「行政書士試験には足切りがあると聞くが、基礎知識はどう対策すればよいのか」。法令の勉強で手一杯になり、基礎知識を後回しにしている方は多いのではないでしょうか。この記事では、行政書士試験研究センターが公表している情報をもとに、基礎知識の足切りの仕組みと、避けるための考え方を整理します。
結論から言うと、基礎知識は14問・56点という小さな科目ですが、満点の40%を下回ると、ほかの科目がどれだけ良くても不合格になります。ただし、必要なのは「満点を取ること」ではなく「基準点に届くこと」です。
ここで挙げる点数は令和7年度(令和7年11月9日実施)のものです。令和8年度の合格基準点は、令和9年1月27日に公式サイトで公表されると案内されています。受験する年度の最新情報は、必ず公式サイトで確認してください。
足切りとは何か — 合格に必要な3つの条件
行政書士試験の合格には、次の3つの要件をすべて満たす必要があります(令和8年度の試験案内による)。
- 法令等科目の得点が、満点の50%以上
- 基礎知識科目の得点が、満点の40%以上
- 試験全体の得点が、満点の60%以上
「足切り」とは、全体の得点が足りていても、ある科目が基準に届かなければ不合格になる仕組みのことです。上の1と2が、それにあたります。令和7年度の公表値をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 満点 | 合格基準点 | 満点に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 法令等 | 244点 | 122点以上 | 50% |
| 基礎知識 | 56点 | 24点以上 | 約43%(満点の40%=22.4点を上回る最小の得点) |
| 試験全体 | 300点 | 180点以上 | 60% |
基礎知識は、56点の40%が22.4点です。5肢択一式は1問4点ですから、得点は4点刻みになります。そのため、22.4点以上になる最小の得点は24点、つまり14問中6問の正解が基準でした。5問正解(20点)では届きません。
基礎知識は、14問のうち6問を正解できるかどうかが分かれ目です(令和7年度の基準点による)。「満点を目指す科目」ではなく、「確実に6問以上を取る科目」と考えると、対策が立てやすくなります。
基礎知識の出題範囲
令和8年度の試験案内では、基礎知識(14題)の出題分野は、次の4つとされています。出題形式は5肢択一式のみです。
| 分野 | 内容 |
|---|---|
| 一般知識 | (内容の説明は案内になし。令和7年度は政治・経済・社会の問題が出題された) |
| 諸法令 | 行政書士法等、行政書士業務と密接に関連する法令 |
| 情報通信・個人情報保護 | 情報通信、個人情報の保護 |
| 文章理解 | 文章を読み取る問題 |
なお、試験案内には、分野ごとの出題数の内訳は書かれていません。年度によって配分が変わりうるので、特定の分野に絞らないほうが安全です。
令和7年度の問題冊子で、問題47〜57の主題を確認すると、政治・経済・社会に関する問題が前半に並び、その後に行政書士法、戸籍法、情報通信、個人情報保護に関する問題が続いていました。問題58〜60は、今回確認した公開PDFには含まれていなかったため、ここでは扱いません。出題の中身は年度ごとに入れ替わるため、過去の主題はあくまで目安です。
足切りと全体点の関係を表で見る
基礎知識の点数は、足切りだけでなく、全体の合計にも関係します。令和7年度の基準(全体180点・法令等122点・基礎知識24点)をもとに、基礎知識の得点ごとに、全体の基準を満たすために法令等で必要な点数を計算すると、次のとおりです。
| 基礎知識の正解数 | 基礎知識の得点 | 全体180点に必要な法令等の得点 | 足切りの状況 |
|---|---|---|---|
| 5問 | 20点 | 160点 | 基準点(24点)未満のため不合格 |
| 6問 | 24点 | 156点 | 基準点ちょうど |
| 8問 | 32点 | 148点 | 基準点を上回る |
