国内旅行業務取扱管理者試験には、科目の一部が免除される仕組みがあります。「免除Aとは何か」「研修を受けるとどうなるのか」「地域限定の試験に合格していると有利なのか」が分かりにくい、という声はよく聞きます。この記事では、全国旅行業協会(ANTA)と観光庁の公表資料、旅行業法の条文にもとづいて、免除の種類と使い方を整理します。
この記事は2026年10月17日時点で確認した、令和8年度の受験案内などにもとづいています。令和8年度の受付はすでに終了しており、対象となる年度や書類は年度ごとに変わることがあります。使えるかどうかは、必ずその年度の受験案内をANTAの公式サイトで確認してください。
免除の根拠は旅行業法にある
免除の仕組みは、旅行業法の第11条の3に書かれています。同条第2項は、旅行業務取扱管理者試験を「総合旅行業務取扱管理者試験」「国内旅行業務取扱管理者試験」「地域限定旅行業務取扱管理者試験」の三種類としています。
そして第3項で、観光庁長官は、旅行業協会が実施する研修の課程を修了した人や、国土交通省令で定める資格を持つ人について、試験の一部を免除できると定めています。つまり、免除は「研修を修了した」「ほかの試験区分に合格した」といった事情を、試験の一部に置き換える制度です。
なお、旅行業者は営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任する必要があり、どの試験に合格した人が選任できるかは、営業所の業務範囲で決まります(第11条の2第6項)。この選任のしくみは、登録の種別と業務範囲の記事でも触れています。
受験区分は4つ(令和8年度)
令和8年度の受験案内では、受験区分が次のように分かれています。
| 受験区分 | 受ける科目 | 免除される科目 | 試験時間 | 必要な根拠書類 |
|---|---|---|---|---|
| 全科目 | 法令・約款・国内実務 | なし | 120分 | 不要 |
| 免除A | 法令・約款 | 国内実務 | 80分 | 下の①または②のどちらか1点 |
| 免除B | 約款・国内実務 | 法令 | 80分 | 地域限定旅行業務取扱管理者試験の合格証書 |
| 免除C | 約款 | 法令・国内実務 | 40分 | 地域限定の合格証書と、下の①または②(計2点) |
免除AとCの根拠書類(令和8年度)は、次の2つです。
- ① 令和7年度または令和8年度の「国内旅行業務取扱管理者研修」の修了証書
- ② 令和7年度の国内旅行業務取扱管理者試験で科目合格番号が記載された「試験結果表示」画面のスクリーンショット
覚え方は、Aは「実務」、Bは「法令」、Cは両方です。免除の対象になるのは、法令と国内実務の2科目で、約款だけはどの区分でも受験します。
免除を使っても、合格基準は変わりません。受ける科目はそれぞれ60点以上が必要です。試験の全体像は試験とはの記事を参照してください。
免除Aの入口① 国内旅行業務取扱管理者研修
免除Aの根拠のひとつが、ANTAが行う国内旅行業務取扱管理者研修です。ANTAの案内では、修了すると、修了した年度とその翌年度の国内試験で「国内旅行実務」が免除されるとされています。
受講できる人は限られる
誰でも受けられる研修ではありません。令和8年度の受講案内にある資格は、次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 就業 | 研修実施年の4月1日現在、旅行業者または旅行業者代理業者に雇用され、修了テストの日まで継続して従事していること |
| 経験 | 4月1日を基準に、最近5年以内に、国内の旅行を扱う旅行業務に3年以上従事した経験があること |
| 証明 | 経験を、旅行業者等が「職歴証明書」で証明すること |
派遣労働者や、旅行業の登録がない企業への出向者は対象外です。人事・経理・総務のみの期間や、海外駐在、産休などの長期休暇の期間は、経験に数えられません。一般の人や旅行サービス手配業者は受講できないと明記されています。
方式と費用(令和8年度)
令和8年度は、オンラインの講義(4月30日〜5月17日、標準所要時間は約12時間)を視聴し、6月2日に会場で修了テストを受ける流れでした。受講料は税込26,000円、地域限定旅行業務取扱管理者試験の合格者は税込25,000円(法令科目の講義が免除)で、ほかに事務手数料660円がかかります。申込みの受付は2026年4月1日に終わっています。
免除Aの入口② 国内実務の科目合格
