12条の3第1項 |
| 14号 | 純資産額が政令で定める金額に満たない者は拒否 | 6条1項14号・施行令3条の2 |
主任者の数は、内閣府令で定める数を置く必要があります。施行規則10条の8によると、営業所等で貸金業の業務に従事する者の数に対する主任者の数の割合が50分の1以上となる数です。予見し難い事由で主任者の数が足りなくなったときは、2週間以内に、要件を満たすために必要な措置をとらなければなりません(12条の3第3項)。
純資産額の最低額は、施行令3条の2で5,000万円と定められています。法律の6条3項も、この金額は5,000万円を下回ってはならないとしています。純資産額が5,000万円に満たない者は拒否されます。ただし、14号のかっこ書きで、資金需要者等の利益を損なうおそれがないものとして内閣府令で定める事由がある者は除かれます。
体制の整備:15号と施行規則5条の7
15号は、貸金業をきちんと遂行できる社内体制が整っていないと判断される者を拒否する規定です。審査の基準は、施行規則5条の7に定められています。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 定款・寄附行為 | 内容が法令に適合していること(申請者が法人の場合に限る) |
| 役員の経験 | 常務に従事する役員のうちに、貸付けの業務に3年以上従事した経験を有する者がいること(個人の場合は、申請者本人がその経験を有すること) |
| 営業所ごとの人員 | 営業所等ごとに、貸付けの業務に1年以上従事した者が、常勤の役員または使用人として1人以上在籍していること(自動契約受付機や現金自動設備のみで貸付けに関する業務を行うものを除く) |
| 社内規則 | 資金需要者等の利益の保護を図り、貸金業の適正な運営に資する十分な社内規則を定めていること。業務に関する責任体制を明確化する規定を含む |
| 紛争解決の措置 | 貸金業法12条の2の2に定める措置(指定紛争解決機関との契約締結など)を講ずるために必要な措置を講じていること |
「3年」は役員、「1年」は営業所ごとの人員、と数字と対象をセットで覚えましょう。
試験での問われ方と覚え方
登録拒否事由は、選択肢の中に数字や対象のすり替えが混ざる形で出やすい分野です。次の点を確認しておくと整理しやすくなります。
| 確認ポイント | 覚え方 |
|---|---|
| 5年の起点 | 3号は取消しの日、4・5号は刑の執行終了等の日、6号は暴力団員でなくなった日 |
| 罰金 | 5号の法律・罪に挙がっていないものは、5号には当たらない |
| 破産 | 破産の事実ではなく「復権を得ない」が要件 |
| 役員をさかのぼる期間 | 貸金業の登録は30日、主任者登録は60日 |
| 数字 | 純資産額5,000万円、役員の経験3年、営業所の人員1年、主任者50分の1 |
登録そのものの仕組み(登録先・有効期間・更新)は、別の記事でまとめています。あわせて読むと、登録制度の全体像がつかみやすくなります。
授業・講座で学ぶには
登録拒否事由は、16号を単に暗記するだけでは、似た選択肢が並んだときに迷います。「なぜその人は拒否されるのか」という趣旨を意識しながら、期間・金額・人数を条文とセットで整理していくと定着しやすくなります。貸金業務取扱主任者講座では、登録の制度を条文の順に学べます。
まとめ
- 登録拒否事由は貸金業法6条1項の1号〜16号。1つでも当たれば、登録行政庁は登録を拒否しなければならず、拒否したときは遅滞なく理由を示して通知する(6条2項)。
- 拘禁刑以上の刑は種類を問わず、罰金は5号に挙がる法律の違反や、貸付けの契約・取立てに当たっての刑法等の罪に限って、執行終了等から5年間拒否される。
- 破産は「復権を得ない者」が対象。登録取消しは取消しの日から5年で、法人なら取消しの日前30日以内の役員も含まれる。
- 暴力団員等は6号・11号・12号で扱われる。純資産額は5,000万円に満たない者が14号で拒否される。
- 体制の審査基準は施行規則5条の7。役員に貸付けの経験3年以上、営業所ごとに経験1年以上の者1人以上などが基準になる。
拒否事由は数字と対象の組み合わせで問われます。表を自分の手で書き直し、条文と照らし合わせてみてください。

