「試験まであと1か月。新しい問題集に手を出すべきか、いまの教材を回すべきか」。この時期は、不安から教材を増やしたくなりやすい時期です。この記事では、行政書士試験の直前1か月をどう使うかを、公式に示されている試験の形をもとに整理します。
令和8年度の試験は、令和8年11月8日(日)の午後1時から午後4時までと案内されています(2026年10月4日に行政書士試験研究センターの公式サイトで確認)。この記事を書いた時点で、試験までは約5週間です。なお、ここで書く学習の進め方は一般的な考え方であり、合格を保証するものではありません。自分の得意・不得意に合わせて調整してください。
直前期の目的は「知識を増やす」ことより、「持っている知識を、本番の形式で取り出せるようにする」ことです。試験の形(時間・問題数・合格基準)を先に頭に入れると、復習の優先順位が決まります。
直前期に押さえておく試験の形
復習の計画は、試験の形から逆算すると立てやすくなります。公式の案内で確認できる点を表にします。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 試験時間 | 午後1時〜午後4時(3時間) |
| 出題数 | 法令等科目46問、基礎知識科目14問 |
| 出題形式 | 法令等は択一式と記述式、基礎知識は択一式 |
| 記述式 | 40字程度で記述するものを出題 |
| 合格基準 | 法令等が満点の50%以上、基礎知識が満点の40%以上、全体が満点の60%以上(すべて満たす) |
| 出題法令の基準 | 令和8年4月1日現在施行されている法令 |
| 基準の補正 | 難易度により合格基準に補正的措置を加えることがある |
試験の細かい配点や科目の説明は、行政書士試験とは? 試験科目・配点・合格基準を公式発表で整理にまとめています。申込みや当日の流れは、行政書士試験の申込み方法と当日の流れをご覧ください。
ここで直前期にとくに関係するのは、次の3つです。
- 3つの合格基準をすべて満たす必要がある:法令等で点が取れても、基礎知識が基準を下回れば合格になりません。
- 3時間で60問:知識があっても、時間配分を間違えると取りこぼします。
- 法令の基準日がある:令和8年4月1日現在の法令に合わせて復習する必要があります。
直前1か月の全体像
1か月を4つの段階に分けて考えます。日数の配分はあくまで一例です。仕事や学校の予定に合わせて、前後させてかまいません。
| 時期 | 目的 | やること |
|---|---|---|
| 1週目 | 現状の把握 | 時間を測って1回分を通しで解き、科目別・分野別に弱点を洗い出す |
| 2〜3週目 | 弱点の補強 | 間違えた分野を、条文・テキストに戻って確認し、同じ論点を解き直す |
| 4週目 | 本番形式の調整 | 3時間通しの練習、記述式の書き直し、基礎知識の最終確認 |
| 最終の数日 | 体調と持ち物 | 新しいことを増やさず、まとめノートの見直しと当日の準備 |
1週目:通しで解いて現状を知る
最初の週は、いまの実力を正直に見る時間です。
- 手持ちの過去問題集や模擬試験から、1回分(60問)を選び、本番と同じ3時間で解きます。
- 採点して、法令等と基礎知識を分けて点数を出します。合格基準が科目ごとにあるため、全体の点だけでは足りません。
- 間違えた問題を、分野ごとにメモします(例:「行政手続法」「物権変動」「基礎知識の文章理解」など)。
直前期に採点して点数が低くても、落ち込む必要はありません。目的は弱点の発見です。問題文を覚えてしまうと実力が測れなくなるため、同じ問題の見直しは、時間をあけてから行うのがよいでしょう。
間違いの原因を3つに分ける
間違えた理由は、次の3つに分けると、対策が決まります。
| 原因 | 例 | 対策 |
|---|---|---|
| 知らなかった | 条文の内容や用語を覚えていない | 条文・テキストに戻って確認し、自分の言葉でまとめる |
| 勘違い・取り違え | 似た制度を混同した | 比較表を作り、違いを一覧にする |
| 時間・ケアレスミス | 設問の読み飛ばし、マークミス | 解く手順を決める。問題文の否定語や「誤っているもの」に印をつける |
2〜3週目:出題範囲の中心を総復習する
試験の範囲は、憲法、行政法、民法、商法、基礎法学、そして基礎知識(一般知識・行政書士法等・情報通信・個人情報保護・文章理解)です。この範囲は公式の案内に示されています。
全部を均等に見直す時間はありません。次の順で優先度をつけると、無理が出にくくなります。
- 1週目で弱点と出た分野:ここから先に補強します。
- 出題数の多い科目の基本論点:行政法は、公式の案内で法令等の範囲の中心に挙げられています。民法とあわせて、基本論点を落とさないことが先です。
- 知識が抜けやすい分野:条文の数字、期間、要件など、細かい点は、一覧にして繰り返し見るのが向いています。
法令は基準日に合った教材で確認する
出題される法令は、令和8年4月1日現在で施行されているものです。手持ちの教材が古い年度のものの場合、法改正が反映されていない可能性があります。改正のある分野(試験の年度の法改正)は、教材の出版社が出している法改正情報や、条文そのもの(e-Gov法令検索)で確認しておくと安心です。