もうひとつの入口が、前年度の科目合格です。ANTAの受験案内とよくある質問によると、全科目または免除Bで不合格だった人のうち、国内実務で合格点に達した人には「科目合格番号」が付きます。結果は受験者マイページに表示され、次の年度の申込みで番号を提出すると、国内実務が免除されます。
ここでの注意点は3つです。
- 科目合格の対象は国内実務だけ。法令と約款には同じ制度がない
- 免除されるのは翌年度の国内試験に限る
- 国内試験と総合試験のあいだでは、この制度は相互に適用されない
つまり、「今年は国内実務だけ合格した。来年は法令と約款に集中する」という進め方ができます。ただし、翌年度に免除を使うには、結果表示の画面を保存しておく必要があります。再取得の方法も受験案内に書かれているので、保存しておくのが安心です。
免除B・Cの入口 地域限定旅行業務取扱管理者試験
免除Bは、観光庁が行う地域限定旅行業務取扱管理者試験に合格した人が使います。令和8年度の地域限定試験は9月27日に行われ、合格発表は11月13日(予定)でした。
地域限定の試験は、国内試験と別の試験です。ANTAは国内試験の事務を代行する団体で、地域限定試験は観光庁の所管です。地域限定の免除や科目の詳細は、観光庁の受験案内で確認する必要があります。
地域限定の合格者が国内試験を受けるときは、次のようになります。
- 合格証書があれば、法令が免除(免除B)。約款と国内実務を受ける
- そのうえで研修修了または科目合格番号があれば、法令と国内実務が免除(免除C)。約款だけを受ける
また、ANTAには地域限定旅行業務取扱管理者研修もあります。こちらは地域限定試験で「国内旅行実務」と宿泊約款の免除を受けるための研修で、受講料は税込25,700円(ほかに事務手数料660円)、受講資格は国内研修と同じ3つの要件です。国内試験の免除とは別の研修なので、混同しないようにしましょう。
申込みの手順は2段階
免除を使う場合は、全科目の申込みと手順が違います。令和8年度の受験案内では、次のとおりです。
- 免除申請(7月15日23:59まで): 根拠書類をアップロードし、受験手数料等を支払う
- 試験申込(7月23日23:59まで): 書類の審査が終わってから、試験日と会場を予約する
書類のアップロードが確認できないと、全科目受験の扱いになります。受験手数料は8,000円(非課税)とシステム利用料660円(税込)で、返金はありません。申込み全体の流れは、申込み方法の記事にまとめています。
免除のほかに知っておきたいこと
最後に、混同しやすい点を表にします(ANTAのよくある質問にもとづく)。
| 場面 | 免除の扱い |
|---|---|
| 国内研修の修了 | 修了年度と翌年度の国内試験で国内実務が免除 |
| 国内実務の科目合格 | 翌年度の国内試験で国内実務が免除 |
| 総合研修(JATA主催)の修了 | ANTAの国内研修とのあいだで相互免除はない |
| 国内試験に合格したあと | 次年度以降の総合試験で、旅行業法令と国内旅行実務の2科目が免除 |
総合試験への足がかりになる点は、キャリアを考えるときに押さえておきたいところです。ただし、同じ年度に国内試験に合格したうえで、総合試験を一部免除で受けることは、受付締切日の関係でできない、とされています。
免除を使うかどうかの考え方
免除が使えるなら、勉強の範囲は減ります。たとえば免除Aなら、国内実務の運賃計算や観光地理に時間を割かずに済みます。一方で、受ける科目の勉強はこれまでどおり必要で、約款は必ず受験します。
研修の受講資格がない人は、全科目での受験が基本です。国内実務で合格点を取れていれば翌年度に免除を使える、という「科目合格」を活用する考え方もあります。どの科目も落とせない試験なので、まずは自分の区分を受験案内で確かめ、勉強の優先順位を決めましょう。
国内旅行業務取扱管理者講座では、法令・約款・国内実務の授業と確認問題を、AI講師のトーレスに質問しながら進められます。講座の内容は、講座ページで確認できます。
まとめ
国内旅行業務取扱管理者試験の科目免除は、旅行業法第11条の3第3項にもとづく仕組みです。令和8年度の区分は、国内実務が免除の免除A、法令が免除の免除B、法令と国内実務が免除の免除Cです。免除Aは国内旅行業務取扱管理者研修の修了か前年度の国内実務の科目合格で使え、免除B・Cは地域限定試験の合格が必要です。研修は旅行業者等の業務従事者が対象で、一般の人は受講できません。年度ごとに条件が変わるため、最新の情報はANTAの受験案内で確認してください。