| 10問 | 40点 | 140点 | 基準点を上回る |
| 14問 | 56点 | 124点 | 基準点を上回る |
計算式は「180点−基礎知識の得点」です。5問の行は、法令等で160点を取っても、基礎知識が基準点に届かないため不合格になります。
この表から分かるのは、次の2点です。
- 基礎知識を2問増やすと、法令等で必要な点数が8点(択一式2問ぶん)下がる
- 法令等の得点には、全体180点だけでなく、法令等単独の122点以上という条件もある。表の最下行(124点)でも、この条件は満たす必要がある
基礎知識を安定して取れる人は、法令等でぎりぎりの得点を狙う必要がなくなります。足切りを避けることは、全体の合計点の余裕づくりにもつながります。
択一式の採点と記述式の関係
試験案内には、択一式の採点を終えた時点で合格基準を満たしていないと認められる場合、記述式の採点を行わないことがある、と書かれています。その場合は、合否通知書にその旨が記載されます。
つまり、基礎知識の足切りは、記述式の採点にも影響しうる位置にあります。記述式の60点を取り切る前に、択一式の段階でつまずかないことが大切です。
基準点は毎年同じとは限らない
ここまで令和7年度の数字を使ってきましたが、合格基準点は毎年固定ではありません。試験案内には、試験問題の難易度を評価したうえで、合格基準に補正的な措置を加えることがある、と書かれています。
したがって、「基礎知識は6問でよい」と決めつけるのは危険です。補正の可能性があることを踏まえ、基準点に対して1〜2問の余裕を持った得点を目標にする、という考え方があります。これは筆者の一例であり、公式の推奨ではありません。
参考までに、令和7年度の受験者数は50,163人、合格者数は7,292人、合格率は14.54%でした(令和8年1月28日公表)。合格者の平均得点は197点です。試験全体の難しさは、基礎知識だけで決まるものではありませんが、足切りを避けることが合格の前提条件であることは変わりません。
足切りを避けるための考え方
ここからは、一般的な考え方の一例です。合格を保証するものではありません。
- 範囲を絞りすぎない。 分野ごとの出題数が事前に分からないため、4分野を広く浅く見ておくと安心です。
- 諸法令と情報通信・個人情報保護を優先する。 行政書士法や個人情報保護法のように、条文や公式資料で確かめられる分野は、学習の成果が点数に出やすい分野です。法令の基準日は、試験を行う年度の4月1日現在の施行法令なので、古い教材に注意します。
- 文章理解は、取りこぼさない練習をする。 文章理解は知識の暗記ではなく、読み取る力が問われます。本文に書かれていることだけを根拠に選ぶ、という姿勢を身につけると安定します。
- 一般知識は、時事の背景を押さえる。 政治・経済・社会は範囲が広いので、深追いはせず、ニュースで話題になった制度の仕組みを、公的機関の解説で確認する程度にとどめます。
- 模擬試験や過去問で、基礎知識だけの得点を記録する。 法令等と合わせた合計点だけでなく、基礎知識の正解数を単独で見ると、足切りの危険度が分かります。
講座ページで内容を確認する
行政書士講座のページでは、講座の内容を確認できます。学習計画を立てるときの参考にしてください。
試験の全体像は行政書士試験とは? 試験科目・配点・合格基準を公式発表で整理で、科目ごとの配点は行政書士試験の科目別配点で整理しています。直前期の復習計画は行政書士試験 直前1か月の過ごし方をご覧ください。
まとめ
- 基礎知識は14問・56点。満点の40%以上が合格の必須条件で、令和7年度の基準点は24点(5肢択一6問ぶん)でした。
- 法令等で高得点でも、基礎知識が基準点に届かなければ不合格です。基礎知識の得点が高いほど、法令等で必要な点数は下がります。
- 出題分野は一般知識・諸法令・情報通信と個人情報保護・文章理解の4つで、分野別の出題数は案内に書かれていません。
- 基準点には補正の可能性があります。余裕を持った目標を立て、最新情報は行政書士試験研究センターの公式サイトで確認してください。