比較表で「似た制度」を整理する
行政書士試験には、似た制度を区別させる論点がたくさんあります。直前期は、図や表で違いを並べると復習が速くなります。たとえば、次のような組み合わせです。
| 科目 | 整理しておきたい組み合わせの例 |
|---|---|
| 行政法 | 審査請求と取消訴訟、聴聞と弁明の機会の付与、国家賠償法1条と2条 |
| 民法 | 制限行為能力者の4類型、無権代理と表見代理、取得時効と消滅時効 |
| 憲法 | 人権の制限と判断の枠組み、統治機構の権限 |
こうした違いは、1つずつ記事にして解説していきます。まずは自分のノートに、1ページ1テーマで「要件・効果・例外」を書き出してみましょう。
基礎知識を0点にしない
合格には、基礎知識の科目で満点の40%以上が必要です。法令等の勉強に時間を使いたくなる時期ですが、基礎知識を放置すると、3つの基準の1つを下回るおそれがあります。
基礎知識は、出題の範囲が広く、直前期に急に点を伸ばすのは簡単ではありません。そのため、次のような考え方が現実的です。
- 文章理解は練習で安定させる:文章理解は、知識の量より解き方の慣れで差が出やすい分野です。短時間でも毎日1問ずつ触れると、感覚が保てます。
- 行政書士法・個人情報保護・情報通信は、基本用語を確認する:範囲は公式の案内に示されているとおりです。ここは条文・用語の基本が問われるので、テキストの該当部分を一通り見直します。
- 一般知識は深追いしない:政治・経済・社会などは範囲が広いため、直前期は過去に触れた論点の復習にとどめるのが無理のない方法です。
4週目:本番形式に合わせて仕上げる
最後の週は、知識の追加より、本番の動きに合わせる時間です。
3時間通しの練習
本番と同じ時刻(13時〜16時)に、3時間を通して解く練習を1〜2回入れます。やることは次のとおりです。
- 解く順番を決める(例:先に択一式、最後に記述式。あるいは記述式を先に、など)。自分に合う順番を、練習で決めておきます。
- 時間の目安を決める(例:択一式は1問あたり何分、記述式に何分残す、など)。
- 迷った問題には印をつけ、後で戻る習慣をつけます。
どの順番が正解というものはありません。大切なのは、本番で迷わないように、事前に決めておくことです。
記述式は「書く練習」を欠かさない
記述式は、40字程度で記述するものが出題されると案内されています。読んで分かったつもりになっても、書いてみると言葉が出てこないことがよくあります。
- 条文のキーワードを含めて、40字前後でまとめる練習をする
- 書いた答案を、模範解答や条文と照らして、足りないキーワードを確認する
- 誤字・脱字や、主語・述語のねじれがないかを見る
基礎知識の最終確認
文章理解の問題を数問解き、基礎知識の用語を一通り見直します。
試験前日と当日の準備
直前の数日は、新しい教材に手を出さず、まとめノートの見直しと、当日の準備に使います。持ち物の詳細は申込み方法と当日の流れにまとめていますが、公式サイトの「試験当日についてのFAQ」で確認できる点を、あらためて挙げます。
- 机の上に置けるものは、受験票、筆記具(BまたはHBの黒鉛筆またはシャープペンシル)、プラスチック消しゴム、蛍光ペン、腕時計1個、鉛筆削り、マスク、ハンカチ、ポケットティッシュ、目薬、点鼻薬などに限られます。
- ペットボトルなどの飲食は、原則として禁止と案内されています。
- 答案用紙は、いかなる場合も持ち帰れません。
- 試験問題は、試験終了まで持ち帰れません。試験終了後に試験室で受け取れますが、午後4時15分を過ぎると片付けられて受け取れないことがあると案内されています。
前日のチェックリストは次のとおりです。
- 受験票と試験場の場所・交通手段・所要時間を確認する
- 黒鉛筆(またはシャープペンシル)、プラスチック消しゴム、腕時計を用意する
- 前日は睡眠時間を確保する
- 当日の朝は余裕を持って出発する
講座を使う場合の考え方
独学で進めている方も、講座を併用している方も、直前期にすることは基本的に同じです。弱点を見つけ、条文と教材に戻り、本番の形式で練習します。資格のエアポートの行政書士講座では、講座の内容をページで確認できます。学習方法を決める際の参考にしてください。
まとめ
- 直前期は、新しい範囲を広げず、持っている知識を本番の形式で取り出せるようにすることが中心です。
- 試験は3時間・60問(法令等46問、基礎知識14問)。合格には法令等50%以上、基礎知識40%以上、全体60%以上の3基準が必要です。
- 1週目に通しで解いて弱点を洗い出し、2〜3週目に補強し、4週目に3時間通しと記述式の練習で仕上げます。
- 出題の法令は令和8年4月1日現在の施行法令が基準です。教材が古くないかを確かめましょう。
- 前日・当日は、持ち物と時間に余裕を持つことが大切です。机上に置けるものや退室などのルールは、公式サイトで再確認してください。
試験の日程・ルール・合格基準は年度によって変わることがあります。受験する年度の最新情報は、行政書士試験研究センターの公式サイトで確認してください。

